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7月の課題本 ロアルド・ダール『あなたに似た人』

2012-08-04 12:47:38 | ・例会レポ

ロアルド・ダール/著 田村隆一/訳 
『あなたに似た人』

ハヤカワミステリ文庫 (1976年)
ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス (1957年)

短篇の一つ一つにちりばめられた恐怖、幻想、怪奇、ユーモア、機智……数多くの奇妙な味の短篇を発表している鬼才ダールが、賭博に打ちこむ人間たちの心の恐ろしさと、人間の想像力の奇怪さをテーマに描いた珠玉の掌篇十五篇を収めた代表的短篇集。一九五三年度アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作!

<ハヤカワミステリ>


=例会レポート=

おもしろ本棚会員の世代間ギャップを痛感した7月の例会でした。

課題本は、ロアルド・ダールの短編集『あなたに似た人』。参加者は男性7人、女性17人の新旧取り混ぜた24人。最終的には二部屋をぶち抜いた会場がいっぱいになる久しぶりの盛会でした。

およそ本好き、読書家を自認する会員の皆さんなので、読んだことはないにしろダールの名前、少なくとも短編集の名前くらいは当然知っているだろうと思っていました。ところが、いざ意見を聞いてみると、ある世代を境に、読んだことがある、影響を受けた、思い出がある、といったグループと、知らなかった(知っていたけど児童文学作家として)、初めて読んだ、というグループに大きく分かれてしまい、推薦者はまずびっくり。

先のグループの会員からは、極私的体験とからめた以下のような本書との関わりが聞けました。心温まるエピソード、懐かしい思い出に、あらためて、本の持つ力、読書の影響力を思い知った次第です。

・40~50年も前、結婚相手の女性に、自分を知ってもらうためにはこの本を読んで欲しい、と渡した。
・働き盛りの20代の頃、連日の深夜帰宅の際、テレビで見た「ロアルド・ダール劇場」を思い出した。
・高校生の頃に授業で読まされた。今になって読み返すと分かる話しが多い。
・阿刀田高の作品から知って読んだ。久しぶりに読み返し、人間への洞察、人間のいやらしさを書く人だと思った。

その他には、

・読者を物語りに引き込むのがうまい。読者の妄想をかきたててくれる。
・ブラックな話しで、人の心の影の部分、狂気が分かりやすくストレートに描かれていた。
・読んでいるうちに体全体に毒がまわっていく感じ。

ところが、ダール初体験という比較的若い世代からは、

・訳文が古い。
・かなり古い感じ。
・オチがどれも古くさく、おしつけがましい。

といった感想が多く聞かれました。これに対し、同世代の会員から、

・描写がえぐい。それが作者の魅力なのだろうか。

という感想がありました。推薦者は「えぐい」という言葉がどういう意味で、どういう評価を表す言葉だか知らないので、古くさいという意見との関係がよくわかりませんが、こっれて真逆の反応なのでしょうか。

テーマにしている賭け事やギャンブルに対しても拒否反応を示す会員が多かったのも、まじめな会員が多いことの証左なのでしょうか。

・やらないだろう賭け事、いやだなあと思う賭け事の話。
・軽い話しかと思って読み始めたらブラックな話し、不気味な話しだった。賭け事をテーマにした話しで読むのには時間がかかった。

講師の菊池先生は、

・自分たちの世代はダールやサキ、ジョン・コリアらの短編作家から影響を受けてきた。読み巧者にとっての最終的着地点とも言えるだろう。ところが、今回の感想を聞いてみると、初めてダールを読んだ世代との間で評価がかなり変わってきていることを実感した。
・作家とは「妄想の生きもの」であり、妄想をいかに言葉に変えるかが力の見せ所。その点、短編小説は書きやすいジャンル。
・アンソロジストがまとめやすいテーマは、怪奇と幻想。欧米にはいいものが多い。本書の「あとがき」で都筑道夫が推薦している5作品は、活字から想像力をふくらませる作品なので読んで欲しい。

最後に、菊池先生からの提案で実施した本書収録作品のランキングは以下のとおり(会員からの感想や推薦の弁は省略させていただきました)。

第一位「南から来た男」11票。
第二位「おとなしい凶器」「皮膚」7票(同票)。
第四位「お願い」5票。
以下、「味」「海の中へ」「告別」が4票。「偉大なる自動文章製造機」が3票。「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」「首」が2票。「毒」「音響捕獲機」「クロウドの犬」が1票。

大長編を時間をかけて読みきったときの達成感、感動は素晴らしいものがあります。それこそが読書の醍醐味と言い切る人も多いでしょう。でも、「寸鉄、人を刺す」のたとえの如く、切れ味鋭い短編もまた読む人に感動を与えてくれるものなのでしょう。名アンソロジストが編んだ名短編集をベッドの脇に置き、暑い夏の夜、眠れぬ夜を過ごすのも一興かと。


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