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英語の酢 vinegar の語源はフランス語の vin(ワイン)と aigre(酸っぱい)で、ワインが酢酸菌で発酵したものという意味。日本には4世紀頃に、酒の醸造法とともに中国から伝えられたとされる。主成分は酢酸、有機酸、アルコール、アミノ酸、糖類などで、これらが互いに作用して芳醇な味と香りを作り上げている。酢は種類が多く、その使用原料により細かく分類される。
<粕 酢>
酒粕を桶に密閉して1年貯蔵した後、水を加えてアルコールを作り、これに種酢を加えて酢酸発酵させる。江戸時代に酒造の行程で捨てていた酒粕を廃物利用したのが始まり。一般流通品に多い。アミノ酸が少なくうま味や風味に欠けるため、化学調味料を加えたり、穀物酢などと混合されることが多い。
<酒精酢>
イモ類のデンプン質、廃蜜糖、パルプ廃液などを原料に精製した純度95%の工業用アルコールを酢酸発酵させたもの。無色透明ものはホワイトビネガーと呼ばれ、マヨネーズなどの加工食品に用いられる。安価で短期間に大量生産できるが、アミノ酸などのうま味成分や味、香りはない。
<米酢、玄米酢>
米と麹が原料のアルコールを酢酸発酵させ、低温で熟成させたもの。玄米酢も同じ作り方だが、熟成にさらに時間がかかる。製品1リットルあたりの原料に、米が40g以上含まれていれば、穀類、酒粕、アルコールなどを原料に混合しても米酢や混合醸造酢と表示されるので区別しにくい。米だけで作ったものは純米酢、純醸造酢と呼ばれる。
<黒 酢>
原料や醸造法は基本的に米酢と同じだが、米・麹・水をかめに入れて密封し、屋外で1~3年間、自然発酵させたもの。熟成期間が長いため、成分が変化して褐色になる。アミノ酸や有機酸が豊富に含まれ、まろやかでこくがある。黒酢に見せかけるためにカラメルを入れた製品も出回っているので注意したい。
<穀物酢>
米、トウモロコシ、小麦、麦芽などの穀物を単品または混合で原料にする。特に麦芽酢(モルト酢)は、ビール醸造が盛んなドイツ、ウィスキー醸造が盛んなイギリスなど、ヨーロッパ各地で広く作られている。フィッシュ& チップス には、この濃厚な味と香りが欠かせない。ウスターソースの原料でもある。
<ワイン酢>
赤・白のワインから作る。赤ワイン酢は、シチューなどの肉の煮込みやマスタードを利かせたドレッシングに、白ワイン酢は、ハーブやフルーツを漬けて香酢を作る時や、肉、魚介類のマリネに使う。北イタリアが本場の長熟ワイン酢は、特にバルサミコ酢 balsamic vinegar と呼ばれ、暗褐色で独特の芳香とまろやかな酸味、こくのある甘みが特徴。12年以上熟成させた素晴らしく芳醇な逸品もある。
<リンゴ酢>
リンゴ酒 apple cider から作られる爽やかな香りの酢。コップ1杯の水か湯にリンゴ酢小さじ1と蜂蜜小さじ1を溶いた飲み物は、疲労を回復し、イライラを沈める働きがある。常飲すれば高血圧や動脈硬化の予防、つわり、慢性頭痛、咳止めにも効果的。
<梅 酢>
梅を塩漬けにしたときに上がる酸味の強い透明の液。赤じそを漬け込んで色が赤くなったものは赤梅酢。殺菌作用が強く、水で薄めた梅酢でうがいをすると風邪の予防になる。梅に含まれる有機酸などの成分が胃を正常な状態を保つので、梅酢で作った酢の物を食べると二日酔いも防げる。
酢の効用は多く、その酸味により胃液の分泌が促され、食欲が増し、消化が促進される。強い殺菌作用があるため魚介類をマリネや酢じめにすると食中毒予防にもなる。醤油の代わりに酢醤油を用いて減塩食をおいしく楽しみたい。ちなみにポン酢はダイダイやユズ、スダチなど柑橘類の果汁に、醤油を加えたもの。市販品もあるが、レモン汁と醤油を1:1で合わせ、メープルシロップを少量加えると簡単においしくできる。
(石川まりこ)
オーガニック・ライフ・サークル会報
2003年12・2004年1月号(No.55)掲載