滝とは河川や湖の一部が段差になり水が落下している場所をいう。普通は山の岸壁から真っ直ぐに落ちる水である。瀑布(ばくふ)、飛瀑(ひばく)ともいう。水の落下地点で水深が深くなっている場所を滝壷(たきつぼ)という。多くの滝は、長年に渡って流れる水によって形成される。典型的なものとして岩石の地層を横切って流れる水流があると、侵食に強い岩脈部分が棚として残るのに対し、その先の侵食に弱い地層部分が削られて落ちる。結果として残った棚は落ちた部分に対して隆起した状態になる。四季のいつでも滝はあるが、その涼感から夏の季語となっている。
滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半(ごとう・やはん)
滝と言えばまずこの句があげられるほど有名な句である。滝というものの本質を見事に捉えた句と言える。崖から出る水は落ちるほかはないのである。それを「滝の上に水現れて」と捉えた。崖を出た水が滝として落ちるというのは、真実を突いてはいるが考えようによっては当り前とも言える。そこを突いたのが吉屋信子であった。「滝の上に人現れて落ちにけり、だったら面白いのに」と言ったのであるが、もちろん優れた句とわかった上での冗談であった。
この句は昭和5年に毎日新聞社が主催した「日本新名勝俳句大募集」の特選10句のうちの1句である。選者は高浜虚子、1万句が選ばれ句集として発表された。箕面の滝を詠んだ句であるが箕面という地名は使われていない。
転落の水のかたまり滝の中 高浜虚子(たかはま・きょし)
これも滝の本質に迫っている句である。優れた写生句として見逃すことはできない。原句は「顛落の」であるが意味は同じなので常用漢字で表記した。崖から転落した水は滝となって落ちるのであるが、その様子を正確に描写している。滝の外側(表面)は水が落ちているだけであるが、滝の中には水の塊があるのだ。それが次から次へと連続して落ちてくるのである。小さな滝ではこういうことはないがちょっと大きな滝では納得できる描写である。「転落の水のかたまり」は発見である。
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