Organic Life Circle

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「うま味」と「だし」

2007年11月17日 | 食 品

日本では、かなり昔から鰹節と昆布を煮出したすまし汁(出し)を、料理の基本の味としてきました。北海道でとれる昆布は、江戸時代より前に、既に船で沖縄まで運ばれていました。日本海を通じた北と南の交易は、現在想像する以上に盛んでした。


<グルタミン酸>

1902年、池田菊苗博士は、昆布を塩酸で溶かしたものを苛性ソーダで中和して、汁を煮詰め、結晶状の物質を分離しました。これが昆布の「うま味」グルタミン酸ソーダで、池田博士は会社を起こし、「味の素」という名前で売り出しました。

グルタミン酸は、アミノ酸の一種で、最初、小麦のグルテンから分離されたので、その名前がつけられました。小麦や大豆、昆布などの植物性蛋白質に多く含まれています。

一時、グルタミン酸をたくさんとると、頭が良くなるという俗説が流行したことがありますが、脳の中に最も多いアミノ酸がグルタミン酸であることと、頭の働きが良くなることとは、全く関係ありません。

反対に、グルタミン酸を一時に取り過ぎると、頭痛や吐き気、動悸昂進などを起こすことがあるようですので注意が必要です。

現在売られている mono sodium glutamate(MSG)は、砂糖キビから砂糖をとったカス(廃蜜糖)をもとに、糖を食べてグルタミン酸を排出する微生物を培養し、グルタミン酸を得て、それを苛性ソーダで中和して作られています。


<イノシン酸>

一方、鰹節の「うま味」を研究した小玉博士は、1913年にそれがイノシン酸であることを発表しました。魚などの肉に多く含まれるイノシン酸自体は、ほのかな「うま味」しかありませんが、グルタミン酸といっしょになると「うま味」が強くなります。


<グアニル酸>

もう一つ、シイタケの「うま味」成分であるグアニル酸も、グルタミン酸と一緒になるとうま味が強くなります。シイタケなどのキノコ類に多く含まれ、日本では「精進出し」といって、昔から昆布と椎茸の出し汁を使って来ました。

昆布と鰹節、あるいは昆布と椎茸で出し汁をとることを基本通りに行っていれば、化学調味料などの必要性は全くないどころか、それ以上の味が作れることがわかると思います。


<昆布の出し>

昆布についている白い粉は、グルタミン酸の結晶ですので落とさないようにします。昆布の種類もたくさんありますが、黒味が多く肉厚で、よく乾燥したものを選びましょう。水に2、3時間以上つけておくと「出し」がでるので、それを味わってみて、よければ上澄みをとって、煮立たせないようにして使います。


<鰹節の出し>

鰹節は、日本人の発明した世界で最も堅い食品です。日本の多湿な気候を利用してカビを生やし、そのカビで魚肉の水分を取り出して乾燥させます。鰹節の芯が、あめ色に光っているものを良質とします。

いろいろ種類はありますが、削り節はどんな物が使われているのか分からないので、削ってない固形の鰹節と鰹節削り器を用意しましょう。削って時間がたつと、酸化して味が悪くなりますので、使うたびに少量ずつ削って使います。

使い方は、水を中火にかけ、煮立つ直前に鰹節を入れ、静かに泡の立つまで待ち、泡がたち始めたら10秒ぐらいで火を止めます。ぐらぐら煮立てると、香りが飛びエグ味が出てきます。


<煮干しの出し>

煮干しにもイノシン酸が多量に含まれていますが、独特の生臭さや苦みがあるので好みがあります。煮干しの生臭さや苦みを減らすには頭をとり、次に腹にある黒いわたを取り、そして身を二つに裂いて使います。

出しのとり方は、さっと水洗いして水に2、3時間つけておき、これを弱火にかけ、人肌ぐらいの温度になったら火からおろして(好みにより上澄みだけ)使います。


<椎茸の出し>

椎茸の出しは、乾燥椎茸を使います。椎茸には大別して、傘が八分通り開いたところで採集した「香信」と、半分開いたときに採集した「冬茄」の2種類があります。

冬に原木から出る傘の表面にひびが入っている「冬茄」が高級とされ、なかでも、白い割れ目が縦横に走っているものを「花ドンコ」と呼び、よく出しがでる最高級品とされます。

使い方は椎茸のごみをたたいて落とし、さっと水で洗って冷水に柔らかくなるまでつけておき(30分~2時間)、椎茸を取り出して残りの液を使います。たくさん取ったときは冷蔵庫に保存してください。

(海波農園 菅波 任)


オーガニック・ライフ・サークル会報
1999年5月号(No.19)掲載

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