ぴーちくぱーちく

活字ジャンキーぴーの365日読書デイズ。

気分は名探偵

2008-01-30 22:28:17 | 
犯人当てアンソロジー

有栖川有栖 「ガラスの檻の殺人」 犯行現場は路上の密室!?   
貫井徳郎  「蝶番の問題」    豪雨の貸別荘で劇団員全員変死
麻耶雄嵩  「二つの凶器」    大学の惨劇。名探偵木更津動く!
霧舎巧   「十五分間の出来事」 失踪する新幹線で男が倒れた!
我孫子武丸 「漂流者」      芸能プロ、殺人クルージング
法月綸太郎 「ヒュドラ第十の首」 容疑者は三人のヒラド・ノブユキ

このメンバー、なんて豪華なんでしょ。これでハズレなわけがない!
はい。どの作品も良質の短編ミステリとなっております。
元々夕刊フジでリレー形式で発表されたそうで、それぞれ正解率が↑発表されたわけです。
なんですか、貫井氏の1%って…
ていうか、よく気づきましたね。正解された方。
大抵「あれ?」と思う箇所があるのですが、不自然さが全然なかったんです。
でも解決編を読めば、ああなるほどなとなるわけです。
ただしわたしの場合は、全てにおいてそうだったわけですが。
だって法月氏の作品だって28%ですけど、きっとこれが解決の糸口になるんだろうな~とわかる程度で、
そこから推理して組み立てていくことなんてできません。
いや、胸張って言うこっちゃないですが。

さて巻末には作者による座談会が収録されています。
が何故か名前は伏せられていまして、これもまた懸賞付きの犯人当てならぬ「著者名当て」になっております。
すぐにわかったのは「C」さん。だってお一人だけ関西弁だったので(笑)→有栖川有栖氏
そして「D」さんは作者からヒントがあったという記述から→麻耶雄嵩氏
あとは作者のプロフィールとにらめっこして、京大推理研は3名いらっしゃいます。「B」「D」「E」さん。でも「D」さんは既に判明。→残りは法月綸太郎氏と我孫子武丸氏
正解率が高かったそうなので「B」さんは→法月綸太郎氏
残った「E」さんが→我孫子武丸氏
ちなみに「A」さんは正解率が低かったということで→貫井徳郎氏そして残った「F」さんが→霧舎巧氏だと思うのですが、いかがでしょう。





ウランバーナの森

2008-01-28 00:05:52 | 
奥田英朗氏です。

ポップスターだったジョンは、全ての仕事を断り隠遁生活を送っていた。
ある年の夏、妻の実家が所有する別荘で過ごす事になったのだが、
フラッシュバックとひどい便秘に苦しめられる。

ジョンというのは、かの有名なあのジョンです。
作中、奥さんの名前はケイコさんになってますが、ヨーコさんです。
わたしはその世代ではないのですが、例えば「リヴァプール」だとか「アビーロード」だとか、
「4人組」という幾つかのキーワードで、すぐにわかります。
ジョンはジョンであるけれど、ヨーコがケイコである理由が今ひとつわからないのですが、
これはフィクションなんですよ~という姿勢を見せようとしている為かもしれません。
もしノンフィクションだったら、ファンはどう思うのかしら。
ジョンのイメージが!って怒る方も出てきそう。だって便秘に苦しむジョンって…

ジョン・レノンの曲は多少知っていても、彼の生い立ちは知りませんでした。
特殊な生い立ちであったり、攻撃的な性格だったことは本当のことみたいです。
スーパースターのあまり語られることがなかった空白の4年を、
この作品は虚構という形をとりながらも、巧く埋めてあります。
彼がこれまで受けてきた精神的外傷をどうやって癒したのか。
そもそも彼にはトラウマがあったのか、それは定かではないけれど、
説得力がありました。

これがデビュー作ということですが、精神科医が登場するあたり、
例の伊良部先生の原型を垣間みたような気がします。



撃沈

2008-01-25 22:59:58 | ぴーの日常
どうにか今でも週1ペースで、バレエは続いております。
相変わらず体重は落ちません。増えてもいないので、現状維持です。
元々体重は大きな変動なく、大きく増えない代わりに大きく減らない体質のようです。
でもせっかく続けているのだから、ちょっとぐらい痩せてもいいんじゃない?
なんてムシのいいことを考えますが、週1ぐらいしか身体を動かさないので、
これは当然といえば当然。
むしろ増えてないことを喜ぼう。(自分に言い聞かせる)

随分マシになったとはいえ、今でも翌日は筋肉痛です。
特に足。
普段いかに使ってないかわかりますねぇ(笑)
日常生活で、ふと思い出して足を意識して立ってみたりもします。
そうするとポジションは自然と1番(踵をつけて180度開いた状態)で立ってたりするんですよね。

そんなこんなで、この夏、発表会に出させて頂くことになりました。
我ながら無謀な挑戦だと思うのですが、1曲踊ります。
今週から発表会レッスンが始まりました。
たぶん3分の1ぐらいまで習ったと思うんですけど、結構、いやかなりキツイですわ。
とにかく振りが覚えられません。
一つ一つは知っている動きでも、複合技になるともうダメ。
TKOのネタ並みに「知ったかぶり」で皆さんに合わせております(苦笑)

さて、どうなることやら。(←他人事?)


包帯クラブ

2008-01-24 22:40:49 | 
天童荒太氏です。

心に傷を負った場所に包帯を巻き、写真を撮って依頼者へ送る。
それが「包帯クラブ」の活動だ。

主人公は高校生の少女。クラブのメンバーもまた高校生です。
心の傷というのは、人それぞれあります。
生きている限り、傷つき心に血が流れます。
どうやって傷を癒すのか。
目に見える傷と同じく、心の傷もまた包帯を巻くという発想に、
目から鱗が落ちる思いでした。
本当に辛い時って、他人に相談すらできないこともありますが、
顔の見えないネットの世界なら、思い切って言葉にすることができます。
誰かに苦しみを伝えるという行為は、「痛み」と自分自身が向き合う第一歩です。
それもまた癒しへと繋がるのだと思います。

「永遠の仔」や「家族狩り」と比べると、随分タッチが軽く読みやすくなっています。
当時高校生だった彼らがその時できたことが、包帯を巻くことだけだったとしても、
誰かの為に包帯を巻く行為は、誰かの痛みを知ることです。
時折挟まれるメンバーの近況報告から、
「包帯クラブ」を通じて培ったものが着実に生き続けているのだと思いました。

太陽の塔

2008-01-22 23:20:38 | 
森見登美彦氏です。

まるで女っ気のない学生生活を送る森本は京大の5回生だ。
3回生の時には水尾さんという恋人ができたのだが、彼女は森本を袖にしてしまう。

なんて言えばいいのでしょう。
愉快痛快な登場人物たち(もれなく変人)による、奇妙奇天烈な世界。
現代の生活には欠かせない携帯、コンビニという言葉が出てくるのですが、
どうにも違和感を覚えてしまうのは、森本をはじめとする登場人物の話し言葉が、
学生さんと呼ぶより、書生さんと呼びたくなってしまう雰囲気を醸し出しています。

日本ファンタジーノベル大賞受賞作ということですが、
ひらたく言ってしまえば、もてない男の妄想話なのです。
水尾さん研究という名のストーカー行為。
ストーキングする側の理論ってこんな感じなのでしょうか、
と思うとうんざりしました。なまじっか頭がいいだけにタチが悪い。

全体的にはいい意味でくだらなくて、面白いとは思います。
大賞を受賞するということは、かなり評価が高いということですよね。
その良さは、残念ながらわたしにはわかりませんでした。
とりあえず「京大生=変人」という申し訳ない図式が成り立ってしまいました。

ところでゴ○○○が嫌いな方は多いかと思います。
間違っても好きな方はいないと思われます。
発狂するほどお嫌いな方は、この作品を絶対読んではいけませんよ。
あるエピソードがあるのですが、かなり凹みました。
文章が巧いだけに、リアルに場面が浮かんでしまって、
時間がたってもまだ、背中がぞわぞわしてます。
軽くトラウマになりそうです…

神様がくれた指

2008-01-20 23:12:10 | 
佐藤多佳子氏です。

スリの現行犯で逮捕され刑期を終えて出所した辻牧夫だったが、
高校生のスリグループと出くわし、怪我を負う。そんな彼を介抱したのが、
家賃を滞納するほどギャンブル好きな占い師の「マルチェラ」こと昼間薫だった。
出会うはずもなかった二人が出会い、運命の環が回りはじめる。

「一瞬の風になれ」とは随分違う雰囲気ですね。
何しろ主人公の職業がスリ。手先が器用なので別の職業に就くことも可能なのに、
どの仕事もコツを掴んだ頃に辞めてしまう。
社会的にはハッキリいって、まるでダメな人間なのです。スリはもちろん犯罪です。
許せるわけはないのですが、昼間が感じたことが全てを物語っています。
「辻のスリは許せても、スリグループの少女のスリは許せない」
辻の技は昔気質の職人で、グループのリーダーは、いかにもな現代の若者の面もあり、
DNAのなせる技なのか、辻と同じような天性の素質を感じさせました。
それもどうだかと思ってしまいます。犯罪の素質って必要でしょうか?
神様はなぜそんな指を彼らに与えてしまったのでしょう。
すっきりしない気持ちのまま、読み進めていきました。
結末も釈然としません。
法律って、何て不条理なんでしょう!
ただ、法では裁かれなかった者も、それぞれ何かを失っていることを予感させます。
良く出来た話だとは思うのですよ。
でも手放しで喜べないので、ちょっと複雑かな。



海の底

2008-01-14 21:45:12 | 
有川浩氏です。

横須賀に巨大甲殻類が大量に襲来。
潜水艦「きりしお」に逃げ込んだ少年達は無事に生還できるのか。
猛威を振るう謎の生物に、機動隊と自衛隊がそれぞれ挑む。

B級UMA系パニック映画を思い出して頂くと、わかりやすい展開かもしれません。
もしくは「ウルトラマン」に出てくる怪獣だとか。
しかし、たった一人の正義のヒーローは登場しません。
現実の日本に存在しているもので戦うのです。
よって、ハヤタ隊員とかはいないわけです。普通に警察の人、自衛隊の人が出てきます。
変身してくれるヒーローがいないので、色々段取り踏まないといけません。
日本の自衛隊は、あくまでも「自衛」隊なのであって、
すぐさま攻撃ができないという、とてもややこしい仕組みになっています。
そして警察とは手を携えたりしません。
それぞれが連動して動くと、きっと迅速に収束へ向かうと思うのは、
きっと素人考えなのでしょう。そんなことにふと気づかされます。
実際、リアルタイプゴジラ(?)が出現などしたら、
現状の日本はどのように対応するのでしょう。ちょっと不安になりました。
何かにつけて紙面を踊る「危機管理」って、お偉方に欠けている言葉だもの。

「空の中」でもそうでしたが、有事に対して大人側と子供側の両面で描かれます。
潜水艦の中には海自の問題児2名と、子供達。
この圭介ってコが、わかりやすくイヤなヤツで(笑)
彼の家庭環境を知れば、あぁなるほどって納得はいくのですが。
そう。彼のママもかなり酷い。元凶ですね。
歪んだ大人が歪な子供を作ってしまう、わかりやすい例です。
登場場面は少なかったのですが、彼の父親も地味に酷いものでした。
騒ぎを起こした圭介にかけた言葉が、あまりに的外れすぎて。
でも当人は、難しい年頃の息子へ理解を示した感じを出したかったのでしょう。
二人の温度差が見えて、哀しい場面でした。
親だけが気づいていない事実。あまりにも酷い。

有川作品のお約束というか、
おカタイ内容に相反して恋愛要素もがっつりなんですけど、
やっぱりそこはあんまり興味がなくって、ほんとに申し訳なく思いつつ、
でも全体的には楽しく読了致しました。

サニーサイドエッグ

2008-01-11 22:02:36 | 
荻原浩氏です。

私立探偵の最上の主な仕事は、不本意ながらもペット探偵である。
和服美人からの依頼は今度こそ事件かと思いきや、
またもや行方不明になったロシアンブルーを探すことだったが。

なんだかんだ言いつつ、最上はペットを探すことにかけては長けていて、
ノウハウを伝授されているかのように、猫の習性も細かく描写されてます。
もし猫を飼っていて逃げてしまったら、どこをどうやって探していいか、
実用書としても読めるかもしれません(笑)
とにかく冒頭はひたすらペットを探してばかりなので、ペット探偵の奮闘記?という印象。
でも全てが伏線となってまして、無駄なエピソードはございません。
やっぱり話の進め方が巧いなぁ。

重要な役割を果たしているのが「ロシアンブルー」なのですが、
「金髪碧眼」の女性秘書の茜なんかも登場しまして、展開を掻き回してくれます。
いいキャラなので、もう少し最上とのやり取りが欲しかったところ。
葵があっさり引き下がりすぎという気もします。
いや、そもそも茜だけで充分だったように思います。
葵まで登場させてしまうなら、ページ数が足りないはず。
結果的に終盤がやけに駆け足になってしまってます。
その辺りが、ちょっと残念。

実は「ハードボイルドエッグ」というのが1作目でこれは続編なのですが、
またしても間違った順番で読んでしまっております。
特に問題はなかったように思うのですが…

ロッキン・ホース・バレリーナ

2008-01-10 21:28:04 | 
大槻ケンヂ氏です。

初めてのライヴツアーに向かう途中、
耕助たちのワゴンに謎のゴスロリ少女、町子も乗り込むことになってしまった。
ツアーは成功するのか。そして町子の目的は。

オーケンの作品はちょっとオカルトっぽくて、江戸川乱歩的な妖しさという印象。
でも今回は青春とロックがテーマなんですよ。
随分と爽やかですね~~~~。登場人物はクセモノが多いのですけども。
わたしが高校生の頃だったかな、オーケンの「セニョール・セニョリータ」というラジオを
聴いていたのですが、その当時のことを思い出しました。
なんか、懐かしくなります。あの頃ってバンドブームでしたし。

でも単なる青春爽やか小説でないのが、オーケンらしいというか何というか。
前半のおバカ路線と打って変わって、後半はそれぞれの心の闇にスポットが当てられ、
なかなかシリアスな展開です。
17~18才ってその時でないと、感じ取れないことってあると思います。
その年代故に傷を負ってしまうこともまた然り。
それにしても町子の過去はかなりヘヴィだ。

主人公は耕助なのですが、マネージャーの得山視点で読むとまた一興。





笑う警官

2008-01-02 22:29:58 | 
佐々木譲氏です。

札幌市内のアパートの一室で発見された女性の死体。
被害者は女性巡査。しかも警察がアジトとして借りていた部屋での死。
捜査から外された佐伯警部補は、
犯人がかつてコンビを組んだことのある津久井巡査部長が、容疑者だと知る。

もともとは「うたう警官」というタイトルだったのが、文庫化にあたり改題されたそうです。
「わたしはうたっていない」と書き残して自殺した警官の場面から、物語はスタートします。
「うたう」は勿論「歌う」ではありません。
内部告発、つまり「チクる」です。
警察という特殊な世界では、正しい行いは逆の意味をもちます。
即刻裏切り者のレッテルを貼られ、その世界で退職後も生きていけなくなるのです。

濡れ衣を着せられた上、射殺命令が下された津久井を救う為には、
捜査本部を欺きつつ、津久井を救い、真実を導き出さなくてはなりません。
しかも時間は非常に限られています。このスリリングな展開も見ものですが、
それと同時に「警察」の内部をぐっと抉ってきます。
最後の最後まで気を抜く事ができず、一気に駆け抜けました。
登場人物がちょっと多いので、頭の中を整理しながら読む事をお勧めします。
常に冷静に判断する司令塔の佐伯警部補もいいのですが、
紅一点の小島百合もいいアジ出してますよ。