思えば、この修士課程に入学するに当たって、色んな人達にお世話になった。
入学前に受講した短期間の『銅版画教室』に通い始めた頃、2階のロビーで、一見、乞食かと見間違えしそうな、髭ボウボウの小汚い身なりのオッサンに声を掛けられた。
その本人いわく、『美術解剖学』教室の助手を務めていると言う。
凄く親切な人だが、どう見ても教養が有りそうには見えない。
『美術解剖学』??ンン・・・。
兎に角、美術の美の字も知らない状態だったので、修得出来るものなら何でも習得してみたかった。好奇心から興味を示したら、一度工房に見に来いと言うので、早速、工房を覗きに行ってみた。
その工房も『銅版画教室』と同じで、生涯学習コースの為の教室だ。
その工房に習いに来い、来い、と言うが、『2つのコースを一度に習うのは、金銭的に難しい』と言ったら、『だったら、先生に掛け合ってあげる』と言う。
何でも、そのクラスの先生は凄く親切な人なので、もし受講したいのなら授業料をタダにしてもらえるように頼み込んであげる、と言うのだ。
で、その甘い言葉に乗って、のこのこと後に付いて、再度工房を訪問したが、その日はあいにくと別の先生がいた。
せっかく来たんだからと思って、その別の超フトッチョの中年の先生に聞いてみたら、『皆お金を払っているんだから、講座料を払うのは当たり前だ』とけんもほろろに言われてしまった。
そりゃあそうだ。言われるのはごもっとも。
ただ、講座料は、メキシコ人と外人とでは10倍違うシステムになっている。例え生涯学習コースとはいえ、UNAM(メキシコ国立自治大学)傘下の組織なので、指定の規則が有り、当時、確か、半年間(実際は4ヶ月くらい)の講座料が、外人は5万円くらいだったと思う。(メキシコ人は5千円)
払って払えない金額ではなかったが、『銅版画教室』の方で既に支払っていたので、当たって砕けろで、再チャレンジすることにし、別のその親切な先生のいる日に行ってみた。
その工房の先生は彫刻家で、でも、医学部を卒業したドクターだ。
凄い人格者に見えた、80歳くらいの小柄なおじいさん先生で、自分の初めての版画の作品とその下絵を見せたところ、凄く褒めてくれて、『何時でも授業に参加して良いから来い、授業料のことは心配するな』と言ってくれた。
ウァーィ!待ってました~!と小躍りした自分。
一時は、『余りにも図々し過ぎて無理だろう』と半分諦めかけていたので、その言葉を聞いて急に元気になってしまった。
その講座は、月曜日から金曜日まで、1日、確か4~5時間、生徒達でビッシリと埋まっている教室で、授業内容は、先生の説明による『人体解剖学』と、『粘土による人体模型』の制作があるが、他に週2~3回、希望者だけを対象とした『ヌード・デッサン』も行っていた。
この『人体解剖学』の先生の説明は、余りにも生徒が多いのに、先生の声が小さくて聞き取れず、自分は早々と退散してしまい、『粘土による人体模型』は、木の土台に針金で芯を作り、そこに粘土で人体の模型を、既存のモデルを見ながら制作して行くもので、見るよりも実際に作った方のが容易いと思ったが、あんまり面白くなくて途中で尻切れとんぼ状態になってしまった(でも、受講してた中年の婦人が当方の作品を見て、ホントかどうか、これほど旨い作品をここで見たことが無い、と絶賛されたけど)。
他方、ヌード・デッサンは、これは絶対に必要だと思ったので、一回の参加料15ペソ(150円)を支払って、出来るだけ参加するようにした。
しかし当初、若い子達が、いきなり目の前でスッポンポン状態になったのを描くことに戸惑ったものだが、慣れてしまうとなんでもないことだ。彼ら(男女)は皆、ダンスの専門家達で、アルバイトで小銭を稼ぎにきているのだ。
このデッサンはクロッキーで、5~10分くらいでポーズを変えて行くもので、1時間半、ビッチリと描いて行かなければならず、終わるとホント、視界も脳神経も疲れてクタクタになったものだ。
この後、この先生には、直ぐに別のことでお世話になるとは思っても見なかったが、修士課程受験には、美術関係者2名の推薦状が必要で、自分の場合は日本での美術経験が皆無だったので日本に知り合いはおらず、従って、この『人体解剖学』のドクターと『銅版画教室』の美人で親切で気さくな先生の2名に推薦状をお願いすることになり、2名からは、素晴らしい推薦状を用意して頂いた経緯がある。
入学前に受講した短期間の『銅版画教室』に通い始めた頃、2階のロビーで、一見、乞食かと見間違えしそうな、髭ボウボウの小汚い身なりのオッサンに声を掛けられた。
その本人いわく、『美術解剖学』教室の助手を務めていると言う。
凄く親切な人だが、どう見ても教養が有りそうには見えない。
『美術解剖学』??ンン・・・。
兎に角、美術の美の字も知らない状態だったので、修得出来るものなら何でも習得してみたかった。好奇心から興味を示したら、一度工房に見に来いと言うので、早速、工房を覗きに行ってみた。
その工房も『銅版画教室』と同じで、生涯学習コースの為の教室だ。
その工房に習いに来い、来い、と言うが、『2つのコースを一度に習うのは、金銭的に難しい』と言ったら、『だったら、先生に掛け合ってあげる』と言う。
何でも、そのクラスの先生は凄く親切な人なので、もし受講したいのなら授業料をタダにしてもらえるように頼み込んであげる、と言うのだ。
で、その甘い言葉に乗って、のこのこと後に付いて、再度工房を訪問したが、その日はあいにくと別の先生がいた。
せっかく来たんだからと思って、その別の超フトッチョの中年の先生に聞いてみたら、『皆お金を払っているんだから、講座料を払うのは当たり前だ』とけんもほろろに言われてしまった。
そりゃあそうだ。言われるのはごもっとも。
ただ、講座料は、メキシコ人と外人とでは10倍違うシステムになっている。例え生涯学習コースとはいえ、UNAM(メキシコ国立自治大学)傘下の組織なので、指定の規則が有り、当時、確か、半年間(実際は4ヶ月くらい)の講座料が、外人は5万円くらいだったと思う。(メキシコ人は5千円)
払って払えない金額ではなかったが、『銅版画教室』の方で既に支払っていたので、当たって砕けろで、再チャレンジすることにし、別のその親切な先生のいる日に行ってみた。
その工房の先生は彫刻家で、でも、医学部を卒業したドクターだ。
凄い人格者に見えた、80歳くらいの小柄なおじいさん先生で、自分の初めての版画の作品とその下絵を見せたところ、凄く褒めてくれて、『何時でも授業に参加して良いから来い、授業料のことは心配するな』と言ってくれた。
ウァーィ!待ってました~!と小躍りした自分。
一時は、『余りにも図々し過ぎて無理だろう』と半分諦めかけていたので、その言葉を聞いて急に元気になってしまった。
その講座は、月曜日から金曜日まで、1日、確か4~5時間、生徒達でビッシリと埋まっている教室で、授業内容は、先生の説明による『人体解剖学』と、『粘土による人体模型』の制作があるが、他に週2~3回、希望者だけを対象とした『ヌード・デッサン』も行っていた。
この『人体解剖学』の先生の説明は、余りにも生徒が多いのに、先生の声が小さくて聞き取れず、自分は早々と退散してしまい、『粘土による人体模型』は、木の土台に針金で芯を作り、そこに粘土で人体の模型を、既存のモデルを見ながら制作して行くもので、見るよりも実際に作った方のが容易いと思ったが、あんまり面白くなくて途中で尻切れとんぼ状態になってしまった(でも、受講してた中年の婦人が当方の作品を見て、ホントかどうか、これほど旨い作品をここで見たことが無い、と絶賛されたけど)。
他方、ヌード・デッサンは、これは絶対に必要だと思ったので、一回の参加料15ペソ(150円)を支払って、出来るだけ参加するようにした。
しかし当初、若い子達が、いきなり目の前でスッポンポン状態になったのを描くことに戸惑ったものだが、慣れてしまうとなんでもないことだ。彼ら(男女)は皆、ダンスの専門家達で、アルバイトで小銭を稼ぎにきているのだ。
このデッサンはクロッキーで、5~10分くらいでポーズを変えて行くもので、1時間半、ビッチリと描いて行かなければならず、終わるとホント、視界も脳神経も疲れてクタクタになったものだ。
この後、この先生には、直ぐに別のことでお世話になるとは思っても見なかったが、修士課程受験には、美術関係者2名の推薦状が必要で、自分の場合は日本での美術経験が皆無だったので日本に知り合いはおらず、従って、この『人体解剖学』のドクターと『銅版画教室』の美人で親切で気さくな先生の2名に推薦状をお願いすることになり、2名からは、素晴らしい推薦状を用意して頂いた経緯がある。