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7月の課題本『いいなづけ』(A.マンゾーニ)例会レポート。

2020-07-30 13:14:02 | ・例会レポ

7月の課題本は『いいなづけ』A.マンゾーニ 著 平川祐弘 訳 河出文庫上中下3巻です。

【例会レポート】
『いいなづけ』は河出文庫の新刊紹介のサイトで知りました。
ダンテの神曲と並ぶイタリア人の必読書だとありましたが、作者もタイトルも聞いたことがなかったので推薦しました。

いいなづけ、という言葉自体がもはや死語に近いので、さぞかし古臭い内容かと心配して第一章の風景描写から始まったあたりは挫折への不吉な予感しかしませんでした。

しかし歌舞伎の通し狂言だと思えばいいと気づきました。
最初はなんだかわちゃわちゃして、そのうちに伏線があってだんだん引き込まれていくのはまさしく歌舞伎狂言。
緩急をつけてまたは時々読み流して無事読了しました。
  
いいなづけのレンツォとルチーアの物語よりも、むしろイタリアの風景とか風俗とか、パン騒動だの塗屋だの、の描写の方が面白かった(当時のミラーノ公国周辺の情勢は『吉川弘文館 世界史年表・地図』が実に役に立ちました)。

レンツォやルチーアや、聖人としか言えないクリストフォーロ神父やボルトロメーオ枢機卿よりも、脇役悪役のアッポンディーオやペルペートゥア、ジェルトルーデの方に生き生きと血が通っているように思えて、彼らの登場する場面だとページが進みました。

自分も含めて人間の愚かさを痛感するこの頃ですが、17世紀ミラーノの人々に出会えたことは自粛生活の小さな成果かなと思います。

7月例会はオンラインで行われ、13人の参加でした。
完読した人で「つまらない、面白くない」という感想がなかったことが推薦者としては望外のうれしさでした。

それぞれの感想として、
☆ レンツォとルチーアが魅力的でなく、ほかの人の方が現代にも通じる面白さがある。
☆ 群像劇である。
☆ 塗屋とは面白い存在。
☆ パン騒動や外国人排斥など、トランプ、安倍を連想した。
☆ 善悪の役どころの掻き分けが上手い。
☆ 挿絵が効果的に使われていて、風俗習慣紹介の紀行文のようだ。
☆ 当時の風俗を楽しんだが、手元に資料があったらよかったなー。
☆ 司祭、神父の違いが判らない。
☆ オペラ『リゴレット』を思い出した。当時はこんなことは当たり前だったのか?
☆ 神との契約の重さが理解しにくい。日本の願掛けや〇〇断ちと同じなのか?
☆ 小悪人の登場で面白くなって一気読み。
☆ ジェルトルーデが印象に残った。←これは複数の人に共通。
☆ 神の存在の重要性を感じた。
☆ 19世紀の人が200年前を書くのは今の作家が江戸時代を書くようなものか。
☆ 丸谷才一の解説が良かった。
☆ キリスト教の倫理道徳観がわかりづらい。
☆ ルチーアがすぐ気絶したり泣いたりぐずぐずしているのに母親になったら堂々と自分の意見を言うのは面白い。
☆ 神と俗人との距離の取り方が面白く、スペイン戯曲とも共通するとことがある。
☆ 訳が上手いことに感動した。
☆ 市井の庶民を描いているのが良い。
☆ 当時でも城壁のすぐ外に隔離病棟があったのはすごい。
☆ 読んでいないが、ダンテの『新曲』を昔読んだ。神との契約が絶対的というのは現代の欧米でも通用するところがある。
☆村の若者が結婚に至る迄の間に暴君領主や改心する悪党の大将、キリスト教精神の素晴しさ、神父の役割の大きさなど世界が大きく広がり、読みごたえがあった。ラストは出来すぎかなと思ったが、大作には違いない。
☆(読まない人)みんな、読むの大変だったねー!

講師からは
参加者はみなそれぞれディテールを読み込んで感想を語っている。
作者マンゾーニはイタリア統一の恩人とされており、「歴史が選んだ作家である」ということができるのだ。
この作品は始まりと結びが呼応する構成になっており、風土、風景、血縁が冒頭から大変よく描けている。主人公の立脚点がすぐにわかり、追い詰められていく様子は面白い。恋愛を横軸に歴史を縦軸にきちんと描き分けているのがこの作品の素晴らしさと言える。

という渾身のお話しだったのですが、ここで私のパソコンがフリーズ!
一番おいしいところはお伝えできてないかもしれずごめんなさい。


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