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昔の望遠鏡で見ています

一人比較観望会

 昭和50年12月から昭和51年8月にかけて行われたG社による比較観望会では、その当時に出回っていた機種と、新しく開発された自社のアポ鏡筒の見比べが行われた。その時に寄せられた感想は、「コリメーター比較検査 賛辞集」と「絶賛集」の小冊子にまとめられている。そのコメントを見ると、多くの人がアポ鏡筒に収差が少ないことやディフラクションリングが美しく見えると言い、一方、他社の鏡筒には光軸ずれや思った以上の収差があるという感想を述べている。

 その会には参加できなかったが、小冊子を入手し、その見え方を想像したものだ。その後30年を経て、当時の比較対象であったであろうT社の8cmセミアポ鏡筒、40年後に、比較した側のG社の3枚玉標準アポ鏡筒をそれぞれ入手し、そして今回、約半世紀を経て両鏡筒の比較観望を行うものである。

 南の秋空に見える月・木星などを交互に見てみたので、以下に紹介する。




 それぞれの鏡筒の焦点距離は異なっており、セミアポはF15で、アポはF12.5である。最新のアポ屈折に比較すると、両方とも長い部類なのだが、F12.5の方はずいぶん扱い易く感じた。このくらいになってくると、鏡筒の長さは、望遠鏡の取り扱いに大きな影響を与えるようだ。なお重量は、前者が約4.7kgで後者が約4.4kgであり、さほど差は無い。




 
 アポは、EM11赤道儀(+L型三脚)に載せて使用した。一方セミアポは、90S赤道儀(+ピラー)を用いた。ドイツサイズの接眼鏡を使ったせいもあるのだと思うが、両方とも見掛けより対物部に重量配分があるように感じた。接眼鏡は、T社のOr25、P社のOr18とOr9及びN社のOr7を使用した。

 当日の天候は、透明度は良好だったが、シンチレーションはあまり良くなかった。というのも、アポで見る星像には透明感を感じるが、以前の絶好のシンチレーション下で見せた分解能は見られなかったからだ。一方、セミアポで月を見て感じたことは、ほんの少し黄色いかなということと、逆にそれが良い方に影響していたのかもしれないが、海の明暗境界部について諧調が豊かに見えたことだった。木星については、アポはすっきり見えていたが、セミアポも同じものは見えていたようだ。恒星像は、共に焦点外像が乱れて見えていたが、光軸はそれなりに合っているようだった。絶好のシンチレーション下において、アポでは内外像とも、もっときれいに見えていた記憶があることから、今回の条件は今一つだったのだろう。
 このアポ鏡筒は、以前に良く見えることを確認している。それと比較して、セミアポもこの見え味だったならば、名前相応にしっかり見えていたのではないかと感じる。
 なお、このセミアポ鏡筒の製造年は、その銘板の製造番号(80***)から昭和55年と思われ、先の比較観望会の後である。T社にとっても、調整不良などと言われていたのでは商売に差し支えるので、この鏡筒は品質管理に一層の努力を払った後の製品なのかもしれない。
 
 EM11は、南中越えの際にコントローラーが点滅し動きを止めてしまったので、ボタンを押しながら追尾を行った。後で取説を見ると、鏡筒側が水平より傾くと停止すると記載されていた。この機能は解除できるようだが、最新の機種は、色々気を付けるべきことがあるのだと思った。
 秋とはいえ、大汗をかいての星見であった。それでも念願の比較観望を行うことができ、幸せを感じた。



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