凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

餃子あちらこちら

2010年09月25日 | 旅のアングル
 「B級グルメ」という言葉は最近誰でも知っている。B-1グランプリなんて催事もあるからなおさら。僕は文春のB級グルメシリーズが大好きで学生の頃から食べ歩きの指針のひとつにしてきたから、現在の「町おこし」的な盛り上がりには「?」と思う部分も多少はあるのだが、地方の個性が生き、うまいものが増えれば良しとしようか。
 若い頃はもちろんフトコロも寒く「郷土料理」など上等で縁がなかったせいか、旅に出ればこういうものばかり食べてきた。過去麺類丼・ライスについては書いたので、今回餃子について書こうと思う。

 何で餃子かと言えばそれはとりもなおさず僕が好きであるという理由で、だからあちこちで食べてきたのだけれど、実際は餃子という食べ物は個性に欠ける。麺類~うどん、蕎麦、ラーメンそして焼きそば冷麺などは地方色が強く、丼もまた各地千差万別のものがある。カレーライスもそうだろう。
 だが餃子というのは、どこでも基本は同じだ。焼き餃子がメイン。水餃子その他もあるが、地方色という面においてそれはバリエーションという扱いになる。餃子と言えばこの街では蒸餃子を示し他は邪道、またこの街では餡の具には昔から必ずイカが入っている、なんて話はあまり聞かない。形状は餡を半月型に包み、酢醤油とラー油で食べる。「羽根つき餃子」というのを東京で食べたことがあるが、基本の形状はそれでも同じ。だから「ご当地餃子」とはいうものの、どう違うのかはよくわからない。味に店の個性はあったとしても。

 僕が旅に出て初めて餃子の地方色というものを意識したのは札幌だった。'80年代前半のこと。自転車旅行の途中で札幌に立ち寄った。夏休みであり、そこには大学の友人が帰省していて待ち構えてくれていた。当然学生であり海鮮丼や蟹を食べようなどとは思っていない。身の丈にあった札幌らしい食い物を食べに連れてってくれや。
 そういうことで友人がつれていってくれたのはサッポロラーメンであり、居酒屋つぼ八であり(今はつぼ八はどこにでもあるが当時はそうでもなく僕は知らなかった)、そして餃子の「みよしの」だった。
 「みよしの」は札幌周辺でチェーン展開する餃子専門店であり、友人に言わせるとソウルフードなのだという。
 もちろん餃子は美味かった。だが餃子自体は、前述したようにとりたてて地方色のある食べ物ではない。今にして思えば、わざわざ札幌まで来て食べなくてもいいんじゃないかと思う。けれども、その地元で偏愛される餃子店が存在するということに何か感じ入るものがあった。これもひとつの地方色か。
 後になっても、札幌出身の人と会ったときに「初めて北海道に旅行したときに、みよしので餃子食べましたよ」と言うと妙に盛り上がる。ジンギスカンやうにいくら丼の話をする以上に。それもまた、旅情。

 現在餃子で有名な町は、宇都宮と浜松だろう。そのためにわざわざ足を運ぶ人も多く、完全に町おこしに成功している。
 その宇都宮の餃子を、僕も以前食べに行った。餃子だけ食べまくろうとわざわざ宇都宮へ行ったのではないけれども、老舗の「みんみん」「正嗣」など4軒を食べ歩いた。確かにうまい。それ以上に、安いことが素晴らしい。たいてい6個で170~220円くらい。
 浜松が餃子で有名だとはあまり知識がなかったのだか、噂を聞いてある時途中下車して食べた。なんせ浜松は餃子消費量日本一を誇っている。
 一軒しか行かなかったので味の評価も何もないが、ここの餃子は明確に特徴がある。それは餃子そのものではなく、円形に並べられて出てくることと、茹でもやしが添えられていること。もともと浜松の餃子は屋台発祥であり、専用の餃子焼き器ではなくフライパンで焼かれていたなごりで円く並べて焼く。そういうふうに並べれば中心部に空間が生まれ、寂しいのでそこにもやしを置くようになった由。

 現在、B級グルメブームで、あちこちで地方餃子の話を聞く。これには、昔から存在していたものに限らず「地産地消」などを合言葉に新しく観光の目玉としてつくられたものもあるらしい。「上富良野餃子」「志摩餃子」なんて知らなかった。
 情報通によると、これからは「津ぎょうざ」なのだそうである。やたらと大きい揚げ餃子だそうだ。今度食べよう。

 そういう「新しいご当地餃子」も魅力ではあるが、昔からその地に根付いてきた餃子もまた有難いもの。
 そこへ旅行に行けば、必ず食べてしまう餃子がある。例えば、高知の餃子。高知の餃子というより「安兵衛」の餃子なのだが、これは屋台である。ただ現在は店舗もある。
 餃子は廉価であるのが嬉しい存在なのだが、ここのは少し高い(500円くらいか)。けれども美味いので高知では必ずのれんをくぐってしまう。餡がたっぷりで、かなりパリっとした皮。ビールも酒もうまい。餃子だけ食べればいいので、ハシゴの途中に必ず立ち寄ることになる。
 或いは、長崎の餃子。思案橋近くの「雲龍亭」へは何度も行った。ここのは一口餃子である。かなり小ぶりが10個一人前。焼き面がカリっとして美味い。この餃子と名物の「キモニラ(ニラとレバーの卵とじ)」でビール、焼酎というのがまたたまらない。
 また、博多の鉄鍋餃子。これは有名なので説明の必要もないが、やはり小ぶりの餃子だ。九州は小さめが主流なのか。もともとは八幡や小倉方面が元祖と聞くが、まだそちらには行ったことがない。
 こう並べれば、僕は餃子の皮については「モチモチ」より「パリッ」派だなぁと思う。どうでもいいことだけれども。

 別に日本中食べ歩いているわけではないのでよくわからない部分もあるが、やっぱり餃子は基本半月型で、好みはあるにせよ各地でそれほど差があるわけでもない。だが、形状の全く異なる餃子も時々は存在する。
 僕は石川県金沢に長く住んでいたのだが、そこに「第七ギョーザ」という専門店があった。住んでまだ間もない頃、知り合った人に連れて行ってもらったのだが、これは通常僕が持っていた餃子の印象とは全く異なるものだった。
 見た目は、完全に焼き饅頭。丸くて大きい。皮は厚くその点でもマントウに近いような。そして、一応焼き餃子ではあるのだが大量の油を使って調理しているらしく、表面はカリカリである。むしろ、堅い。これは餃子なのか。
 これは「ホワイト餃子」というもので、後に知ったのだが発祥は千葉の野田らしい。好みはあるだろうが、金沢の店はいつも行列が絶えなかった。

 こういう特色のある餃子があることは、ある面うれしい。そういったことにおいて、本当に餃子に地方色があるのは、大阪と神戸ではないかと思ったりもする。
 大阪には「ひと口餃子」の店が多い。小ぶりの餃子というものは九州はじめ各地にあるけれども、大阪のは形状が違う。最初から小さな皮で包むのではなく、通常と同じくらいの大きさの皮で具を少なめに包む。包み方は半月型ではなく、皮を三角形に折りたたむようにする。だから焼く前は餃子というよりワンタンのように見える。これを、パリっと焼く。小さいのでビールを飲みながら30個くらいはペロリである。
 「点天」という店があちこちのデパートに出店しているのでご存知の人が多いだろう。もともとの元祖は「天平」という店で、「南平」「泰平」「天華」などそれっぽい店名が多い。

 神戸は、餃子の基本形は半月型で変わりはない。ただ、タレが違う。餃子は日本中どこでも酢醤油とラー油で食べ、わずかに九州で柚子胡椒を用いたりするが、神戸ではどこでも基本「味噌だれ」である。この味噌だれは各店により秘伝なのだろうが、甘めであったりピリ辛が強かったり。南京町の「ぎょうざ苑」が味噌だれの元祖らしいのだが、今では専門店のほとんどが味噌だれを置く。
 この味噌だれ、どういう経緯で登場したのかはわからない。ただ、台湾料理からの影響であることは想像できる。市内の台湾料理店では餃子に限らず中華腸詰などにもこの味噌だれを添えて供する。美味いっ。
 神戸には専門店が多い。メニューには餃子と酒しかない。こういう店で心ゆくまで餃子を食べていると幸福である。代表的な店に「瓢たん(皮モチモチ)」と「赤萬(皮カリッ)」があり、客側が派閥を形成する勢いである。ちなみに僕は「カリ」が好き。
 
 さて、旅の話からちょっと外れるが。
 僕の餃子の原点というのは間違いなく「餃子の王将」である。これはもういかんともしようがない。なのでどんな餃子を食べても、僕の中には常に王将の餃子が基本尺度としてある。
 なんせ生まれて初めて食べた餃子が王将のそれである。我が家は母親が好きでないせいか、焼売はよく食べても、餃子というものは食卓にあがったことがなかった。おかんがニンニクを避けていたのか。なので餃子はTVドラマの「ありがとう」などでその存在を知るばかりだった。
 そんな僕が、父親と兄と三人で食事をする機会があり、王将西院店に入った。それが、餃子初体験である。小学二年くらいだったか。
 なんと美味いものだろうとその時に思った。以来、母親不在のときは王将へ連れて行けとよくねだったものだ。さらに、駄菓子屋や祭りの屋台を除いて、初めて保護者無しで食事をしに店に入ったのも王将だった。中学生だったと思うが。当時、餃子は120円かそこら。炒飯が250円くらいだったような(記憶あいまい)。これは調べればわかると思うのだが。王将の餃子はその時の京都の市バスの値段とほぼ同じだった。市バスの値段が上がれば餃子も値上がりし、そして180円になって据え置きとなった(はず)。
 やがて近所に王将新大宮店が出来たのでさらに行く頻度が上がり、大学に行けば高校の友人が鍋を振っていた店に入り浸った。その頃にはビールも飲めるようになり餃子の美味さが増した。
 こういうのは、もう美味い不味いを超える。一時期、王将は不味いとよく言われたが、当方全くそんな声には流されず通った。おそらく生涯で最も通った店が王将であり、しばらく行かないと無性に食べたくなる。北陸に転勤になったときは王将が無いかもと不安になったが、野々市店を見つけて安堵したことを思い出す。
 その王将も、不況と外食産業の不振の中で近年めちゃくちゃに成長した。もはや「京都の王将」ではない。日本中に、ある。東京や仙台や博多で王将の看板を見ると奇異な感じが今でもしてしまう。誠に勝手な言い分であるのは承知だが、多少旅情が薄れる。
 石川町の駅を降りれば王将があって、中華街も近いこんなところで何故、と思ったものだ。しかも、関東の王将は関西よりも多少値段設定が高い。
 王将で慣らされているせいか、餃子をあちこちで食べるときには味もそうだが同時に値段も気になる。そりゃ一流の店でフカヒレ餃子など食べたら美味いに決まっている。でも、餃子って一人前200円前後で気軽に食べたいとやっぱり思ってしまうのだ。だから、宇都宮とかはエラいのである。「みよしの」も安い。

 今年もこの季節になれば王将頻度が上がる。それは「ぎょうざ倶楽部」の会員募集によるもので、ついつい行ってしまう。既に旅の話ではなくなってしまった。

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4 コメント

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Unknown (jasmintea)
2010-09-27 21:55:58
餃子に、これがたまりません
よくチャーハンやラーメンと餃子を組み合わせる人がいますが、私は餃子と野菜炒めとビールが一番好きです
おっしゃる通り、王将はおいしいですよね。

宇都宮は地元の友人に聞くと餃子より焼きそばの方が消費量が多いんですって。
どちらかと言うと餃子は外向きらしいです。(外向き餃子は高いから地元の方は避けるとか)

関東では最近は蒲田の「羽根つき餃子」が有名です。
あのパリっとした食感が最高です。
って、書いてたら餃子を食べたくなりました!!!
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>jasminteaさん (凛太郎)
2010-09-28 22:18:37
この夏は餃子とビールが最高でしたね。僕はよく餃子と中国の白酒をあわせるのですが、今年はビールしか頼まなかったような。
それほどマニアックに食べ歩いているわけでもないのですが、東京ですと蒲田と亀戸、神田で餃子は食べました。羽根つきはパリっとしていて好みです♪
川崎も、餃子の街としては最近有名ですね。埼玉はなんと言っても「ぎょうざの満州」があるのですがまだ僕は機会を得ていません。これを食べないとチェーン店餃子は語れませんので早く行きたいと思っているのですが。
宇都宮では「餃子マップ」も作って結構外向きにやってらっしゃいますが、僕が行ったところは6個170円~の餃子店ばかりでした(笑)。有名店で行列出来てましたけど、地元の人も多かったと思いますけどね。焼きそばも有名店がいくつかありますね。焼きそばも確か安かったような。これも、ビールかな(笑)。
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Unknown (まるちゃん)
2010-09-29 09:37:12

あまり外で食べたことがないので、土地やお店による分類も感想も書けないのですけど。
昔々、信州へ旅したときに食べた餃子が忘れられないなあ。お店の場所も名前も覚えてないから二度と行けない…。


自分では本当によく作って食べます。
家庭での餃子には何も限定条件はなくて、冷蔵庫と相談していろんなバリエーションができ、しかもどんな食材を使ってもまずハズレはない。大きさも味付けも、その都度「今日食べたい雰囲気」のモノを作って食べることが可能。
ただし、焼き方は一定です。外はカリっと、中はジューシー。

~ん、餃子…おいしいよねぇ!
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>まるちゃん (凛太郎)
2010-09-29 22:48:05
逆に僕んちは餃子を家で食べなくなってしまったんですね~。
所帯持った頃は、僕が餃子好きということもあって何度か嫁が作ったのですが、外での餃子頻度が高いことと、僕がお持ち帰り餃子を買って帰る頻度が高いので(笑)、相対的に我家餃子が減っていく運命に。
ただ、たまに(年に一度くらいですけど)うちでも餃子作ります。うちで作ると、60個くらい食べることが出来るので幸せですよね。外じゃ一人で10人前とか注文しづらいですから(笑)。
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