P突堤2

「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

初めて訪問された方へ

P突堤2へようこそ♪
キーボード解説文を大幅増量してリニューアルしました!
こちらのリンクからコンセプトをご覧ください。

連用形転成名詞の一部は、表記上のニュアンスを区別するためよろづを使い分ける

2017-05-31 | 変換三属性+通常変換のシステム考察
「遊び」や「読み」のように、動詞の連用形がそのまま名詞として使われるタイプの言葉があります。このように元は別の品詞であったものが名詞に転じたものを転成名詞と呼びます。
大体は動詞から転成したものが多いのですが、「近く」「遅く」のように同じく形容詞の連用形からの転成もみられます。
また、形容詞・形容動詞の語幹に「さ・み・け」が付いて、名詞になる(例えば「寒い+け=寒け」「静かだ+さ=静かさ」等)などもありますが、ここで扱うのは「動詞の連用形からきた転成名詞」に限って話を進めていくものとします。

ペンタクラスタキーボードの三属性変換においてはわざわざよろづ(イ万=名詞)分けの帰属づけをしなくても「待ち」にはすでにより純名詞らしい「町」があってことさら「待ち」を破格に区別して名詞にとりたててやる必要性のないものもありますし、
「書き」についても但し書き、箇条書き、走り書きのように多様に生産力の高い辞は接尾辞・接頭辞などの延長としてハ万に任せるのが妥当です。ましてや「遊び」などのような言葉を素朴に名詞カテゴリに分類するにしてもそもそも同音衝突に困ることもありません。

そんな中で特段に名詞を意識して使い分ける例として「忍」「光」「話」などの例があります。これらはもともとは連用形の「忍び」「光り」「話し」からきているものですが表記上のニュアンスから収まりをよくするため送り仮名のない単漢字として完結しているほうを好むというものです。
これはこのままでは候補選択から選ぶ手間が煩雑であり、敢えての回避手段として属性を分けることが理にかなっています。
似たような考え方の例として「謡(うたい)」などがあります。これはより限定性が高まっており、「歌い」「謳い」などと明確に分離できるのが良いところです。
※「恥」も例に挙げようと思ったのですが「土師」も「辱」もありちょっとモデル的には散漫かなと思うので補追的にだけ触れておきます。
あとはわかりやすい例として「焼肉」「受付」「取組」などの例もありましたね。ビジネス用語などでもあてはまるのが多く出てきそうです。

ここから送り仮名の有無以外の、連用形のカタチそのものでの適用範囲として少し踏み込んでみると、「酔い」「悔い」「送り」「誓い」「眺め」などが挙げられます。これはフレーム変換・用例考慮の変換とのカラミでどうなるか何とも言えませんが素直に考えると「良い」「食い」「贈り」「近い」「長め」と混同することがなく有用であるかと思います。
もとい「酔いを醒ます」「悔いが残る」「利用客の送り」「確固たる誓い」「のどかな眺め」などのように前後の格関係などを見れば自明かとも思いますが、検索キーワードや何らかの単体の項目名などのように短い語句での弁別には役に立つと思います。
あとは難しい字ですが「篩い(ふるい)にかける」「胸の痞え(つかえ)がとれた」などもうまく取り込めていければ文句ないでしょう。(「古い」・「使え」/「仕え」との区別。)

さらには「渡(わたり)」「学(まなぶ)」「纏(まとい)」などのように人名・地名との関わりが考えられますがこれらは基本フレームとして人名名詞・地名名詞の範疇のものとして捉えられ、人名・地名ドリブンの格関係処理としてや文字列羅列の中での複合語のパーツとしてあらわれる性質もあることから、連用形の転成名詞としての枠組みだけでは捉えられないのでここでは慎重に、単に送り仮名要らずの単漢字表記ができるんだくらいに考えておきます。(そもそも「学ぶ」や「悟る」は動詞の基本形ですしここでの厳密な定義とはちょっと違ってきます。)

あとさらにこだわる人はこだわる、「ハシリ」「モグリ」「ツマミ」「タタキ」「ダシ」などのように連用形の事物をカタカナにして個物性・種物代表性を際立たせたり俗なとりあげ性をもつニュアンスを表す(ちょっとごちゃごちゃした言い方になってしまいましたが)例が存在します。
これらは連用形由来のものに限らず、「アフリカのツノ」「マネジメントのキモ」などのように名詞由来のもので主に比喩的表現で使われているときのニュアンス感を出すのに効果的に使えそうなものも多くあります。
このような考えのものを厳密に精査してみると、「慌てて買いに行ったクチ」「ハナから間違っている」のように具体的事物を表すというより抽象観念的でありむしろ属性ハ万(構造的抽象)に本来帰属させるのが適当であるものも種々あり、必ずしも名詞に分別して利用する必然性がない(かえって一般的な純名詞とカブるので無益)ため、一律に何でもかんでも名詞属性で済ますのには抵抗があります。
ですからこのように名詞由来の比喩的こだわり表記全般はハ万の属性で処理し、連用形由来のものであっても例えば「ハシリ」とか「ダシ」に限って言えば比喩的なので属性ハ万で処理するのが適当かも知れません。
ちょっと整合性に欠けるかなとも思いますが属性ハ万は文法的・品詞的カテゴライズに規定されたクラスではなく単に分類のハコとして便宜実用上の受け皿としてはたらくクラスなので名詞カテゴリのもともとある一般語との衝突を避けるという意味においては属性ハ万に受け持たすのが賢明だと思います。

この辺の議論はまだひょっとしたら盲点があるかもしれませんし、イ万とハ万との綱引きで所属するよろづをどちらに割り当てるのが適当か判断に悩むこともこの先出てくるかと思います。
ここは属性ハ万の特徴を活かして柔軟な帰属定義を構築できればいい住み分けにつながってくると思いますし前向きに考えればいいかと思います。

概観して感じることはやはり名詞がもしかして一番難しいのではないか…ということです。連用形からの転成名詞もまだまだこれからも検討・考察が必要でしょうし文法的な観点からも三属性のインターフェイス的観点からも両立できるものを目指さねばなりません。
語性のたえず揺れ動く名詞はなんと融通無碍で捉えどころがないものなんでしょうか。なにしろあらゆる品詞のものがさまざまな手段で名詞概念化しますから…サ変動詞も接尾語「-化」のつく言葉も「する」をとってしまえば名詞の用をなしてしまうのです。その逆も然りです。
先ほどの議論のように抽象的なジャングルへ迷い込むとややこしくなってしまうことが往々にしてあるので、まずは個別具体的で明らかに帰属弁別の用があるものから優先的に着手して、なんとか名詞のしっぽをつかんでみたいものです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする