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俳句雑記帳

俳句についてのあれこれ。特に現代俳句の鑑賞。

百千鳥(ももちどり)

2014年05月06日 | 俳句

 百千鳥、呼子鳥、稲負鳥の古今伝授の三鳥と言われるが、何の鳥を指すかは不明であった。鶯を指すという説もあったようだが、これは否定されている。現在は百千鳥と言えば、囀と同義語と考えられるが、囀は声に重点を置くのに対して、百千鳥はいろいろな鳥の姿に重点が掛かると考えたい。鳥が集まるのだから鳴き声は聞こえている。

    入り乱れ入り乱れては百千鳥  正岡子規

 描写が平明であるから誰にでもよくわかる句である。と言ってもこれは百千鳥の説明ではなく描写である。いくつかの鳥が木の枝に止まったり飛んだりしているのだが、どれも目まぐるしく動きまわっているのだ。どれ一羽としてじっとしているものはない。もちろん鳴き声も聞こえて騒がしい限りである。百千鳥を平明な表現で写生している。

    百千鳥とおもふ瞼を閉ぢしまま  川崎展宏

 「おもふ」の主語は作者である。瞼を閉じているのも作者である。表現が丁寧と言うか詳しすぎる感じはあるが、言いたいことはよくわかる。目の前に百千鳥がいるのである。眼を閉じると声だけが聞こえる。あの声は鶯だ、この声は眼白だと聞き分けながら鳥たちの声を楽しんでいるのである。これは囀でいいのではないかと思うが、作者としてはどうしても百千鳥と言いたいのだ。瞼を閉じたまま、いろいろな鳥の姿を想像している様子が伝わってくる。楽しい句である。

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