Organic Life Circle

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植物油

2006年02月19日 | 食 品


植物油は必須脂肪酸やビタミンEなどの大切な供給源。 ひと口に油といっても含まれる微量成分がそれぞれ異なるので、上手に使い分けて一味上の美味しさを目指したい。


<オリーブ油> olive oil

淡緑色で独特の青い香りがある。脂肪成分中75%が酸化しにくいオレイン酸 oleic acid (一価不飽和脂肪酸*)。ヨーロッパでは何千年も人類が使い続けてきた歴史があり、非常に性質が安定していて熱にも強い。

最上質のものは一番搾り extra virgin。有害な薬剤抽出も化学精製もせず、30~40度の低温で圧搾されただけのオーガニック製品が理想的。ラベルに pure とあっても、香りつけにごく少量のバージンオイルを混ぜただけの薬剤抽出品もあるので注意が必要。

製品例
ローマニコ低温一番搾り有機オリーブ油(スペイン製)
Romanico organic cold-pressed extra virgin olive oil


<ごま油> sesame oil

東洋の油として長い歴史を誇る。脂肪成分中39%がオレイン酸で、45%が酸化しやすいリノール酸 linoleic acid (多価不飽和脂肪酸*)だが、特有の抗酸化物質セサモル sesamol やビタミンEを多く含んでいるので、非常に安定した性質。熱にも強い。

原料のゴマを煎らずに、昔ながらの低温圧搾法で作られた良質の油は、淡褐色で、ほんのりとしたゴマの香りが特徴。ごま油だけで天ぷらをするとからっと仕上がり、冷めても油戻りしない。

揚げ油の温度を適温(160~180度)に保ち、使ったあとは漉して油缶かガラス瓶に入れ、冷暗所に密閉保管すること。残り油は炒めものなどに使い切るといい。

一般の製品は、高温で搾ってから薬剤抽出されたものなので、煎ったゴマの香りが強すぎて天ぷらには向かない。

製品例
ラプンツェル未精製低温搾り有機ごま油(フランス製)
Rapunzel certified organic unrefined cold pressed sesame oil


<キャノーラ油> canola oil

石鹸原料や潤滑油に用いられてきた菜種油 rape seed oil の有害成分を、品種改良技術で取り除き食用にしたもの。開発国のカナダの国名をもじって名付けられたので、キャノーラという植物はない。非常に歴史の浅い油で、遺伝子組み換え品種も広く栽培されているのでオーガニック製品を選びたい。

脂肪成分中61%が酸化しにくいオレイン酸で、健康にいいα-リノレン酸 alpha-linolenic acid (必須脂肪酸オメガ3 omega-3)も約10%含まれているが、口あたりよく黄金色に精製された一般の製品には残らない。未精製低温搾りのものは、薄い黄緑色で独特の強い香味が特徴。

製品例
ラプンツェル未精製低温搾り有機カノーラ油(フランス製)
Rapunzel certified organic unrefined cold pressed canola oil


<フラックス油> flax seed oil

動物性脂肪の一種コレステロールは、肝臓から血液・脳・骨髄・胆のうに送られ、臓器膜や血管壁、赤血球の保護に必要不可欠なもの。

だが、過剰になると血管に沈着し、動脈硬化や心臓病の原因に。そのコレストロールを除去して肝臓に送り返すα-リノレン酸(必須脂肪酸オメガ3)が、フラックス油には60%含まれる。

非常に酸化しやすいので加熱調理には不向き。健康食品として、毎日少量をドレッシングやおひたしのタレに加えて摂りたい。変質しやすいので、小瓶で購入し、冷蔵庫に保管すること。

ただし、α-リノレン酸は、海藻や緑野菜、根菜、鮭などの冷海域の魚にも多く含まれるので、バランスのよい食事を心がけていれば特に必要ないとも言われている。

製品例
オメガ・ニュートリション未精製低温搾り有機フラックス油
Omega Nutrition certified organic unrefined cold pressed flax oil


<ひまわり油> sunflower oil
<綿実油> cotton seed oil

脂肪成分中に酸化しやすいリノール酸が最も多い。加熱調理には不向き。ひと頃リノール酸が体にいいともてはやされたが、酸化した油の過剰摂取は発ガンの原因にもなる。酸化しにくいオレイン酸を化学的に添加したものも製品化されているが、食用の歴史が浅いので長期摂取は不安。

また、大量の除草剤を散布して落葉処理してから収穫を行うので、環境にも悪く、人体にも少なからず影響がある。農薬や化学肥料は食品の油脂成分に残留することが多いので、植物油はオーガニックを選ぶこと。


<紅花油> safflower oil

リノール酸が人気だった頃は高級油として市場に出回っていたが、現在販売されているほとんどの製品は、品種改良されたオレイン酸高含有種子の紅花油。オレイン酸が76%も含まれ、酸化しにくくなったが、オーガニック製品の入手が難しい。乳化しやすいので、ドレッシングやマリネに向いている。


<ココナッツ油> coconut oil

脂肪成分中、91%が飽和脂肪酸 saturated fat。酸化に強く変質しにくいので、ヤシ油 palm oil 同様、加工食品によく使われ、炒めものなどの高温加熱調理にも最適。ただし、飽和脂肪酸は血中コレステロールを蓄積させる性質があるので、多用は禁物。コレステロール値の低い、長く菜食をしている人向き。


<サラダ油(大豆+菜種)> salad oil
<コーン油> corn oil

大量に安く生産するため、化学溶剤ヘキサンで原料から油を抽出したもの。不純物を取り除くため、シュウ酸や苛性ソーダなどで化学精製された油は、日もちが悪く熱にも弱いため、さらに毒性の強い酸化防止剤が添加されている。

溶剤を使わず搾油 expeller-pressed oil と書かれた製品も見かけるが、これも搾油後、長期間店頭で変質しないよう化学精製し高熱処理をしたもの。栄養価が低いだけでなく、薬剤の残留が心配される。市販のマヨネーズやドレッシングの原料としても使われている。

近年では遺伝子組み換えの大豆やキャノーラ、コーン、綿実も含まれているので要注意。


<マーガリン> margarine
<植物性ショートニング> shortening

植物油をバターに似せて水素添加で固め、着色料、香料、乳化剤を加えたもの。カチカチにならないよう途中で凝固反応を止めると、免疫抵抗力を損ない発ガンを促がす有害物質トランス型脂肪酸が発生。アレルギーとの関連性も心配されている。

原材料に遺伝子組み換えの大豆やキャノーラ、コーン、綿実を使った製品も多く、現在の時点では表示義務がないので、できるだけ使用を避けたい。菓子や加工食品に使われる植物性ショートニングも同様なので、内容表示をよく確かめること。


★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★


「油のとりすぎはよくない」といわれるが、これは動植物性脂肪だけに限らず、植物油にもいえること。油の酸化で発生する過酸化脂質は、血中のコレステロールと結びつき血管をつまらせるため、動脈硬化・心臓病の原因に。

また、新鮮な油でも、呼吸で体に取り込まれる酸素によって酸化され、不安定な状態の活性酸素 oxygen free radical を作り出し、免疫抵抗力を損ない、細胞を傷つけて老化を早めることになる。

油の体内酸化は、健康で緑黄色野菜や玄米を常食していれば、消化酵素やビタミンの働きでかなり防げるが、それでも摂取量が多くなると肝臓の負担になる。

良質な油ほど、原料から搾り出せる量が少ないので、値段も高い。昔の人は、油はぜいたく品、天ぷらは特別なごちそう、と大切にしていた。安心できる昔ながらの油を大事に食べる、それが健康のためにもかしこい楽しみ方のようだ。

(石川まりこ)


<参考>

油 このおいしくて不安なもの(奥山治美/農文協)

食べるな、危険!(日本子孫基金/講談社)


オーガニック・ライフ・サークル会報
1998年7月号(No.10)掲載

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