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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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再変換キーは不味い学習を取り消すワンタッチキーを兼ねる

2019-01-24 | その他機能キー、ファンクションキー解説
去年の暮れに新たなキーとして[再変換]キーを設置することにしましたが色々と練り込み不足に直面することとなりました。
半ば思いつきで加えたこのキーですが、そもそも従来のキーボードの踏襲を考えるとなぜか抜けていた[変換][無変換]を盛り込まないとまずいんじゃないか…との判断により新設キーを作ってまでして導入したのですが、ちょっといろいろ情報を整理したうえで位置づけを再検討することにしました。
しかしながら去年末のニュースでWindowsのIME切り替えが「半角/全角」キーによるトグル方式から、「無変換」でオフ、「変換」でオンになる、いわゆるMac方式に切り替えられる方針が示されたところであり、私が気をまわしたところの[変換][無変換]キーの役割は最前線から退く形となり、設定等の変更でオプション的に対応する領分に追いやられることになりました。
考えれば[変換][無変換]の操作はそれほど使ったこともないので優先度は低いかな…とも思ったのですがこれがないと一度変換してしまった後の再編集の手立てが失われてしまうことになるのでこのオペレーションの命脈は保たなくてはいけません。

そこへきて突発的に「誤って確定してしまった語の学習を即時取り消すキーと、この[再変換]をいっしょに併せ持つワンタッチキーにしてしまえばどうか」
という考えがむくむくと湧き上がってきてしまったのでそのインパクトでせっかくちらちら見えていた問題点がおろそかになってしまいこの問題の本質がかえって捉えづらい袋小路へと誘いこまれてしまったのでした。
そこで絡まった考えをもう一度解きほぐしてあらためて再考察を試みることにしました。

そもそも[再変換]キーがそれほど活用されていない背景を考えてみると、これは確定キーを押してしまった後ですから再変換の範囲をドラッグすることが求められますししなければキャレット直前の数文字を再変換するにとどまるだけです。
要するに費やした労苦の割には見返りがあまりにも少ないインターフェイスであることがユーザーにとって[再変換]の利用を億劫にさせる一因だと思います。
従来の←→操作(+Shift含む)での範囲選択などの使い勝手もよくありませんし文中・文端の特定のポジションの注目ワードを素早く編集可能な状態にもっていく機能性がなければ再変換の恩恵をあまり感じられない構造的な問題だと言えるかもしれません。
ドラッグ選択などの手間を省いて編集操作したいのはやまやまですがそれ以前に編集操作の限界が足かせとなってきています。
ペンタクラスタキーボードのでにをは別口入力では、過去記事
≪≫でワード間を移動して変換 - P突堤2
で提案したように≪≫で移動し助詞を挟んだ単語ひとかたまりでの編集アクセスが容易になっています。それに加えて助詞部分「で」や「が」「の」などはあらかじめ省かれたうえで飛び石的に範囲選択するので単語末尾からの削除編集も楽ですし以前導入した[左デリート]キーも使えば単語1チャンクの頭からダイレクトに削除編集する便利さも加わりました。
なのでこれらの特長をうまく活かした[再変換]キーの挙動を設計していくことが求められるのです。
まずは[再変換]キーでの変換対象文字列の範囲をいちいちドラッグ選択する不便をなくして、直前の確定時の対象文字列全体を記憶しておいて、[再変換]時にはその文字列を改めて呼び起こす動作に変更する必要があります。
ドラッグ選択や保存後文書を再編集するときの対象文字列は別物として考え、まずはライブの編集作業時のキーとしての機能はどういったものにしていくのかを煮詰めていかなければなりません。
こうして確定前文字列に戻したものを編集というまな板に載せてから考えると、ペンタクラスタキーボードではでにをは別口入力のサポートも相まってロングレンジの長文一括変換が理想とするスタイルですから先程の飛び石的範囲選択/移動が活きてくるとは思いますが、
実際の範囲提示の段になって注目チャンクの提示を一律末尾チャンクから順次提示していくのか、あるいはIME側が気を利かせて変更されるであろうチャンクに目星をつけて提示していくのか…この辺のインターフェイス・挙動をうまく想定していなかったのでそろそろめどをつけないといけないところです。
今回の考察ではちょっとそこまで至らなかったので今後の課題としていきたいかと思います。

話は戻って学習結果の取り消しですが、各種IMEでもメニューからたどるなどすでに同様の機能はあるようですが「即時取り消し」「ワンタッチ」というアクセスの便宜に振り切った使い方を提案しているのは一から機能キーをゼロベースで吟味できるペンタクラスタキーボードならではの利点でもあります。
[再変換]と「学習取り消し」を兼ねる機能の兼任については、ひょっとしたら単機能キーを良しとする不文律があるのかもしれない、好ましいものではないのかもしれない、という懸念はありますがこれらは同時に起こりやすい密接に関わりあう動作ですし実験的な提案として複合機能キーの余地も残しておきたいかなと思っているところです。
いずれにしても「再変換だけでは物足りない」のも事実ですしならば積極的に創造的に[再変換]の意義を見出していきたいところであります。

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るてしでsでしてる:基本動詞のエッセンスは大体揃った

2019-01-08 | 語尾系の別口入力
ペンタクラスタキーボードの別口入力には語と語のつなぎ目に配置される「格助詞系」のものが多いですが、文末にニュアンスをつける「語尾系」のものもいくつかあります。
単純に末尾に付加的にマーキング配置するものばかりではないですが、各々動詞変化形のそれぞれの性格・場面に応じて大胆な入力手法でマーキングする方法が提案されました。
個々の説明は後においておくとして、ざっと列挙してみます。

<語尾系の別口入力>
コピュラ動詞  :[だ][でs]
サ変動詞+その他:便利キー[し]
ル形動詞    :[○R][×r]
動詞テ形    :[て]

どれも基本的なものでありながら特殊な一般性をもつ動詞(変化形)ばかりです。
まず、英語のbe動詞との類似点も多いコピュラ動詞の「だ」「です」です。
これは第一義的には断定の助動詞ですが別口入力では形容動詞の活用語尾の「だ」「です」も同じくマーキングするので扱いは全く同じです。
形容動詞は「静かだ」「新鮮だ」みたいに末尾のダもひっくるめて一つの語のカタマリだという定義ではありますが、「静か」も「新鮮」も単独で存在し得ることができますし、[性質や状態などを表す体言+だ] だとみなすこともできますのでこうして分離・解体して捉えてしまったほうが便利だというのも自然な話であります。
ただこれを体言だというにはいささか実情に合っていませんし、せっかく「よろづ」なるものを作ってこうした品詞境界上の体言を別の枠組みで捉え直そうとしている最中ですから、あくまでカタマリ性のところはかろうじて尊重することにして、
カタマリを分かつ「だ」としてあっても分離性の仔細には深入りせずよろづからのマーキングなのですよ…という体をとっていきたいと思います。
[でs]も丁寧形でこれと同様のマーキングであるのですが、[でs]ょう=でしょう、[でs]た=でした、[でs][て]=でして、[でs]それ以外の接続=です などのようにワイルドカード的に不定パーツとして機能させながら後続の語が続いていくので幾分慣れが必要であるかと思います。
兎にも角にも、コピュラ動詞まわりという最重要な文字列に「×山田○山だ」のように誤変換の混じる余地は皆無にしておくためにも「です」も含めて厳格に別口入力を要求する事をどうかご理解いただきたい次第であります。


さて次は「--する」という形であらゆるものを動詞化するサ変動詞ですが、このへんはサ変動詞の活用のすべての語尾をカバーすることはできず、目下模索中のところであります。
下記のように活用バリエーションはさまざまありますがとりあえずこの中から「し」でマーキングできる部分だけ別口入力で対応する方向性でいこうかと思っています。

(未然形)「[し]-ない」「[し]-よう」「せ-ず」「せ-られる」「さ-ず」「さ-れる」等
(連用形)「[し]-ます」「[し]-た」「[し]-たい」
(終止形)「する」
(連体形)「する-とき」
(仮定形)「すれ-ば」
(命令形)「[し]-ろ」「せよ」
(命令表現) 「[し]-なさい」

主に念頭に置いているのは連用形の「し」、特に<×身命を都市計画に臨む ○身命を賭し計画に臨む>のように連用中止用法での誤変換対策のためにあるといっても過言ではありません。
さらに「し」は(氏・市・死・誌・視・士)などの単漢字誤変換誘因パーツや逆引きでいう末尾「し」になる単語「足・静止・牛・用紙・絵師・串・可視・腰・砂嘴・他紙・西・菱・星・模試・恩師・監視・検視」などもあってこれはかな文字の中でもっとも注意しなければならないものですので、あえて「し」一文字のためだけに特別に専業的に別口入力を用意したものだとも言えます。
ここでさらにややこしいことなのですが、「探す・出す・押す・渡す」などのようなさ行の五段動詞も先程のサ変動詞と同様に「し」でマーキングしますので、一部「怪我し」⇔「汚し」のように競合するケースも生じてしまいますが、五段動詞は「長押し」⇔「長尾氏」のようにマーキングが有効にはたらくケースも捨てがたいので両者コンパチブルで手広く扱っていきたいと考えています。
あと言い忘れたのですがサ変動詞では未然形の「せず」や「せられる」などはカバーできず同じ未然形の「しない」「しよう」など「し」に関わるものだけは対応するといった具合で文法体系からみるといびつな定義になっているという問題もあります。
これは「し」という文字まわりのさばきだけに特化することを最優先したことによるものでまだ結論は出ていませんがいくらかの考察を踏まえて現状を鑑み、うたい文句の「サ変動詞のための別口入力」という看板は下ろして、これとは別にあまり厳密な整合性で縛られない「便利キー・『し』」というちょっとぼやかしたフレーズで臨機応変にやっていくことになりました。
このように課題も多い「し」まわりの別口入力ではありますが、最低限サ変動詞のエッセンスには幾分採り入れることができたので苦し紛れながらではありますがひとつの懐柔策にはなったかと思います。


そして「ル形動詞」としてこのブログでとりあげた末尾ルで終わる動詞の事なのですが、これはどうも日本語教育界隈では「食べる」といった末尾ルで終わる動詞ばかりではなく「持つ」みたいなものも含めて終止形一般を指してル形動詞と呼称しているらしくて私の用語の使い方は正しい使い方ではなかった事が発覚しました。
後から知った事とはいえ「末尾がルで終わる動詞」とやっているとなかなかにまどろっこしくなるので「ル型動詞」とでも直しておきましょうか考え中なのですが今だけは「ル形動詞」のままで話を進めていこうかと思います。
ル形動詞はくだけた若者ことばでいう「キョドる」「アガる」のように語幹カナの表記ニュアンスにこだわった動詞を表すために用意されたものであり通常のラ行五段動詞「太る」「切る」などの漢字と送り仮名で構成される一般動詞には[○R/×r]を使わずべたの文字列でタイプしていきますので通常はそれほど意識することはない入力であります。
過去記事においても「ル形動詞の別口入力=道楽めいた諸事」と位置づけているので一般ユーザーの普段使いにはあまり関係ない事なのですが「あがる/アガル」からのF6F7を使って端からかなカナ境界を整える動作(アガる)も割とまどろっこしいですしタイプの流れも中断してしまいますのでワンタッチで押せるオペレーションとして[○R][×r]操作体系を提案したというわけです。
この操作は(当初案から一部微修正)

現在形     ググる         ぐぐ[○R]
過去形     ググった        ぐぐった  ※両[R]キー伴わず、素のべた入力
テ形      ググって        ぐぐっ[て]
否定形     ググらない       ぐぐ[×r]ない
仮定形     ググれば        ぐぐ[×r]ば
命令形     ググれ         ぐぐ[×r] (終端)
可能形     ググれる        ぐぐれる  ※可能打ち消し「ぐぐれない」過去形「ぐぐれた」マス形「ぐぐれます」仮定形「ぐぐれれば」もべた入力
受身形     ググられる(尊敬・自発も)ぐぐられる  ※受身打ち消し「ぐぐられない」過去形「ぐぐられた」マス形「ぐぐられます」仮定形「ぐぐられれば」もべた入力
使役形     ググらせる       ぐぐ[×r]せる
使役受身形   ググらされる      ぐぐ[×r]される・ぐぐ[×r]させられる
意思形     ググろう        ぐぐ[×r]う
マス形     ググります       ぐぐ[×r]ます
希望形     ググりたい       ぐぐ[×r]たい

のようになっており、基本形/連体形「ググる」のときに[○R]を使い、それ以外の残りの各活用形では後続の語句の並びで後付けで決定される不定語素の[×r]を使います。
一部可能形や受身形の「れる/られる」の末尾のr要素に[○R]をマーキングすると当初はしておりその一方でより込み入った「ググれない/ググらない」は判別が競合し[×r]ひとつでさばくことは不可能なので可能形-打ち消し・過去・丁寧・仮定/受身形-打ち消し・過去・丁寧・仮定のときはべたの文字列でタイプするとしていました。
こちらは非常に分かりにくく一貫性がなかったので可能形受身形のプレーンな形であったとしても統一感を出すためわかりやすくこちらもべたの文字列で[○R]の一切かかわらない形に軌道修正しようかと思っております。
可能も受身も「れるられる」=[クラスタキー・ら行」で集中打鍵になりますが別口入力で分散されるとかえって打鍵勘がとっちらかってしまうのではないかという懸念もありこのような形になりました。
いずれにしてもこのようにややこしい仕組みをレギュラーのル形一般動詞すべてに適用するのはちょっと気が引けるところでもあり、[カナ語幹]+る の表記と入力即応性に特にこだわりのある方に向けてのオプションのようなオペレーションでありますのでちょっと面倒にはなりますがうまく住み分けできれば良いなと思います。


最後にテ形活用マーキングの別口入力[て]ですが、これはブログ開設当初は採用せずでいたものの次第にその重要性を知ることとなりのちに取り入れられる運びとなったものであります。
これはすでにあげた文末ニュアンス「でs」や「ル形動詞」との関連が根底にありそれらをうまく運用していく上で必然的に求められることがわかったからであります。
まず[でs]の別口入力は繰り返しになりますが「[でs]した=でした」「[でs]ょう=でしょう」「[でs]けれど=ですけれど」「[でs][の][で]=ですので」のように後続の語を見て解釈を変える不定語素を使ってタイプしていきますが、
[でs]+て のときに「ですて」とならずに「でして」とさせるために明示的に[て]のマーキングを求めるという都合が生じてきます。
これは「そうです天才です」のようになる分には[でs]=です の解釈ですんなりいけるのですが「ただ今鋭意製作中でして完成まで少し時間がかかります」のように接続助詞の「て」(ですのテ形)につながる場合は「でし-て」と変化しなくてはならないのでべたの文字列キーとは別に別口入力の機能キーで区別しておく必要性が生じてくるためです。
もとはといえばこの「でして」の変化形だけのために[て]を作ってみてはどうか、というのが発端だったのですが、これが大きく広がりを持ち局所的な問題にとどまらない、動詞変化に避けては通れない基本活用であることがわかったというのも不思議な話です。
[て]には[でs]との接続だけに限らず、「よろしくてよ」みたいな終助詞『て』+語調を整える間投助詞『よ』の場合や「人生ってめぐり愛だよね」のように係助詞で使われるもの、「女性でってなると」のように格助詞で使われるものももちろんあります。
動詞活用まわり(テ形)とは別の終助詞・係助詞・格助詞なども含め別口入力の用法は多岐にわたっているのです。
話は変わってル形動詞要素[○R][×r]も別口入力[て]の事情に少なからず関わっています。
ここではル形動詞の各種変化に対応するにあたって「ググらない」「ググるとき」「ググれば」「ググろう」など「らるれろ」各段変化がありましたが、それだけではまかないきれない「ググった」「ググって」などの形もあり、これに対応するために「て」にご登板願ったという流れになりました。(過去形「ぐぐった」の[た]については悩んだ結果ボツにしましたが)
ただテ形の「て」には音便形で濁音に濁る形の「読んで」や「泳いで」などがありますがこちらはある理由があってマーキングをしません。
それはすでにある別口入力の「で」の方では単文字の[で]場所/手段/材料/原因/理由の格助詞…がありますし、ロングレンジでは形容動詞の活用語尾の[で]や断定の助動詞[で]もあります(「静かである」「ポイントである」)ので
無理にテ形活用の濁音の方にまで広げてしまうと「恨んで/ウランで」「傷んで/異端で」などが競合して判別不全をおこしてしまうため何とも具合がよろしくないのです。
そのため片務的な格好にはなりますが清音のテ形には別口入力[て]で対応し、濁音のテ形は上記のものと区別するためこちらはあえてべたの文字列で解釈していくことになりました。


…以上で動詞変化のニュアンスをつける各種の"語尾系"別口入力について論じてきましたが、どれも単純な付加マーキングで済むものというわけではなく、活用変化、前後の接続、サ変動詞と五段動詞との兼ね合いなど背景にさまざまな事情を抱えながらの入力ですので、なんとかユーザーに理解して頂けるよう丁寧に解きほぐして周知していきたいなと思っております。
そこで新カテゴリ「語尾系の別口入力」を立てて、語尾系の別口入力に関してより突っ込んだ考察をしていくことにしました。
すでにある「別口入力にまつわる諸問題」からの一部独立という形になりますが、過去記事も含めたカテゴリ移動などの再編は行わず、この記事をもってして以後トピックを追っていきたいと思います。
この記事を書きつつ気づいてきたことなのですが、語尾系別口入力は他の格助詞系の別口入力と違って一筋縄ではいかなそうであることがわかったのでこうして独立したカテゴリで論じるに充分値するものだと思います。
まずはカテゴリ最初の記事ということで語尾系別口入力のそれぞれを列挙し概観的に解説していくことができたので土台は整ったかと思います。
これからは個別の別口入力や、ここでは触れられなかった語尾ニュアンスのあるものについても論じていって考察を深めていきたいのでどうぞよろしくお願いします。

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