凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

アトミックドロップ

2005年03月14日 | プロレス技あれこれ
 ボブ・バックランドというレスラーが好きだった。

 当時の新日本プロレスに来日する外人レスラーは全て「猪木の敵」であり、今の若い人には信じられないだろうけれども、その頃はまだまだ「外人」=「悪役」という図式が残っていた。これは力道山以来の伝統であり、新日にもタイガー・ジェット・シンという極め付きのヒールがいて、猪木のNWFベルトを狙って対決の図式を作っていた。
 それより以前、国際プロレスにはビル・ロビンソンという善玉もおり、全日本プロレスにはドリーファンク・Jr.という日本人からも応援されるレスラーは居た。何れもオールラウンド・プレーヤーであり、人気も高かった。ただ、新日というマットは猪木の個性が強すぎて、なかなかそういう外人善玉レスラーはキャラを確立しにくかったに違いない。
 もともとバックランドは全日に出ていたが、スーパースター・ビリーグラハム(フルネルソンでギブアップを奪う凄いレスラー。一度語ってみたい)からWWWFの王座を奪い取った後、新日のリングに上がることとなった。若き日のボブ・バックランドは、善人そのものという風貌で悪役にはとても向かなかった。そして猪木と何度も60分フルタイムの戦いをして、「外人善玉レスラー」となった。そのパワーとテクニックに少年の僕は魅せられ、ファンになった。
 その後、猪木と「帝王タッグ」を組み、第一回MSGタッグリーグを制覇する(ホーガン&ハンセン組、小林&坂口組、シン&上田組、アンドレ&ハングマン組など豪華だった)。
 バックランドは何でも出来る器用なレスラーで、アマレス仕込みのテクニックはもとより、ジャーマンスープレックス、ジャンピングパイルドライバー、そして突き上げるようなドロップキックなど大技も使う。また、チキンウィングフェイスロックなどの関節技も素晴らしかった。そのバックランドがフィニッシュに使っていたのがアトミックドロップだった。

 アトミックドロップとは、ちょうど抱え投げ式バックドロップのように相手の脇に首を入れて腿を持ち高く持ち上げて、前に落とし自分のヒザに相手の尾骶骨を打ち付ける。
 典型的テクニシャンであったバックランドがこの技をフィニッシュにしていたのには、彼が当時WWFのチャンピオンであったことにある。カナディアンバックブリーカーのブルーノ・サンマルチノ、フルネルソンのスーパースター・ビリーグラハムと、マディソンの帝王はパワーファイターでなければならなかった。そのため、本来のテクニシャンである部分を前面に出さず、アトミック・ドロップをフィニッシュにもってきたのだろう。
 少年の頃の僕には、そのパワーもテクニックも兼ね備えているところに魅力があったのです。
 バックランドは、ただ相手を持ち上げて落すのではなく、助走もつけ、自らもジャンプするくらいの勢いでケツを叩きつけていた。知っている人は知っているが、お尻というのは打ちつけると本当に痛い。岩場で転んでしりもちをついたりなんかすると一週間くらいダメージが残ったりする。そういう経験がある人もいるでしょう。

 この技を出せる条件として、まずパワーファイターであることと、体が大きいことが上げられる。自分より大きな相手にかけたところで、相手の両足が先にマットについてしまったりして失敗することも考えられるからだ。
 日本ではやはり馬場さんが使っていたらしいのだが、僕にはあまり印象にない。ヒザを打ちつけるのはココナッツ・クラッシュ(椰子の実割り)の方が鮮明に残っている。僕がやはり印象深いのは坂口征二で、相手を目よりも高く持ち上げるといったハイアングル・アトミックドロップで、それはさぞかし効くだろうと思わせる豪快さだった。
 ストロング小林も使った。やはりパワーファイター向きであり、どちらかというと不器用な(失礼)選手が使う印象がある。だからバックランドが使うのは意外だった(もう一人意外な使い手としてブラッド・レイガンスを憶えている)。
 現在では、田上明が使うくらいか。田上にはよく似合うと思うが、もう少し迫力が欲しい。まあ継承しているだけでもいいか。
 一つ印象に残っている技で、アトミックドロップを放った後、そのまま再度持ち上げバックドロップに行くというコンビネーションがあった。記憶で書いて申し訳ないけどボブ・オートン・Jr.だったと憶えている。なんとも強烈なコンビネーションだった。懐かしい。(その後オートンは例の海賊男ビリー・ガスパーになったりして、好きなレスラーだったのにちょっと残念だった。僕はWWEを見ていないので知らないけれど、最近息子がレスラーになっているらしい。)

 派生技と言えるかどうかわからないが、相手を背後から抱えて落すアトミックドロップと逆に、前から抱えて落すというマンハッタンドロップという技がある。ベア・ハッグの状態、あるいは相手の両腿をフロントから抱え込んで持ち上げ、ヒザの上に落とす。リバース・アトミックドロップである。
 元祖はご存知「マンハッタン・ライダー」アドリアン・アドニス。ダブついた体なのにスピーディーで、エルボーを打つ時のジャンプは絵になった。ワルガキがそのままレスラーになった感じで、前述のボブ・オートン・Jr.とのタッグ、あるいはディック・マードックとのタッグで一世を風靡した。(マードックもアドニスももうこの世にいないなんて…涙)
 しかし、この技は角度を変えると股間にヒザが当たる。急所打ちである。蝶野がこれをやる。おかげでマンハッタンドロップの印象がかなり悪いものになっている。
 反則をやるのもいいし、悪役に徹するのもいい。しかし、急所打ちが多用されるのは誠に残念である。急所攻撃はチンケなヒールのやることで最も卑怯な攻撃だ。蝶野のようにキャリアもあり新日の代表格のようなレスラーにはやって欲しくない。また、僕が金丸を全く好きになれないのは、彼がヒールでもないのに急所打ちをやるからである。なんでプロレスはそんなに堕落してしまったのか。

 話がアトミックドロップからそれてしまった。




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8 コメント

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こんばんは(^o^) (jasmintea)
2005-03-16 23:07:26
懐かしい名前がたくさん出てきます。

ドリー、テリーのファンクス兄弟は今おいくつなんでしょうか???

シン&馬之助!昔、シン&ブッチャー組の試合をリングから2列目位のところで観戦したことがあります。場外乱闘、、本当に怖かったです逃げ惑ってたような‥。

坂口って良いレスラーでしたよね。私も好きでした!で、現在ではアトミックドロップは田上が使ってる??田上明!今、彼は全日にいるんですか?最近はプロレス界の話題がわからない私です。



先日ハッスルハッスルの興行のニュース見てたらキャプテン小川だキャプテン川田だって何だかWWEの流れになってきてるのかしら?なんて思ったのですがどうなんでしょう?
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世界の荒鷲 坂口征二 (凛太郎)
2005-03-18 00:02:25
坂口征二は地味でしたが本当にいいレスラーだったと思いますねぇ。常に猪木の二番手で控えていましたが実力はピカイチ、時として中身の伴わないことがある今のレスラーにはお手本にしてもらいたいものです。



田上は今ノアに居ます。旧全日本(馬場、鶴田の団体)はほとんどノアに移行しています。今の全日本は武藤敬司が社長ですし(汗)

ハッスルはエンタプロレス一直線です。僕は同じエンタなら、大阪プロレスの方がずっと見ごたえがあると思っています。まああくまで個人的に、ですが。



ところで…

jasminteaさんシン&ブッチャー組の試合を観られたことがあるんですか?! それはもしかして1979年8月26日(ハッテンニイロクと言いましたね 笑)のオールスター戦でしょうか? これは僕も本当に見たかった試合でした…。(^-^)

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こんばんは (jasmintea)
2005-03-19 22:33:26
いつもmyページへコメント頂きありがとうございます。今朝ここに書き込みしようとページをあけていましたら三男が「えー、アトミックドロップだって!!」って一生懸命読んでいました。(漢字が読めないので一々うるさいです)そしてそのあとはWWEで誰が使ってるかレクチャータイム‥おかげで時間がなくなり書きこめませんでした。

シン&ブッチャーは確か昭和で58年ごろだったかな??そんなに大きい会場ではなかった記憶があります。



で、凛太郎さんのコメントにびっくりですが武藤が全日の社長なんですか??????

そのうち今のプロレス界の地図を教えて下さいね
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かんじおおくてごめんなさい。(* ̄m ̄)プッ (凛太郎)
2005-03-20 00:14:38
おこさんにもよんでいただいてとてもうれしいです。どうもありがとう。(^-^)



さて、シン&ブッチャーと言えばすぐに夢のオールスター戦(vs馬場&猪木)を思いだしてしまうので失礼しました(笑)。シン&ブッチャーはその後も世界最強タッグリーグ戦なんかにも出場していましたよね。冷静になって考えれば(恥)。



プロレスの団体は出入りが激しくてもうとても説明出来ませんが、ノアというのが昔の全日と思っていただければ。社長は三沢(昔の二代目タイガーマスク)です。あと乱立している沢山の団体はほぼ元新日です(笑)。分裂とお家騒動はUWFやジャパンプロレスの頃からの伝統です。猪木の遺伝子ですね(笑)。今の全日は、三沢ら選手たちと故馬場夫人との確執で選手がほとんど抜けてノアになってしまった後、新日から武藤らが移籍してきて成立しています。ややこしいですねぇ(汗)。

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ごめんなさい! (jasmintea)
2005-03-26 23:58:14
どこに書こうか迷いここに残していきます。

ボヤキです。

今日、K1やってました。そしたら久しぶりに前田と船木見ました。船木が解説なんてねー。やっぱりK1も総合ルールなら絶対に動きがあるプロレスの方が面白いです!!

武藤も社長なんてしてないで現役1本で行って欲しいですよね(`_´メ)

に、しても鶴龍維新軍みたいな試合見たいなぁ!

プロレスもっと頑張れ!!



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HERO’Sか。 ( ̄~ ̄;) ウーン・・・・ (凛太郎)
2005-03-27 01:00:24
こんばんわ。ボヤいていただいてありがとうございます(笑)。

TVではvsK-1!なんて謳っていましたからあれをK-1だと思われた方が多いと思いますが、あれは前田と元新日の営業部長上井氏(昔の新間寿みたいな人)が立ち上げた新しいイベントなのです。それにK-1から選手が流れたってことですね。以前の「リングス(前田がやっていたUWFの流れを汲む団体)」みたいなものです。ややこしいな。^^;

でも、こういう総合の試合というのは、相手の技を受けるという概念がないですからどうしても膠着したり一瞬で勝敗が決したりしてしまう。上井氏と前田がやるのであればもう少し見せ場を作って欲しい…とはプロレスファンだけが思うことなのでしょうかねぇ。船木も解説とは。彼の相方だった鈴木みのるは今最高に魅せるレスラーとなっているのに。ブツブツ…(笑)。



実は26日というのは、新日の両国大会の日でもあったのです。かなり興味深い試合が組まれていたのですが、そちらの方は中継してくれないのですね(怒)。おそらく来週の深夜あたりに何週かに分けて放送されるかと。うーん。金曜8時のワールドプロレスリングが懐かしい。僕は金八先生も太陽にほえろも見向きもせずにプロレス見ていたものですが。あの頃の隆盛はどこに…。プロレス頑張れ!!
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Unknown (Unknown)
2006-11-30 18:30:44
お~っ、バックドロップかぁ!!、と思わせといて、アトミックドロップってのは、当時の定番でした。でも、いま考えてみると、あの角度で、バックドロップを食らわされたら、相手レスラーはたまったもんじゃぁないでしょうね。下手すりゃ、「死」ってこともありますもんね。
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>Unknownさん (凛太郎)
2006-11-30 22:38:20
抱え投げバックドロップでハイアングルに持ち上げ(今は高山がやりますね。バックドロップはヘソ投げばかりで、喜ばしいことですが亜流である抱え投げが今は希少価値)、しばらく滞空時間があると…レスラーは前に落とされるか後ろに落とされるか迷うと思うのですね。その迷いが受身をしくじらせることもあると思うのです。考えれば怖いですよね。確かに下手すりゃ「死」です(汗)。
バックランドはアトミックドロップか、と思わせておいて後方へ投げる。これも怖い。えげつなかったですよね。
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