絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語 ゆふかひストーリィ 1/4・後8

2022-02-11 09:30:18 | おぼけまみれ

           copyright (c)ち ふ


 * いよいよ天国

 天国前の広場ではタイタイたちが、待っていた。
 カンダタも来てくれていた。
 彼の顔を見るのは、初めてだった。

「オッさん、就職の口聞いてくれて、
 その節はありがとう」
「いやいや、あれはセンティはんの
 口ぞえがあったからのこと。
 私なんかに礼を言ってもらうのは、
 筋ちがいですよ。それより、しばらく
 お世話をかけます」

「いや、私も暇を持て余しているので、
 ちょうどよかったですよ」
 カンダタは、ブツブツはんが、
 極楽から、地獄に垂らした「蜘蛛の糸」を、
 よじ登っていたが、蜘蛛の糸が切れ、
 再び地獄に舞い落ちた人間だ。

 観女センティに聞いてみると、
 彼は、人を殺しはしたが、それは不運な殺人だった。
 蜘蛛が道を歩いていたので、通りすぎるのを
 待っていた所、後から来た男が、無神経にも、
 その蜘蛛を踏みつぶしてしまったそうだ。

 それが、原因で言い争いが始まり、
 掴み合いの喧嘩になってしまった。
 その喧嘩の最中、相手の男は転んだ拍子に、
 頭を石にぶつけ、打ち所がわるかったのか、
 そのまま、死んでしまった。

 そして、その不運な殺人が、
 就職してからも尾をひき、職場を転々とする、
 ハメになった。
 そうこうしているうちに、職場にも居づらくなり、
 安易な盗みの世界に、落ち込んでしまったらしい。
 根っからの悪人ではないので、
 ブツブツはんの世話により、
 今は、地獄と極楽の境で、番人の仕事に就いている。

 彼は、やっぱり悪人には見えない。
 運がなかったのだろう。
 人殺しや盗みは、決して誉められたものでないが、
 個人の力では、どうしようもないこともある。
 そういう悪事を、肯定するものではないが、
 彼のように、不運な巡り合わせに遭う者には、
 何らかの罪の軽減措置が必要だ。

 もちろん、被害者に対して、
 誠意を尽くすという前提のもとに、ではあるが・・・

 天国の古く厳しい門は、固く閉ざされていた。
 私たちが、いくら頼んでも、誰も出て来そうになかった。
 ここは、センティが紹介してくれたジゾ坊の力を、
 借りる他はなさそうだ。

 みんなは、地獄からの脱出で疲れきっていたので、
 一刻も早く天国入りし、休みたそうである。
 私は、カンダタにジゾ坊の呼び出し方を聞いてみた。

 時おり見かけるのだが、
 どうしたら、会えるのかは知らないという。

 困った。

 私は、カンダタのテレパシー通信を利用して、
 観女センティに問い合わせてみることにした。
 ありがたいことに、携帯用の通信機を
 持ってきていたので、助かった。

「センティはん、お陰さんで、
 みんな無事天国の門の所までつきました。

 しかしながら、天国の門は開けてはくれません。
 そこで、紹介してもらったジゾ坊に会いたいのですが、
 どうしたらいいのですか?」

 メールを送った。
 数分も経つと、センティから返信メールが入ってきた。

「それは、おめでとう。ジゾ坊に、
 そこへ行くように、伝えてあげましょう」

 チャット(おしゃべり)形式に切り替えて、話を続けた。

「いつもすみません。それから、
 一つ等活地獄のことが気にかかるのですが、
 何も言ってきてませんか?」
「別に、何も。何かあったの?」

「ええ、少しハメを外したものですから」
「何にも聞いてないから、大丈夫よ」

「助かりました。どうも、ありがとう。
 では、ジゾ坊の事、よろしくお願いします」
「気をつけて、帰ってらっしゃいね」

 あの部屋は、隔離されていたので、
 外に伝わらなかったのだろう。
 きっと馬頭が、うまく揉み消してくれたに違いない。
 大暴れして、サン鬼を連れ出したのも、
 不問にしてくれている。

 ンモ坊も口添えしてくれたのだろう。
 それにしても、私は、本当にトラブルメーカーだ。
 タイミングが合わないというのか、
 ドン臭いと呼ぶべきなのか、
 これも、不運な星の巡り合わせなのだろうか?

 けれども、これぐらいで、弱音を吐いていては、
 良ヒネに、笑われるだろうな。

 30分もすると、ジゾ坊がやってきた。
 頭を丸坊主にした、チーコちゃんぐらいの子供だった。
 くりくりっとした、澄んだ目が印象的だった。
 赤いシャツを着て、白い半ズボンにズック靴姿だった。
 皆が、次々と挨拶する。
 ジゾ坊は、はきはきと気軽に答える。

 しかし、チーコちゃんの時は、少しはにかんでいた。
 私は、こういう微妙な対応の仕方は見逃さない。
 ジゾ坊は明らかにチーコちゃんに好意を抱いたのだ。
 チーコちゃんが、奪われそうなので、
 心が、ちょっとだけ騒いだ。

 天国の門は、ジゾ坊が、呪文を唱えると開いた。
 門番はいなかった。
 というより、まだ奥に門があったのだ。
 前の門よりは、少し小さいが、
 こちらは、ピカピカと光って、綺麗に磨かれていた。
 金色の鬼が、二人立っていた。
 ジゾ坊を先頭に私たちは、ゾロゾロとついていった。
 ジゾ坊が、鬼たちと何か立ち話を始めた。
 ちらちらと、鋭い視線を送ってくる。

 単純には中に入れない雰囲気だ。
 ジゾ坊が、こちらに帰ってきて、
「オッちゃん、厄介なことになったよ。
 試験を受けて、合格しなければ入れないと
 言ってるよ。ボク、忙しいのでもう帰るけど、
 頑張ってね。チーコちゃん、またいつか一緒に遊ぼうね」

 そう言うなり、帰ろうとした。

 私には、もう一つ大事な用件が残っていた。
 ジゾ坊に、チーコちゃんのまごころの在りかを、
 聞いてみたところ、簡単に教えてくれた。
 本人のものだと証明出来れば、すぐ返してくれるという。
 ジゾ坊に礼を言って別れた。

 試験か!
 一難去って、また一難。
 まぁ、仕方ないだろう。

「今、ジゾ坊から、聞いてもらった通り、
 これから試験を実施する。合格しなければ、
 中には入れない。問題は、女性が強くなれば、
 天国が栄えるか、地獄が栄えるか、
 どちらかの結論と、何故そうなるのか、
 男女に別れてリレー形式で答えていけ。
 なお、男性陣は、それと一緒に、
 何かいいこ事をしたことを一つあげよ、

 わかったか! 何時間でも相談して出来たら、呼べ。
 あ、それから、もう一つ、もちろん
 エンマ大王さまの地獄の通行許可証は、
 持っているだろうな。
 天国に来る、正式な資格の無い者の必需品だ」

「はーい」

 チーコちゃんが、代表して答えてくれた。
 学校ごっこが、おもしろい年ごろなのだろう。
 私は、大王が発行してくれた許可証を見せた。
 それを見てから、金鬼たちは、くるりと踵を返して、
 第2門の中に引き揚げていった。

 私たちは、男女に別れて相談した。
 第1門の下に座り込んで、何時間も考え続けた。
 地獄の疲れも大分取れ、元気も回復してきた。
 何とか男女とも答が出来あかったので、
 第2門の所へと押し寄せた。

 カンダタは、キヨヒメに天国から、
 Gスペースにゆく道を教えると、
 仕事は暇なのだが、番人がいないと、
 また何か言われそうなので、
「また来ます」と言って、職場に引き返していった。

 試験は、女性陣から始まった。


つづく


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