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凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

市町村合併について

2005年08月15日 | 旅のアングル
 これは、突き詰めて言えば政治的発言になってしまうかもしれないけれど、そんなつもりは毛頭なく、言ってみれば愚痴だと思っていただきたい。まあ一言だけいえば、政府はそんなことを進めるよりももっと先にやることがあるだろう? とボヤいてみる。本当に困るのだよなあ。これで僕は、日本の地理的感覚が全く狂ってしまうのである。

 僕は旅行好きだと散々書いてきている。そのため、日本の地理には詳しくなった。
 若い頃から、あまり自分に誇れるものはないが、酒と地理歴史くらいは人より強いとなんとか言えた。最近酒も弱くなり、大海を知って歴史知識もさほどではないと知ってからは、せいぜい日本地理くらいがまあ人より勝っているのではと心の拠り所にしてきた。
 しかし、この「平成の市町村大合併」において、そういったささやかな矜持も失われることとなった。哀しい。今までだと、だいたいどんな地名を言われてもたいていは「ああ知ってますよ。あのへんですね♪」と答えられて、それが初めて会う人でも直ぐに打ち解けられる武器となっていたであるが、それもご破算である。
しょうがないので一から出直しとなる。しかし、もう40の手習い状態であり、記憶力も乏しくなっている現状では、「地理には強い」という看板も下ろさざるを得なくなるだろう。こうまで合併して地名が変われば、もう感覚的にお手上げ状況である。
 それでも、合併状況が新聞に載るたびにアガキで記事を切り抜いたりしていた。しかし抜けもあり、ネット情報も錯綜してよくわからない。地図を買ったところでまたどんどんと変わっていく。もうイヤになってしまった。落ち着くのは来年くらいだろうが、そうなったら地図帳も新しく買おうとは思う。住所録もずいぶん訂正したが、疲れた。

 アタマにくるのは、その新市町村の名称である。簡単に言ってしまえば安直過ぎるのだ。
 地名というのは歴史的遺物であり財産であると思う。今回は市町村合併であり字名まで変更というわけではないのでまだマシかもしれないが、それにしても簡単に名前を付けすぎる。
 奈良県で、斑鳩町、明日香村が現在のところ残っているのは素晴らしいことだと思う。合併にしても、葛城市といった古くからの郡名を採用するのは英断だろう。しかし、その他の地域を見るとそれは惨憺たるものである。

 まず、ひらがな市町村が多すぎる。
 かつてから、「むつ市」「いわき市」「ひたちなか市」などひらがな名はあった。僕はこれにも違和感を覚えてなんとかならないのかと憂いていた。ひらがなは表音文字であり、漢字は表意文字である。ひらがなにすればそれはただの記号で、その地名の持つ歴史的意味などを全く踏みにじってしまうのである。そもそも「むつ」というのは陸奥で、かつての日本では青森県から太平洋側の福島県までを指す国名であった。それを下北半島のごく一部の地域で採用するわけだから、恐れ多くてそりゃひらがなにもしたくなるだろう。その感覚が今合併にも生きているのか。いや、もっと安直に「恐れ多い」などとも考えていないようなネーミングが多い。
「さいたま市」はその最たるものであろう。なんでひらがなにしなくてはいけないのか? 本当にわからない。青森には「つがる市」が出来た。これで木造、車力といった地名が消えた。「かすみがうら市(茨城)」「いなべ市(三重)」「かほく市(石川)」「あわら市(福井)」「いの町(高知)」「うきは市(福岡)」…。何故霞ヶ浦、員弁、河北、芦原、伊野、浮羽としないのか。ややこしい。例えば「みやき町(佐賀)」「すさみ町(和歌山)」などは三養基、周参見では難しいのでしょうがないとも言えるが。また「さぬき市」「さつま町」などはむつ市やつがる市と同様、恐れ多いということなのだろうか。 
 何故こんなにひらがなが? イメージアップになるとでも思っているのだろうか? しかしこれほど多ければPRにもなるまい。

 東西南北をアタマにつけただけの無機質なネーミングも多い。そもそもこれは以前から行われていたことで、「東大阪市」などは最たるものだ。大阪には「大東市」もあり感覚が似ている。「北九州市」「東広島市」なども困った名前だ。考えてみれば、「東京」というのもそうだろう。今は定着しているのでなんとも思わないが、東の京(都)という単純な発想だ。江戸、という立派な名前があったのに。さらに今度は「西東京市」などというのも出来て、いったいなんのことかわからない。西なのか東なのか。
 そして今合併では「東近江市」「南あわじ市」「東かがわ市」なども出来た。長いものに巻かれろ志向なのか。茨城「筑西市」富山「南砺市」山口「周南市」愛媛「西予市」なども広義で考えるとそうだろう。もっと凄いのは「四国中央市」で、愛媛県の最東端に出来た市だが、県では東のはじでも四国の中では真ん中、というわけ。いやはや恐れ入る。
 「北名古屋市」は本当に出来るのか? うーん。

 くっつけただけのものもある。揉めるからそうするので、昔から字名などでよくある。「湯布院町」なども由布院と湯ノ平の合併だったな。これは上手かったが。長野の「更埴市」というのは更級と埴科の合併だったが今度「千曲市」となって消えた。今合併では福岡の「福津市(福間と津屋崎)」兵庫の「香美町(香住と美方)」長野の「東御市(北御牧と東部)」などがそれ。これは双方から文句がでないやりかたであるが、これもなんとも無機質である。それに馴染のない完全に新しい地名なので覚えにくい。

 あやかり地名というものもある。前記の「西東京市」なども東京にあやかっているわけなのだろうが、観光地に追従しているというのもある。岩手「八幡平市」静岡「伊豆の国市」などはそうだろう。伊豆の国市などは「伊豆市」も出来たのでややこしくてしょうがない。修善寺や湯ヶ島が伊豆市で、韮山や大仁が伊豆の国か。だいたい伊豆には西伊豆、東伊豆、南伊豆まであってワシにはもうわからん。伊豆はたしかに観光地で知られるが、頼朝以来の韮山や修善寺を捨ててまで伊豆、伊豆、伊豆に右へならえだ。うーむ。
 「東松島市」というのは松島町が既にあるのだが、どうしても観光地松島を冠したかったのだろう。そういえば、世界遺産の知床、白神の名を冠したくて揉めていた地域もあったっけ。四国には「四万十市」「仁淀川町」「吉野川市」などが出来た。川が四国の人は好きらしい。鹿児島「錦江町」石川「白山市」などもそうだろう。松任まで白山を冠するとは…。

 他にも気になる市町村名。
 最も驚いたのは栃木の「さくら市」。何か郡名で、千葉の佐倉市とカブるからか、などと思っていたら、どうやら日本の国花、桜からきているようだ。調べると公募らしい。市内に桜の名所はあるらしいが、完全にイメージ先行のネーミングである。ついにこういうネーミングが出たかと複雑な気持ちだった。銀行名なら許せるが。これによって氏家、喜連川という歴史好きにはたまらない地名が消えることとなった。
 ところで、北海道の女満別と東藻琴の「大空町」はもう決定なのだろうか。「つくばみらい市」は出来ちゃうのか?
 沖縄の「うるま市」。うるまとは「うる=珊瑚・ま=島」ということ。つまりサンゴの島という意味(例えば波照間島などは、ハテルマ=果てのうるまからだと言われる)で、沖縄全体を指す言葉といってもいいだろう。美しい名前だがこれからは具志川や勝連が代表することになるのだ。すごいな。
 熊本の「あさぎり町」は、このあたり一帯によく朝霧が発生するところかららしい。こういうネーミングもあるんだ。すごいな。ひらがなであるのが困りものだが。こんなふうに地名をつけていくと歴史など関係ない。北海道には「北斗市」が出来るそうで。これもカッコいいな。山梨には同音の「北杜市」が出来たのだが(余談だが、これは杜の都仙台の北に出来たのだと勘違いしていた。ほら地理的感覚が狂った。清里周辺が北杜市)。
 その山梨の「南アルプス市」。本当に恐れ入ります。確か長野には「中央アルプス市」の出来る話もあったはずだが白紙になったか。
 これ以外にも例の「南セントレア市」や千葉の「太平洋市」など驚くべき話が進行していたはず。行政の良識を祈るばかりである。

 これらの地域にお住まいで気を悪くされた方がいらっしゃったらごめんなさい。僕の40の手習いの愚痴なので多めに見てください。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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わかる、わかる! (jasmintea)
2005-08-17 23:29:05
ちょっと話がズレてしまいますがさいたま市ができた時もブツブツ文句を言いました。

北区なんてどこでもあるんだからやめてほしいよね!とか「桜区」ならいっそのこと「さくらそう区」でも良いよね!とか。

で、さいたまって「ださいたま」って言われるのがイヤなのに何も平仮名でさいたまにすることないじゃない(`_´メ)みたいな!!

で、浦和の駅って「浦和駅」「北浦和駅」「西浦和駅」「中浦和駅」「南浦和駅」「武蔵浦和駅」「東浦和駅」って何だか芸がない命名ですよね



歴史や遺跡を大切にした名前をつけてもらいたいと、願う歴史ファンです。
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浦和は七つの駅がある(笑)。 (凛太郎)
2005-08-17 23:41:03
いつもありがとうございます♪

この記事は全くの愚痴なのですが(笑)、それにしても自治体のセンスのなさにはあきれ返ってしまいます。個人的にはもっと郡名を活かして欲しかったなぁと。やはり律令制以来の郡名には歴史が刻まれていますからね。しかし、実際にはどんどん市が出来て町村がなくなり、それにしたがって郡名も消える運命とあいなりました。惜しいなぁ。

人よりは新市町村について整理しているつもりなのですが…。おぼえきれませんがな(汗)。

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