にいはんは周回遅れ

世間の流れとは違う時空に生きる

死んだ子の歳を数える

2008-08-24 | オーマイニュース

【おことわり】
エントリの性格上、pdfファイルへのリンクを多用しております。


実験メディアプロジェクト empro (以下エムプロ)

オーマイニュース(以下OMN)最後の大博打です。残念ながら、5月29日のグランドオープンとほぼ同じ時期に出されていた全社員への解雇通告をもって、実験メディアとして、また広告収入確保の手段としての役割ははかなく散っていました。

今にして思えば、グランドオープンのアナウンスがプレスリリース(pdf注意)の片隅でひっそり行われていた頃にはその運命は決定していたのでしょう。そうでなければ大々的にグランドオープンを宣伝して回っていたのではないでしょうか?ちなみに現在のエムプロは、数少なくなったOMN認定プロの記事置き場として細々と存続しています。

しかし、このエムプロにも成功の可能性を感じさせる時期がほんの一瞬だけありました。今年4月に発生したいわゆる“加護ちゃんバブル”の直後です。当時、拙ブログではこんなエントリをアップしていましたが、OMNもその追い風を受け、インターネット広告情報ドットコムなるサイトに媒体登録を行っていました。こちらには月間400万PV!の文字が誇らしげに踊っています。

また、このpdfファイルは今年5月づけで作成されたクライアント向けの会社案内だと思われますが、こちらの7ページにもGoogle Analyticsの4月実績として月間PVが約400万、月間ユニークユーザーが約15万と大書きされています。OMNは、梨元勝氏と加護亜依氏のコンビがもたらした、月間400万PVといういわば瞬間最大風速的データをこのような形で利用しようとしたのでしょう。

OMNはPVを公表していませんが、ときおり各種メディアに漏れ出てくるPVは月間約200万というものでした。実際、OMNが4月づけで作成したと思われる広告案内(pdf注意)の2ページには、月間PVが約200万、月間ユニークビジターが約7万という数字が出ています。前出の会社案内に出ていた数字は今年4月の実績ですから、単純に考えれば梨元勝氏と加護亜依氏のコンビがOMNのPVを倍増させたという事になります。

マイニュースジャパンの記事には、エムプロは元木昌彦社長(当時)の独走だったという元社員のコメントが紹介されています。OMNから解雇通告を受けて社長を批判したくなる気持ちは十分に理解できますし、エムプロの成果をこれっぽっちも待たなかったソフトバンク(以下SB)の動きからすると、この説にはかなりの信憑性があることも確かです。とはいえ、月間PV倍増というデータを目の前にすると、せっかくのバブルを収入に結び付ける間もなく更迭されてしまった元木氏には若干の同情を禁じえません。

ちなみに、広告案内の3ページ以降には、掲載料金を含めた商品紹介がずらりと並んでいます。それによれば、1インプレッション(表示回数)あたりの単価は0.6円~0.33円。それに対して創刊間もない2006年11~12月の広告案内では、広告の種類を問わず、1インプレッションあたりの単価は1円でした。最初の価格設定が高すぎただけかもしれませんが、こんなところにもOMNの苦難の道をはっきり見てとれます。

ところで、オーマイライフ(以下OML)がどのようなサイトになるのか、OMNの市民記者や読者にはそのほんの一部が知らされているだけで、成功の予感はおろか具体的な姿すら想像できません。ですが、経営陣としては、長期的な成功は別にしても9月1日のオープン時に広告スペースがGoogle AdSenseだらけという事態は何としても避けたいはず。SB関連企業からのご祝儀が見込めるにしても、今頃は営業担当が広告獲得に向けて奔走している事でしょう。

まだ海のものとも山のものともつかないOMLが、広告を獲得する為にさらなるダンピングを図るのか、あるいはOMNの失敗をなかった事にできる殺し文句を用意しているのか、はたまた別の秘策があるのか。いずれにしても、その成果はOMLオープンとともに明らかになります。


さて、OMNの広告戦略といえばタイアップ記事も忘れるわけにはいきません。こちらは残念ながら6月12日を最後に記事の掲載がストップし、メルマガのオープニング企画に彩りを添えるだけに終わってしまいました。回収モードに入る前に突如打ち切られたようなものですから、解雇通告の前後をまたいで頑張っていた担当編集部員には若干の同情を禁じえません。

実際、OMNが頓挫していなければ状況は違っていたはずで、実際にPR記事案内(pdf注意)などというものも存在しています。前出のMNJの記事によれば、経営不振の打開策としてタイアップ広告を増やす事が提案されていたようですが、PR記事案内8ページにある料金表を見ると、掲載料金は現金あるいはタイアップ景品で受け取ると書かれています。これまで掲載された8本のタイアップ記事は全て景品つきですから、この企画によってOMNが得た現金収入は皆無か、あったとしても極めて小額だったのでしょう。


バナー広告とタイアップ記事、両者には「結果が出るまでもう少し長い目で見る事はできなかったのか?」という共通の疑問があります。ただ、結果論でいえば危機感を持つのがあまりに遅すぎたものと思われます。もしも半年前からこのようになりふり構わない広告獲得戦略に出ていれば、それだけ長い目で結果を待つ事もできたでしょうに。

平野日出木編集長は、オフラインの場で一部の市民記者に対してOMNの困難な状況を話していたそうですが、平野氏の口からそのような言葉が出たのはOMNがOMLになるとアナウンスされる少し前のタイミングでした。OMNのサイト内では、今もって経営状態に関するアナウンスはありません。今回行われるリニューアルは、あくまでも日本最大級の市民メディアに育ったOMNが、さらなる発展を目指すためというのがOMNの公式見解です。


OMNはきちんとアナウンスをしましょう


日本で大本営発表が通用したのは、今から60年以上も昔の話です。


OMNがなかった事になるまで、あと8日