昔の望遠鏡で見ています

五藤3枚玉標準アポ

  望遠鏡を処分に行ったはずが、これを一目見るなり、抱えて帰ってきてしまったほど、私は魅せられていました。その名も、五藤3枚玉標準アポクロマート。標準とは、ツアイスを基準として、それと同等であるという意味だそうです。Fは、15、12.5、8.25の三種類が作られています。私の鏡筒は、F12.5のものです。この鏡筒を、初めて知ったのは、下の冊子を見た時でした。

 

 

  これは、昭和50年ころに行われた比較観望会に関する小型冊子です。2冊あり、一つめは「コリメーター比較検査賛辞集」、もう一つは「自 第1回至第4回並びに須田天文台20cmスーパーアポ鏡及び2枚玉・セミアポ・三枚玉標準アポ比較観望会での絶賛集」とあります。

  第二版の「はじめに」に、以下のような記載があり、多くの人が集まった事が判ります。

  ”昭和50年12月28日及び29日、昭和51年4月3日及び4日、同年6月13日、同年8月10日及び11日に亘り四回の比較観望会を開催し延2千人以上の方々が全国よりお集まり下さいましたが不幸にして第1回のみ晴天で、当夜は十分星による観測をして頂きましたが、同時に4回共コリメーター検査による比較をして頂きました為、第一版賛辞集は主としてコリメーターによる比較御感想文であります。”

  この観望会は、行きたかったのですが、残念ながらかないませんでした。後日、この冊子を読んで、どの様に見えるか、自分の目で実際に見たくなりました。そしてその思いを、ずっと引きずっていました。約40年後、そのような私が目にしてしまったものですから、いわゆる”飛んで火にいる夏の虫”状態で、すぐ飛びついてしまったわけです。

  冊子の内容は簡単に言うと、他社と比較して、五藤製は良く見えるというものです。その理由についても記載されています。その概要は以下のとおりです。

  光学ガラスには、ひずみに関するクラス分けがあり、天体望遠鏡用は5までである。屈折率の部分的な不均一性についての管理を、ガラス発注からコリメーター検査まで、厳重に行っている。そして、レンズの微少収差は、ガラスの諸条件の悪さからも又研磨技術からも発生する。五藤は悪い物は一本も出していないが、市販の多くの望遠鏡は抜検査で出荷しているため、微少収差より多くの収差残物の物がある。(つまり、五藤では全数検査を行って、悪い物は一切出していない。)

  作る事に勝るとも劣らず、検査するのは大変だと思います。これをしっかり行う。さすが、五藤だと思いました。

 

 

  長いファインダーが五藤の特徴の一つです。対物レンズは、確かスタインハイル型と聞いたことがあります。

 

 

 

 

   長いドロチューブを持っていますので、天頂プリズムを付けたり、色々な接眼鏡を入れ換えたりする時でも、リングや延長筒等は必要なく、とても便利です。

  この3枚玉標準アポで初めて月を見た印象が、今も強く残っています。それは、背筋が冷たくなるほど切れ味鋭かったというものです。本機も、今は製造されていない銘機の一つだと思います。

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