凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

股裂き

2010年07月18日 | プロレス技あれこれ
 馬場さんがデビューしたのは1960年の9月30日。この記事を書いている時点(2010年)からみると、ちょうど半世紀前ということになる。同日に、猪木もデビューしている。プロレス界にとっては、歴史的な日ということだ。
 馬場さんは当時22歳。デビュー戦の相手は田中米太郎で、豪快にも股裂きでプロレス初勝利をおさめた。これは、あちこちに記録として取り上げられており、良く知られている事柄である。
 だがここで、よくわからないことがある。この股裂きとは、どういう形式の技だったのだろうか。僕はもちろん生まれてもいないし、古すぎてよくわからない。一口に「股裂き」と言っても、いろんなやり方があるはず。読んで字の如く「股関節を引き裂く技」ではあるのだが、実際に裂けたら大変なことだ。具体的には両足を思い切り広げられて痛められる技。その足の広げ方には、様々な方法がある。

 漫画で、馬場さんが田中米太郎に股裂きを仕掛けているシーンは見たことがある。例の「プロレススーパースター列伝」だが、ここで馬場さんは仰向けに寝転がっている田中の両足の甲の部分を掴み、自身はスタンディングで田中の両足を持ちあげ、そのまま田中の両足をガバッと押し開いている。実に豪快な股裂き。田中の股関節に激痛が走り思わずギブアップ、という場面なのだが。
 この漫画を見たそのときは、そういう股裂きなのだろうと思っていた。田中米太郎は後にレフェリーとしてマットに上がり、その田中の記憶は僕にもおぼろげながらある。あまり身体は大きいほうではなかった。だから、馬場さんの長い腕でもって足を掴んで広げれば、さしもの田中もたまらず…と思っていた。
 だが、よく考えてみれば田中米太郎は相撲出身のレスラーである。そもそも二所ノ関部屋で力道山の付き人をつとめ、力道山プロレス入り後、あとを追ってレスラーとなった。
 相撲と言えば「股割り」は必須である。相撲取りは新弟子の頃に、怪我をしないように股関節を徹底的に柔らかくする稽古を積む。なので、相撲取りは足を180度近く開脚することが可能であるはずなのだ。相撲取りの股関節はバレリーナのように柔らかい。
 漫画を見れば、田中は馬場さんの両手によって足をVの字にぐわっと広げられている。その角度は、90度くらいか。こんな程度ではギブアップはするまい。しかし、腕で足を広げようと思えば、それくらいしか広げられないのではないだろうか。たいてい脚は、腕よりも長い。
 田中は小兵レスラーであり、馬場さんの腕と田中の脚の長さが同じくらいだったと仮定してみる。そして馬場さんの腕力が田中の脚力を上回っていたとして。しかし、馬場さんの胸板と田中の股間がくっつくくらいにまで広げないと(言ってる意味わかりますか)、180度の開脚は出来ない。で、180度広げたとしてもギブアップに至るかどうか。僕ならば90度でもう既にギブアップだが、元力士を相手にして。
 漫画はフィクションであり、事実とは違う場合が多々。馬場さんは、本当はどういう種類の股裂きを用いたのだろうか。データや画像は残っていないのだろうか。僕は不勉強でよく知らないのだ。談話でもいい。馬場さんはどうやって股を裂いたのか。どなたか教えて下さい。

 馬場さんが当時どういう股裂きの方法をとったのかはよくわからないのだが、古典的な股裂きというのは、以下のような方式だった。
 まず、マットにダウンしている相手の片足首を踏んづける。そうして片方の足を固定しておいて、もう片方の足を持ち上げて足首を掴み、広げる。これだと、いとも簡単に股を裂ける。脚と腕の力で広げるのだから、当然相手の両脚のパワーも凌駕できる。馬場さんが後年、このやり方の股裂きを披露しているのは観たことがある。さらに、腕で持つ片足首にトーホールドを仕掛けることによって、複合技となる。足首を捻れば、股裂きにもまたぐっと効果が生まれる。これは痛い。ギブアップが取れる技だ。
 もっとも、古典的過ぎてこれで試合が決まるのを見たことは僕はない。地味であるしね。上田馬之助もよくやっていた記憶があるが、痛め技だった。

 「股裂き」という名称は、その後「レッグスプレッド」と呼ばれるようになった。もっとも本質は変わらず股関節痛めであるわけだが、攻める側がスタンディングで相手の股を裂くのとは異なり、もっと密着した寝技となる。
 グラウンドで相手の片脚を自分の両脚で挟む。その時相手の片脚のヒザを曲げ絡めると逃げられない。そしてもう一方の脚を両手で掴んで、相手の尻に自分の胴体(腹部)が密着するようにして、相手の両脚を広げていく。尻の上に乗っかれれば体重も利して、より股裂き効果が得られる。
 このレッグスプレット。古典的な股裂きと比べて、股を180度以上広げられるという点でより効果的ではある。ただし、技術が必要。古典的な股裂きは片足首を踏みつけもう片足首を掴んで広げる、という形であるため、力点が離れており、てこの原理が活用できる。だがレッグスプレットは、密着技であり力点が近い。なので腕力だけではなく体重のかけ方、力の方向性などに技術が必要と考えられる。
 K-DOJOの旭志織がフィニッシュとして用いているらしいのだが、残念ながら未見。
 
 さて、またここでヘンな疑問なのだが、先日藤原喜明著作の図解関節技読本みたいなのを読んでいたら、この密着型股裂きの名称が「レッグスプリット」となっていた。僕はずっと「レッグスプレッド」だと思っていたので「あれ?」と思ってしまったのだが、藤原組長が間違えるわけがない。
 英語でsplitは「割る・裂く」(goo辞書)、spreadは「広げる・開く」(goo辞書)。どちらも通じますな。splitの方が「股裂き」っぽいのだけれど、ちょっとこれはダークゾーンに押し込めてしまおう。日本語表記で「股裂き」と書けば問題あるまい。

 ところで、このレッグスプレッド(スプリットか?)には、実に似た技がある。猪木のバナナスプレッド(懐かしい)。
 そう書いて知らない人もいるかもしれないが、掛かった形はほぼ相似形である。ただ、猪木のバナナスプレッドは股裂きじゃない。おっと、股裂きの効果もあるかもしれないが、これは一瞬のフォール技なのである。グラウンドコブラに実に感じが似ている。相手の片脚を自分の脚で絡めとり、もう片脚を腕で掴んで倒し(ほぼレッグスプレッドと同じ)、そのままフォールする。つまり横回転エビ固め(スクールボーイ)の、脚を広げて逃げにくくした形と考えてしまえばいいかと。
 このバナナスプレッドは、そもそもはロッキングチェア・ホールド(揺り椅子固め)またはクレイドルホールド(揺りかご固め)と呼ばれていたらしい(村松友視氏がそう書いていたような…記憶に自信なし)。形状からの連想だろう。相手の両足を上にして広げて押さえ付け力を込めれば、またそれに抵抗する力が加われば、その動きは揺り椅子のように左右に揺れる。揺ら揺ら、というより力と力のせめぎ合いなのだが。
 そして、このクレイドルホールドから、あのテリー・ファンクのローリングクレイドルという不世出の技が誕生する。

 ローリングクレイドル。回転股裂き。この複雑で難易度が高くしかも華麗な技を文章で書くのは実に困難である。書いても、わかってもらえないかもしれない。なので諦める(ぉぃぉぃ)。
 バナナスプレッドの体勢で横回転し、そのままマット狭しと股裂きしながら高速回転をし続け、相手の股関節と三半規管を壊しそのままフォールするというすさまじき技だが、その華麗さはそう書いてもわかってもらえまい。ただ、これはプロレス技のひとつの極みであり高峰である。知らない人はどこかで動画を探して見てください。感動するよ。
 日本では、寺西勇、また天龍のローリングクレイドルを観たことがあるが、どうもギッコンバッタンとした感じでスピード感が無い。小橋も、テリーの域には至らない。女子では豊田真奈美がやる。だが、女子プロの宿命で、技が残念ながら軽い。一応その動画はあった(→vs鬼嫁)。だが爆発的重量感と速度を誇り、マット全体を所狭しと豪快に回転する全盛期のテリーの技を本当は是非観て欲しい。

  
 他に股裂き系統の技がないかいろいろ考えていたのだが、どうもあとは大股びらきの「恥ずかし固め」くらいしか思い浮かばない。なんたることか。
 恥ずかし固めにもいろいろあり、桜庭も何種類か持っているが、桜庭のは確かに股裂きと言えるレッグスプレッド式もある。だが、ホイスグレイシーにやったのは股裂きかどうかはわかんない。ありゃ○○返し…(これ以上書けん)。
 恥ずかし固めといえば何といっても宮崎有妃とタニー・マウス。このセクハラ技は、プロレスを見ているのかエロ動画を見ているのか一瞬戸惑う。楽しいことには違いないが、プロレス記事ではなくなってしまうのでこのへんで。

 

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4 コメント

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はじめまして (えべす)
2012-02-28 01:25:41
平重盛を検索してこちらにきました
が大好物のプロレス話しにはまってしまいました
なかでもこの技は大好きで、たぶん最初に見たプロレスがファンクス対シーク、ブッチャー組のあれでしたもので少年時代はテリーが大好きでした

その頃はローリングしてなんぼとおもっていたこの技を藤原組長がチャンガニー相手に掛けてるのを週プロで見て衝撃を受けました
格闘技戦でローリングクレイドルって、、、いや!股裂なんこれっ?

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>えべすさん (凛太郎)
2012-02-28 22:08:08
どうもはじめまして。歴史もプロレスも大好物なので同じ場所で書いています(笑)。
ローリングクレイドル、よかったっすね~。見せ技との批判もありましたが、やっぱり見せてナンボですし、よーく見ていますとあれやっぱりキクと思うのですよ。少なくとも目は回る。
本文でも組長の股裂きに言及していますが、ボクサー相手であれば効くのではないのかなと。股割りの経験もないでしょうし(笑)。
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Unknown (えべす)
2012-03-01 22:56:31
いやいやどうして
ききますよあれは
クロックヘッドシザースと股裂きは決まると「うひょー」となります
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>えべすさん (凛太郎)
2012-03-02 01:43:25
股裂きもたまりませんが、クロックヘッドシザースも効きそうですな。僕はきめられたことはありませんが(笑)、見ているだけでもう「うひょー」ものですねー。
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