先日のリサイタルのプログラムは、
ベートーヴェンの初期の名作
《ピアノソナタ8番 ハ短調 作品13“悲愴”》で
幕を開けました。
これに関して、多くの反響があり、
ひとつ「弁明」なぞと銘打って
文章にまとめてみたいと思います。
特に、《悲愴ソナタ》を良く知る多くの方々からの
「冒頭の和音に」驚かれたというご感想が
少なからずあったのです。
和音が長い、長すぎる・・・と。
《悲愴ソナタ》冒頭は、
絶望的なハ短調の主和音が鳴り響く
有名な楽曲の始まりです。
♪じゃ!!!!~~~~ん・・・・・・・
「fpフォルテピアノ」の指示も書き込まれたこの和音は、
四分音符分+付点十六分音符の長さがあります。
それ以上に音を長く伸ばす「フェルマータ」の指示は
恐らくはどの版の楽譜にも書いてありません。
しかし、
先日のリサイタル、自分はこの和音を
音が消え去りそうになるまで長く伸ばしました。
「楽譜には書いていない!」と
思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、これは単なる気まぐれや
自己中心的な解釈ではないことを、
ここに弁明させていただきたく思うのです。
――――――――――――――――――――――――
ベートーヴェンの「無給の秘書」として、
彼の生前死後を通して大きな役割をになった
シントラーという人物がいます。
ベートーヴェンと直接関わっていた人間ということで、
彼の証言は少なからぬ価値あるものと考えられます。
もちろん、彼の証言全てが正しいわけではなく、
当時では分からないベートーヴェンの裏の顔や、
身内であるからこそ見えない真実など、
シントラーの証言をよくよく吟味する必要はありますが。
そんなシントラーの、
この《悲愴ソナタ》の冒頭について証言があるというのです。
これは師匠クラウス・シルデ先生からレッスン中に受け賜ったもので、
ベートーヴェン自身の演奏を聴いたシントラーのその証言によれば、
「ベートーヴェンはこの和音を、
音が消え入るまで伸ばし続けた」
というのです。
和音を「音が消え入るまで」伸ばし続けたベートーヴェン、
ベートーヴェンがこの《ソナタ》を作曲している頃は
二十代半ば、既に難聴の病に冒され、それを
他人に悟られまいとひた隠しに生活し、
人を避け、それでも人と会いたくなり、
それゆえに難聴の病にさらに苦しみ、
おのれの運命を呪い・・・
自らの命を絶つことすらも考えるような・・・
そんな時期の作品なのです。
この《悲愴》冒頭の和音を「音が消え入るまで伸ばした」のは、
そんなベートーヴェンという人間の境遇に
なにか一致するものを見出すことが出来るような、
そんな気がしてならないのです。
遠く鳴り去ってゆく音、二度と戻らないかもしれない聴覚・・・
http://blog.goo.ne.jp/pianist-gensegawa/e/ec62a180d4d461caf9347cc5892b2c73
もっと詳しくは、上記のアドレスに以前の記事が
ありますので、ご興味おありの方はのぞいてみて下さい。
それにしても、
現在我々の目にする《悲愴》の楽譜のどこにも載っていない
冒頭の和音を長~く伸ばすことを舞台の上で敢行するのは、
恐ろしく勇気のいることです・・・しかし、
今日の我々に残された楽曲を
より一層意味深いものとして演奏するのに、
このシントラーの価値ある証言を元に
演奏を吟味してみるのは、
ひとつの「研究する」という態度に則った姿勢であると信じ、
舞台の上で実行しようと決心したのでした。
―――――――――――――――――――――――――――
津田ホールのリサイタル当日のピアノは、
今までに弾いたことのないほどのレヴェルの高いものでした。
楽器自体の持つ音そのものの響き、幅広い可能性、
さらには、ホールがそれに心地よく答えてくれる
素直な包容力を持っている、それはそれは
素晴らしい音楽会の環境でした。
ペダルはダンパーがよく効き、
通常の加減で、この「fp」の和音を落とし
ペダルを、すっ、と上げると、音が減衰し過ぎてしまいました。
よって、普段とやり方を変え、
ちょっと我慢してペダルを長めに心がけ、そして
徐々に徐々にペダルを上げてゆく・・・
音が消え入りそうになるのを聴きながら、
ペダルを足裏で聴きながら、といった感じでしょうか。
なかなか、面白い楽器でした。
また津田ホールで弾ける日が待ち遠しいです!!
…………………………………………………………………
より多くの方々と音楽の面白さを分かち合いたく思い、
音楽ブログランキング、人気blogランキング、
への登録をいたしております。
…………………………………………………………………
この記事に関するコメントやご連絡等ございましたら、
以下のアドレスまでメッセージをお送り下さい。
PianistSegawaGen@aol.com
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ベートーヴェンの初期の名作
《ピアノソナタ8番 ハ短調 作品13“悲愴”》で
幕を開けました。
これに関して、多くの反響があり、
ひとつ「弁明」なぞと銘打って
文章にまとめてみたいと思います。
特に、《悲愴ソナタ》を良く知る多くの方々からの
「冒頭の和音に」驚かれたというご感想が
少なからずあったのです。
和音が長い、長すぎる・・・と。
《悲愴ソナタ》冒頭は、
絶望的なハ短調の主和音が鳴り響く
有名な楽曲の始まりです。

♪じゃ!!!!~~~~ん・・・・・・・
「fpフォルテピアノ」の指示も書き込まれたこの和音は、
四分音符分+付点十六分音符の長さがあります。
それ以上に音を長く伸ばす「フェルマータ」の指示は
恐らくはどの版の楽譜にも書いてありません。
しかし、
先日のリサイタル、自分はこの和音を
音が消え去りそうになるまで長く伸ばしました。
「楽譜には書いていない!」と
思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、これは単なる気まぐれや
自己中心的な解釈ではないことを、
ここに弁明させていただきたく思うのです。
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ベートーヴェンの「無給の秘書」として、
彼の生前死後を通して大きな役割をになった
シントラーという人物がいます。
ベートーヴェンと直接関わっていた人間ということで、
彼の証言は少なからぬ価値あるものと考えられます。
もちろん、彼の証言全てが正しいわけではなく、
当時では分からないベートーヴェンの裏の顔や、
身内であるからこそ見えない真実など、
シントラーの証言をよくよく吟味する必要はありますが。
そんなシントラーの、
この《悲愴ソナタ》の冒頭について証言があるというのです。
これは師匠クラウス・シルデ先生からレッスン中に受け賜ったもので、
ベートーヴェン自身の演奏を聴いたシントラーのその証言によれば、
「ベートーヴェンはこの和音を、
音が消え入るまで伸ばし続けた」
というのです。
和音を「音が消え入るまで」伸ばし続けたベートーヴェン、
ベートーヴェンがこの《ソナタ》を作曲している頃は
二十代半ば、既に難聴の病に冒され、それを
他人に悟られまいとひた隠しに生活し、
人を避け、それでも人と会いたくなり、
それゆえに難聴の病にさらに苦しみ、
おのれの運命を呪い・・・
自らの命を絶つことすらも考えるような・・・
そんな時期の作品なのです。
この《悲愴》冒頭の和音を「音が消え入るまで伸ばした」のは、
そんなベートーヴェンという人間の境遇に
なにか一致するものを見出すことが出来るような、
そんな気がしてならないのです。
遠く鳴り去ってゆく音、二度と戻らないかもしれない聴覚・・・
http://blog.goo.ne.jp/pianist-gensegawa/e/ec62a180d4d461caf9347cc5892b2c73
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それにしても、
現在我々の目にする《悲愴》の楽譜のどこにも載っていない
冒頭の和音を長~く伸ばすことを舞台の上で敢行するのは、
恐ろしく勇気のいることです・・・しかし、
今日の我々に残された楽曲を
より一層意味深いものとして演奏するのに、
このシントラーの価値ある証言を元に
演奏を吟味してみるのは、
ひとつの「研究する」という態度に則った姿勢であると信じ、
舞台の上で実行しようと決心したのでした。
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津田ホールのリサイタル当日のピアノは、
今までに弾いたことのないほどのレヴェルの高いものでした。
楽器自体の持つ音そのものの響き、幅広い可能性、
さらには、ホールがそれに心地よく答えてくれる
素直な包容力を持っている、それはそれは
素晴らしい音楽会の環境でした。
ペダルはダンパーがよく効き、
通常の加減で、この「fp」の和音を落とし
ペダルを、すっ、と上げると、音が減衰し過ぎてしまいました。
よって、普段とやり方を変え、
ちょっと我慢してペダルを長めに心がけ、そして
徐々に徐々にペダルを上げてゆく・・・
音が消え入りそうになるのを聴きながら、
ペダルを足裏で聴きながら、といった感じでしょうか。
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