【第三楽章】
Andante tranquillo - Molto vivace - TempoⅠ
婚礼の一夜が明けた。
ウンディーネは、昨日までとはうって変わったたおやかさで、
騎士と漁師を驚かせた。そしてまた、一日前まで大嵐で
荒れ狂っていた森も一転してさわやかな陽が差し込み、
すさまじい氾濫を見せた川は静かで清らかな流れに変わった・・・。
愛らしくしとやかな花嫁に、幸せな騎士。
天候 . . . 本文を読む
【第二楽章】
Allegretto vivace
- Piu Lento, quasi Andante
- Alletretto vivace
騎士の滞在にはしゃぎまわるウンディーネ。
奇妙な大嵐は、晴れるどころか日を増してひどくなる。
大嵐を理由に国に帰れず、ずっと愛するウンディーネの傍に
いられることができるのを喜ぶ騎士も、さすがの連日の大嵐に
不機嫌になっていた。ウンディーネはそ . . . 本文を読む
~ Undine物語 M.フーケー作 ~
【第一楽章】 Allegro
夕暮れ時のこと。
とある老いた漁師夫婦の住む森に、一人の騎士が迷い込んだ。
その騎士の名はフルトブラント。
騎士はあまりに鬱蒼とした森と湖に道を失い、
日も暮れ心身ともにくたびれ果てている矢先に、
この漁師の家に辿り着いたという。
その漁師の家には、それは美しい少女がいた。
名はウンディーネ。
実はこの . . . 本文を読む
「ピアノの詩人」と呼ばれるショパンの
《ノクターン(夜想曲)》というジャンルは、
この作曲家の詩人たる特性を
存分に発揮している音楽といえましょう。
作品番号のついたノクターンは全部で18曲あり、
今日演奏されます《第17番》は、
同じ作品番号62-2とともに書かれた彼の晩年の作品です。
音楽的な成熟もさることながら、晩年のショパンは
ジョルジュ・サンドとの関係の疲弊、
健康状態の悪化などか . . . 本文を読む
~ リノスの歌とは古代ギリシアにおける挽歌、葬送の悲歌、
叫びと踊りが交錯する哀しみの歌である ~ (A.Jolivet)
とは、作曲者ジョリヴェ自身が
《リノスの歌》の楽譜の冒頭に書いた言葉です。
幼い頃から音楽のみに留まらず、絵や文学など
芸術的に恵まれた家庭環境で育ったジョリヴェは、
呪術や魔法などを通して、人の人間的たる精神性、民族性などを
音楽に回復させ . . . 本文を読む
アルベルト・フランツ・ドップラーは、
ドイツ系ハンガリーのフルート奏者です。
このハンガリーという国は、ヨーロッパ諸国の中でも
そのルーツをたどればアジア民族系となり、したがって
この《ハンガリー田園幻想曲》の冒頭部分のその哀愁漂う旋律は、
いかにも東洋的なニュアンスもあり、彼らハンガリー人のルーツが
アジアであったこと、また、この曲が私たち日本人の心にも不思議なくらい
自然に染み入ることが頷け . . . 本文を読む
フルートという単旋律楽器は、
ピアノやギターといった和音を奏でられる楽器のように、
旋律とハーモニーの両方を同時に満足させることはできません。
しかし
テレマンのこの『無伴奏フルートのための12のファンタジー』は、
通常単旋律楽器が味わうことができないバスやハーモニーといった
一人何役もの音楽の世界を、たった一人で実現できる楽曲となっています。
バスやハーモニーの大きなインターバルを
たっ . . . 本文を読む
ドイツ・バロック音楽を代表する作曲家バッハは、
神に対する深い敬虔な信仰心と、
ひたむきな音楽美への探求により、
教会音楽を中心に実に1000曲を超える名作を生み出しました。
そんなバッハは
その人生の半分を教会に携わる音楽活動に費やしましたが、
その中でワイマール、ケーテンで過ごした14年間は、
宮廷音楽家としての仕事に携わりました。
特にケーテンでは、
音楽に造詣の深い領主、そして
幸せ . . . 本文を読む
クーラウは北ドイツのユルツェンに、
生粋のドイツ人として生まれました。
しかしナポレオン戦争の動乱を避けて
1810年にデンマークに移住、
その後当地に帰化して1832年に没するまで
首都コペンハーゲンを中心に活動した作曲家です。
この時代以降のデンマーク(北欧)ロマン
主義音楽の発展に先鞭をつけた人物であると
言うことができます。
クーラウと言えば、
ソナチネを初めとする簡明でありながらも
流 . . . 本文を読む
11月2日(金)、
横浜市の青葉台フィリアホールにて
フルート葛西賀子&ピアノ瀬川玄
デュオリサイタルを行うこととなります。
プログラムはさまざまな趣向に富むものとなりました。
それは主にドイツでのデュオリサイタルにおいて
人々に喜ばれたフルート&ピアノのレパートリーから選んだものです。
―プログラム―
◆クーラウ : 序奏とロンド ホ長調 作品98
◆J.S.バッハ: ソナ . . . 本文を読む
dolce(ドルチェ)
という表示記号は、
クラシック音楽の楽譜でよく出てくるとものです。
イタリア語のこの言葉の意味は、
「甘い、甘美な、優しい、柔らかい」
といった意味を持つようです。
一見、この「dolce」という指示が楽譜にありますと、
甘く、優しく演奏しなければならない、と
つい音量を「弱く」演奏したくなるかもしれませんが、
そこには大きな落とし穴があるというのです。
そこで、こ . . . 本文を読む
青年よ、大志を抱け
クラーク博士による名言と伝えられているこの言葉、
あまりにも有名に成り過ぎているこの言葉、
有名でありすぎるゆえ、自分自身、この言葉を
思いもよらず軽んじていたのではないかと
ふと考えさせられたのでした。
大志を抱け、
いやはや、結構な言葉です。
世の中へ歩みだそうとする若者に対して、
大いに励みとなる言葉を投げかけ、
希望と自信を持って社会に向かっていってもらお . . . 本文を読む
ものごとを追求するに当たって、
「高みを目指す」という言葉と
「深みを目指す」という二つを挙げるとします。
一見同じような意味合いで使われるこの二つ、
(少なくとも、今までの自分はあまりそこまで考えて
両者を使い分けはしていなかったのですが)
ふと、今日は考えてみて、
両者に微妙なニュアンスの違いがあるように思われたのです。
「高み」「深み」
どちらも、現在いる状態よりも
さらなるレヴェル . . . 本文を読む
前回ご紹介いたしました「25」という指使い、
これの長所をもう一点挙げることができます。
前回の記事に挙げました譜例を我ながら見直して見ますと、
面白い共通点があることに気付きました。
それは、
譜例に○(円)をつけました右手の旋律たちは、
どれも片手によって弾かれるニ声の旋律であるという共通点でした。
ピアノという楽器の醍醐味のひとつでもあるのは、
同時にいくつもの音を鳴らすことができるこ . . . 本文を読む
人間の持つ五本の指は、それぞれ全く違う特性がある
こう言及したのは、あのピアノの詩人ショパンでした。
確かに五本の指は、
太さも、長さも、生え方もそれぞれ異なります。
そんな五本の指を駆使するのがピアノ演奏でもあるのですが、
鍵盤と向かい合うにおいて、これらの指をどのように使うか、
どのような順序に使うか、どのような指使いで使うか
という問題は、一般的な想像を超える大きな重要性を
秘めてい . . . 本文を読む