新音楽療法邪説

音楽療法は、音楽の持つ様々な特性を必要とされる人々の課題解決のために応用される音楽臨床技術の総称として用いられています。

音楽の基礎ってそんなに退屈かなぁ

2019年06月08日 12時24分03秒 | 音楽の知識(musicology)

写真は大野亀に群生するトビシマカンゾウ(2018年6月撮影)

 音楽は理屈抜きで楽しめるわけだし楽しむのに理論は必要ない、というのは大きく頷けるところ。 でも、音楽療法をやろうとするのだから、音楽はそのツール。音楽は普通目に見えないから、形とか、癖とか、扱い方を知っておくと、実践にはすごく役立つと思うんですよね。  

ということで……


 楽典や和声学などの理論は、音楽学的には実践補助理論と呼ばれて体系づけられています。他に、音楽美学や音楽人類学、音楽史などがあり、音楽療法の実践者にとっても必要な基礎知識となってきます。
 では、実際に指導したり音楽の構造を分析したりする時に、よく音楽療法士が使う実践理論を紹介してみたいと思います。
 楽典、和声学、対位法、作曲法、形式学などは、音楽を分析する時にも実際に音楽を使って対象と臨床活動を行う上でも、知っておくと便利なものばかりです。実践者の音楽への習熟度によってその理解は異なると思いますが、「楽譜の読み方」とか、ズバリ「コードの本」などというタイトルで書店の本棚に並んでいたりします。音楽療法のブームのおかげなのか、専門店でなくとも音楽書はずいぶんと入手しやすくなってきましたね。あおぞら音楽社刊の菅田文子さんの著書は、クリシェを活用した楽譜もあってとても実践的に和声を学ぶことができる1冊だと思います。対象によって全部活かせないこともありますが、たとえば「与作」のヘイヘイホーをベルでコダマの様に対象者から返してもらったり、発展的なヒントをもらっています。


 さて、音楽理論は学者・研究者等の考え方、著作の名称などにより、細分化したものや近代和声の様に時代の変化によって生まれたものもあります。たとえば、作曲法の範疇には編曲法、管弦楽法、旋律学、さらに管弦楽法の範疇には楽器のコンビネーションについて述べられた楽器法などがあります。また、PCミュージックが台頭してきた今では、音響効果を作り出すための理論なども出現してきました。以上は西洋音楽、とりわけ芸術音楽を土台にしたものですが、民族独自の音楽理論を持って存在する民族音楽もたくさんあります。
 楽典は、五線に記譜された音符の呼び方や音の長さ(歴時といいます)、ある音とある音との距離感(音程といいます)についての取り決めをまとめたものです。和声学は、複数の音程を持つ音の鳴り響きの呼び方、調性との関係、調同士の関係性などについてまとめられています。形式学は、音楽の寸法と、文章でいえば起承転結をどのように構成するかで、連歌や連句等の様に多彩な形式の発展があります。


 文字でこれらのことをとらえようとすると、とても退屈なのですが、その向こう側には必ず人の存在がありました。楽典は自分以外の人に演奏以外の手段で音楽を伝えようとするための手段として、一つ一つ記号を作り出してそれに名前を付け、四分音符と言葉で言っただけでそれが四分音符だとわかるようにしたのです。また、和声学ははじめは数学的な考えが事の起こりでしたが、複数の音が重なり合い、それが時間とともに変化していくことで人がどのように感情が推移していくのかを記録したものです。和声学は、人間心理の変化と和声進行の相関をまとめたものだと思います。
 こんなことを考えてしまうと、音楽理論を学ぶこと自体が楽しくなってきませんか?
(旧ブログ「音楽療法邪説」より転載)

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