基準地価…被災地は二極化進む
国土交通省が19日発表した2012年の基準地価(7月1日時点)は、大都市圏を中心に東日本大震災の影響が薄れ、地価の下げ止まり傾向が強まった。だが、地方は回復の動きが鈍く、震災の被災地では地価の二極化も進みつつある。(西原和紀、笹子美奈子)
ツリーで上昇
「バルコニーからスカイツリーが見えます」「スカイツリーで盛り上がる街」――。
5月に開業した東京スカイツリー(東京都墨田区)周辺では、物件を紹介する不動産業者の店頭チラシに、こんな売り文句が目に付く。
ツリーに近い調査地点は前年と比べ9・8%も値上がりし、商業地で全国2位の上昇率を記録した。
不動産調査会社の東京カンテイによると、ツリーから2キロ圏内では、分譲マンションの供給が07年4月~11年3月の4年間で9件だったが、11年4月以降は分譲予定も含めて54件に急増した。「ツリー効果でファミリー層向けに大手不動産会社が相次いで参入している」(同社)という。
ツリー以外でも、東京、大阪、名古屋の3大都市圏を中心に商業施設の開業や再開発効果が地価を押し上げるケースが目立つ。
千葉県木更津市は、市全体で住宅地が0・4%上昇(前年は0・3%下落)、商業地は0・1%上昇(同0・5%下落)に転じた。東京や神奈川方面からも買い物客が訪れる商業施設「三井アウトレットパーク木更津」が4月に開業した効果が大きい。
トヨタ自動車を中心に地元経済が回復基調にある愛知県では、住宅地が全都道府県で唯一、前年比横ばいになった。
明暗
被災地では、地域による値動きの違いがはっきりしてきた。
磐梯山の南麓にある福島県猪苗代町の別荘地には、東京電力福島第一原子力発電所事故の風評被害が影を落とす。
別荘の所有者が処分しようとしても買い手がつかない状況で、住宅地で県内最大の下落率(前年比8・3%)となった。リゾート物件などを手がけるアセラの東條貴生取締役は「震災から1年半たっても状況は良くならず、回復の兆しもない」と嘆く。
商業地で福島県内最大の下落率(9・2%)だったのが、磐梯山の北側に位置する北塩原村の調査地点だ。観光名所「五色沼」では震災後、中国人の団体客がほとんど姿を消した。裏磐梯観光協会の渡部哲夫事務局長は「修学旅行などは回復に何年かかるか全く予想がつかない」と語る。
一方、仙台市では、津波被害を受けた地域に近い高台の土地が高額で取引され、中古マンションの販売も好調という。
今後の国内の地価について「13年の基準地価では大都市圏が平均で上昇に転じる可能性がある」(みずほ証券の石沢卓志氏)との見方もある。しかし、欧州危機や円高など日本経済への懸念材料が残り、地価の回復傾向が続くかどうかは不透明だ。
(2012年9月20日
読売新聞)
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