すべてのものは空である。ナーガールジュナによって大成され、中観派によって継承された空の思想。それは唯識論のように認識のみを実在とすることなく、認識含めるすべてのものを、超越的存在さえも、空として捉える思想である。著者はインド哲学が専門だが、本書はチベット・中国・日本で空の思想がどのように継承されたかについても述べられている。インド・チベット・日本の大乗仏教の格好の入門書ともなっている。特に代表的な大乗仏教国であるチベットの仏教に関してはわからないことが多かったので(映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』を見たときに気にはなっていたが)、勉強になった。
本書の末尾では、著者によるキリスト教批判が展開されている。現代には、長らくキリスト教文明であった国々でも、仏教への関心が深まりを見せた。著者はこのことを興味深いと感じ、仏教的な智慧が閉塞する現代文明への救いとして機能し得るのではないかと考察している。
本書の末尾では、著者によるキリスト教批判が展開されている。現代には、長らくキリスト教文明であった国々でも、仏教への関心が深まりを見せた。著者はこのことを興味深いと感じ、仏教的な智慧が閉塞する現代文明への救いとして機能し得るのではないかと考察している。