ぴーちくぱーちく

活字ジャンキーぴーの365日読書デイズ。

永遠とか純愛とか絶対とか

2007-12-30 11:33:33 | 
岩井志麻子氏です。

永遠とか純愛とか絶対とか/負け馬の生き天国/逃げていく果実/虎とあの子が煙草を吸っていた頃/冥王星の旅の果て/あまり暖かくない南の島/一〇〇万ドルの借景/夜は戦場で眠りたい

少なくとも「純愛」にイメージされるような内容でないことは確か。
読む前から確定。
表題作は異国の娼婦に本気になってしまった若者の話なのですが、
らもさんの作品にそういうテーマがありました。
異国でこの世の春を謳歌して、これは本当の恋なのだと平和ぼけした日本人の男だけが信じていて、
病気をもらってしまったことに日本に帰ってから気づくという、自業自得ともある種の悲哀さも感じる話です。
結末は少し違いますが、つくづく日本の男って純情なんだか間抜けなんだか。
婚約者を捨てて異国の娼婦との恋を取れば、地獄が待っているのは必至だと若者は知っています。
でも若者が思う「地獄」すら、娼婦が実際に経験してきた過去に比べれば生温いものです。
簡単に口にする「永遠」や「絶対」と同じで、「地獄」の意味合いが非常に軽いのです。

娼婦が恋するのは、いつだって客の懐。
これって今も昔も変わらないはずなんですけどね。
傍目からみれば、絶対に「純愛」には当てはまりません。
お金が間に挟まっての「愛」って、成立しませんよ。
「絶対」ではないですが。


名残り火 手のひらの闇2

2007-12-30 00:50:34 | 
藤原伊織氏です。

親友、柿島が死んだ。若者から理由なき暴行を受け意識が戻らぬまま帰らぬ人となったのだ。
堀江は彼の死に不審を抱き、真相究明に乗り出すことに。

手のひらの闇…スイマセン記憶にあまり残ってなかったです(汗)
「ひまわりの祝祭」と「シリウスの道」がごっちゃになってました。
主人公のタイプがやっぱり似ているのですよ。
でもこれこそが藤原伊織の真骨頂なわけですから、全然いいんですよ。
ダメなのは情けないわたしの記憶力なのです。
読みながらほっそい記憶の糸を手繰りよせておりました。

大原さんっていうのが、堀江の元部下。デキる女。夫とは別居中。
堀江に対して尊敬も信頼もしていて、言葉は手厳しいけど
その後ろにそれ以上の感情が透けてみえます。
二人とも憎からずと思っているのに、近づきそうで近づかない。
あからさまな言葉でなくても、伝わることがあります。
言葉の裏にある、相手の気持ちを慮る。大人です。
簡単に恋愛に走らないのが、じれったいのですがイイのです。
でも強い絆がはっきりと見えますよ。

言葉の端々から漂う空気が好きで、大人ってこういうことなんだって、
何が粋で、何が無粋かを教えてくれる作家さんだっただけに、
堀江と大原が今後どうなるか、気になりつつ永遠に謎です。
推敲を重ねている途中経過での急逝、本当に残念です。

図書館革命

2007-12-27 23:03:44 | 
有川浩氏の図書館シリーズ最終巻です。

敦賀原子力発電所の襲撃に端を発した、メディア良化委員会と図書隊との戦いは最終局面へ。
郁たちは、テロリストが参考にしたと疑いをかけられた作品と作家を守りきれるか。

非常にデリケートな問題提起もしつつ、目がいってしまうのはやはりゲキ甘な展開。
わたし恋愛モノは苦手だったはずなんだけど、ここまでベタな展開だといいのかもしれない。
仕事の休憩時間で読んでいるので、あくまでも冷静なフリして読んでましたが、
何度「うきゃー!!」って叫んだことか。あ、心の中でですよ。
これでシリーズ完結とあって、これでもかと言わんばかりのゲキ甘攻撃。
気づいていない、気づかれていないと思っているのは当人ばかりなり。
もうバレバレですやんっ教官。

メガネ屋さんと某百貨店のエピソードにつきましては、
仕事で両方とも関わっている(た)だけに、ツッコミいれたい。
特に後者。

あんな店員さんはたとえ○神百貨店とはいえ、絶対におりませんっ(笑)

どっちかっていうと、千林商店街かと思いましたよ。
で、出来上がった結果は「魅惑の変身」(byノックは無用)級でしたね。
いやはや、楽しんで書いていらっしゃる感じが非常に伝わってきました。
でも関西の人がみんなああだとは、どうか思わないで欲しいなと、
ちょっぴり心配してみたり。余計なお世話ですが。

ところで来年4月にアニメ化されるそうです。
最近の声優さんはわかんないですが、某掲示板での意見と同様、
玄田隊長は、やっぱり玄○哲章さんに演じて頂きたいです。
絶対有川さんだって、狙って名付けたはずですってば。
そこだけは譲れません。いやマジで。





最後の記憶

2007-12-25 23:07:00 | 
綾辻行人氏です。

白い閃光とショウリョウバッタの羽音に脅える母は、
若くして患った脳の病でほとんどの記憶を喪失している。
幼い頃に体験した恐怖が母の「最後の記憶」となり、
苦しめ続けていることを知った森吾は幼馴染みのゆいと共に、
母の故郷へ向かう。

雰囲気は「囁きシリーズ」に似ているのかな。
不安の煽り方がホラー映画的で、言葉が視覚に訴えてきます。しかも「日本」のね。
リアルに情景が浮かんで、何とも言えない雰囲気が霧のように立ちこめてきます。
ただ、恐くはありません。幻想的といったほうが近いかもしれません。

白髪痴呆という言葉は初めて知ったのですが、
20代後半から発病することもあるそうで、鏡を見る度にドキっとしそうです(苦笑)
だって物忘れ、激しいときがあるんですもん。

それはどうでもいいのですが、(←ほんとにどうでもいい)
「白髪」というキーワードが、
別のお伽噺に繋がっていることに解説を読んで理解しました。
あのミドリガメの描写、なんか突拍子もないなと思ってたんですよ。
相変わらず小説の表面だけしか読んでいないのだと、改めて反省。

どちらさま

2007-12-24 23:30:49 | お笑い
年に一度のお楽しみのM-1グランプリ♪

まずはサンドウィッチマン。
敗者復活からの優勝、劇的でしたね。
エンタに何度か出ていたそうなのですが、生憎と滅多に見ないので、
ネタどころかコンビ名も初めて知りました。
初めて見た時には、どこの東京ダイナマイトかと…
知名度では天と地ほどもあるキンコンを破っての優勝は、
また格別のものだったでしょうね。
今年は麒麟がでないので、正直どうでもいいや!って思ってたのです。
実際、どのネタを見てもくすっとくるぐらいで、大きな笑いがなくてね。
でもようやく最後で笑わせて頂きました。ほんとに面白かった。
チュートリアルみたいに激売れするのは難しいかもしれないけど、
いろんなお笑い番組に出て来て欲しいです。また見たい!

キンコンは1点差で予選2位。絶対トップ通過だと思ってたはず。
個人的にはキンコンよりナイナイ派なので、どうも一歩引いて見ちゃうのですが、
彼らの漫才にかける意気込みってのは、伝わってきました。
梶原の500円玉ハゲを見れば、どれだけのプレッシャーと戦ってきたのかもまた然り。
悔しいけど、確かに面白かったです。ハイタッチのところとかね。
バラエティーでしか見なくなって、コントぐらいしか見なくなって久しいのですが、
まだ漫才やれるんだ!って、ちょっと見直しました。(でもやっぱり西野の口元が、生理的に受け付けない…)
でもかなり緊張してたんでしょうね。息を吸いながらセリフを言ってたので、
あの早口では聞き取りにくかったかな。
決勝のネタも悪くはないけど、二人ともいっぱいいっぱいでしたね。

知名度の高さではハリセンボンもそうなんだけど、パターン化されてて、
新鮮みにかけるんだよなぁ。何度見ても面白いネタっていうのはあるんだろうけど、
彼女らの場合、まだそれはない。
M-1出るならもうちょっと漫才の基礎体力つけた方がいいよ。

ダイアンはいやもう大健闘です。
既にいぶし銀みたいな存在になっちゃってますが、来年に期待。
千鳥もトータルテンボスも確実に巧くなってる。
ポイズンガールバンドは…あのネタってM-1向きじゃないよね。
シュールなんだけど、尻すぼみじゃ去年と変わらないもの。

ザブングルは…やっぱり顔芸です。その一言に尽きる。

笑い飯は期待しすぎたかな~~~。順番が1番目じゃなかったら、もう少し変わったのかな。
でも運を引き寄せるのも、力のうちですもんね。
来年こそは麒麟との一騎打ちになるよう、願ってます。

だから麒麟、がんばれ(つまりそれが言いたい)
彼らにかけているのはハングリー精神だ。初心にかえってくれ。
二人とも芸以外でいいことがありすぎた。
それが邪魔をしたような気がする。

        ****追記*****
改めて読むと、わたし何様だ(笑)この上から目線。
さしずめ気分は巨人師匠ってところです。

バスジャック

2007-12-20 23:32:43 | 
三崎亜記氏です。

二階扉をつけてください/しあわせな光/バスジャック/二人の記憶/雨降る夜に/動物園/送りの夏

実は「失われた町」の前にこの作品を読みました。
何の先入観もなく、まっさらな状態で読み始めたので、
短編集とも知らなかったのでした(笑)

真っ先に「二階扉」って何?から始まりますが、嫌だな二階扉は二階扉ですよ。
素朴な疑問は解決することなく、当たり前のものとしてどんどん話は進みます。
本当は「二階扉」っていうのが、実際に存在していてわたしが知らないだけだったのかしら。
そんな不安すらよぎってしまうほど、ごく自然なのです。
そしてわたしが延々と「二階扉」にこだわっている間に、
思いがけない着地点で結末を迎えてしまい、この作風は自分には合わないかも。
なんて思っていたのですが…

「送りの夏」で見事に打ち抜かれました。
主人公は小学生の女の子。
母親が突然家出をしてしまい、一人で探しに出ます。
母は数人の男女と、そして人間と見間違うほど精巧な人形と共に暮らしていました。
設定だけ見るとホラーみたいですね。

大切な人のそばにいることは幸せ。
でも大切な人が自分を置いてこの世を去ってしまった時、
どうやって現実を受け入れて向き合うのか。
死は突然で理不尽です。
子供の目線で初めての「死」を受け入れる過程は、とても胸に沁みました。
このテーマは「失われた町」に通じるものがありますね。


失われた町

2007-12-19 23:35:15 | 
三崎亜記氏です。

「町」は30年に一度、住人と共に消滅する。原因は不明で食い止める術はなく、
「汚染」してしまう為に、町に関するありとあらゆる記述は削除され、
悲しむことも許されない。
それでも遺された人々は悲しみと向き合い、「消滅」と戦う。

独特の世界です。
町が消えるというより、その町に住んでいる人間だけが消えてしまう方が正しいでしょう。
建物は残ります。ごく稀に消滅を免れた住人もいますが、「汚染」されています。

近未来SFのようで、現代の日常と変わりないようでもあり、
日本のようでどこか異国のような雰囲気でもあります。
優しくて哀しい童話みたいな幾つかのエピソードで構成され、
プロローグとエピローグの時間をわざと逆になっていて、物語の世界へぐっと引き込まれました。

「汚染」「町」普段使っている言葉でありながら、意味合いがことなることにすぐ気づきますが、
特に詳しい説明もないままに、色々な名前がでてくるので少し混乱しました。
最初の登場人物の由佳が主人公かと思いきや、1話ごとに主役は変わります。
時間軸も異なります。次の話に進んだ時に時間が過去へ戻っていたりするので、
1つに繋げるには、読み終えてもう一度復習がてら読み返す必要があったのですが、
それはわたしの読解力のなさゆえのこと。
でも是非読み返して頂きたいです。きっと味わい方が違ってきますよ。

町は失われてしまうけれど、理不尽な力でも奪われないものがあります。
それを教えてくれる小説です。

オーデュボンの祈り

2007-12-19 00:05:02 | 
伊坂幸太郎氏です。

コンビニ強盗に失敗した伊藤は、同級生だった城山が警察官になったことを知る。
逃走することには成功したが、気づけば見知らぬ島へ連れて来られていた。
「荻島」は150年以上も鎖国状態にあり、未来を予言できるカカシがいた。

これが第一作。ここから伊坂ワールドが展開していくのです。
読む順番はかなり滅茶苦茶になってしまいましたが、ようやくスタート地点にきました。
この後別の作品に伊藤は何度か登場しますし、「神様のレシピ」という言葉も出てきます。
あぁこれか、という感じで補完していきながら読んでいました。

それにしても、です。
未来を予言するカカシという突拍子もない設定が、意外にすんなり受け入れられました。
きっと突拍子もないのが、カカシだけではないからでしょう。
妻を殺害されて以降、嘘しか言わなくなった画家。
太りすぎて動けないウサギという名の女性。
独自の基準で処刑する桜という名の男。

言葉を話すカカシだけだったらファンタジーなんですが、殺人事件が起こります。
殺されたのは、未来を予言できるはずのカカシ。
自分の未来は見えなかったのか。それとも見えていたのに敢えて殺されたのか。
謎は深まる中、別の殺人事件も起こります。
でもミステリー一辺倒というわけでもありません。
最初から最後までなんだか不思議なんだけれど、でも引き込まれてしまうのです。

何気なく交わされた会話が、パズルを完成させる為に大事な1ピースだったり、
こんなにシュールな世界なのに、非常に論理的に展開されていたり。
意外性に満ちた作品であると思います。


向日葵の咲かない夏

2007-12-14 21:51:16 | 
道尾秀介氏です。

学校を休んだS君の家へ届け物をしたミチオは、そこでS君の首つり死体を発見してしまう。
学校へ戻って担任の先生に伝え、警察に連絡してもらうが、死体は消えていた。
ミチオは妹のミカと、生まれ変わったS君と共に謎を追う。

何しろ暗い。
自殺した(?)S君はいじめられて、主人公のミチオもまた、母親から虐待を受けていて、
担任の先生は先生という職業に就くには、あまりにも異常な趣味の持ち主で…
謎を解き明かすという目的がなければ、読んでいるのが辛い。
「死にぞこないのあお」(乙一)を読んだ時よりも、もっとやり切れない。
何かべっとりと張り付くような、不快感が拭えないまま。
とにかく張り巡らされた伏線が一つに繋がっていくまでは、苦行に近い。
異常。異様。違和感。様々な嫌な感覚がまとわりつく。

でもあらゆる違和感は、たった一つの答えに結びつくためにあった。
うぅ、叙述トリックにしてやられてしまった。
あまりにも見事にしてやれてしまったので、読み終えてぽかーんとしてしまった(笑)
事実はたった一つしかない。
答えがわかってしまえば、腑に落ちなかった全てが納得いく。
スッキリはするんだけど、結末がやっぱりやり切れなくて、
結局は嫌な気分がずっと残ることとなる。不快感たっぷりなのに出来はいい。
何なんだ、この作品は。

空の中

2007-12-10 23:55:11 | 
有川浩氏です。

高度2万mの空域で、事故は連続して起こった。
父を喪った少年は謎の生物を拾い、
尊敬する上司を喪ったパイロットは、事故調査員と共に謎を追う。

空の上に謎の生物がいるという設定は、突拍子もないのだけれど、
あくまでも真面目に丁寧に描かれているので、妙に納得させられました。
さすがに本当にいるかも?とは思えませんが、こういう世界があってもいいじゃないか。
アリです。大いにアリですよ。

『ラピュ○』から発想のヒントを得たそうですが、
わたしはどっちかというと『ドラ○もん』のとあるエピソードを思い出しました。
「風子」と名付けられた小さな風の話です。
関東を直撃する進路を辿る台風と戦った風子と、瞬の命ずるままに仲間を殺すフェイクが、
少しだけ重なりました。結果は少し違いましたが。

…脱線しました。
恋愛モノをメインとして読んでいくと、ベタ甘すぎて面映いのですけれど、
これもお約束ってことで。
やっぱり宮じいの存在が大きいかな。
出ずっぱりではなくても、大事なところで締めてくれる重要な役どころです。
言葉というのは、何を言うかよりも誰が言ったかの方が、
伝わり方が全然違うのですね。
同じ意味合いのことでも、説得力がまるで変わりますから。
言葉の裏側にあるものが大事なのです。