登録番号 第99号 山形ラ・フランス
特定農林水産物等の区分 第1類 農産物類 果実類(なし)
特定農林水産物等の生産地 山形県
登録生産者団体 山形県「ラ・フランス」振興協議会
特定農林水産物等の特性 剪定・摘果の栽培管理や追熟の期間を踏まえた適切な時期での出荷が地域で徹底されているため、ち密な果肉、果汁の多さ、独特の芳香で食味が良いというラ・フランス品種の特有の品質が存分に発揮され、且つそのバラつきも小さい。
地域との結び付き 1980年代から、県は生食用としてラ・フランスの生産振興を図り、官民一体となって栽培技術の開発に取り組み、1988年に、山形県立園芸試験場(現在の山形県農業総合研究センター園芸農業研究所)が、後の出荷の基準日設定の基礎となる収穫期の予測や産地追熟の技術を確立した。果実が病害に感染しやすい6~9月の降水量が他の産地より比較的少なく、果実に養分が蓄積される8~9月の日較差が9.4~10.3℃と大きい山形県は、日本のラ・フランス産地の中でも適地にあたる。
*https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/i99.html より
全国のシェア6割を誇る山形県産「西洋なし」
西洋なし王国やまがたの女王「ラ・フランス」
色や形がふぞろいで、決して見栄えが良いとは言えない「ラ・フランス」。ところが、食べてみると驚くほど上品でとろけるようなおいしさ!今や各地で盛んに作られる西洋なしだが、このブームの火付け役になったのが、山形県のラ・フランスだ。ただ、脚光を浴びるまでには、長い歳月を要したという。そのシンデレラストーリーをさぐってみよう。
そもそも西洋なしは16世紀頃からドイツ、イギリスで栽培されはじめ、18世紀のイギリスで代表的品種「バートレット」が発見される。これが明治初期、日本に伝わった。山形県では、古くからのなし産地である東置賜郡屋代村(現在の高畠町)で、1875年に栽培を始めたとされる。
しかし当初は、実ったはずの果実を食べても、石のように硬くてまずい。「食べられないので捨てておいたら、時間が経って黄ばんで香りがしてきた。拾って食べるとおいしく、収穫後に熟させることに初めて気づいた」という笑えない記録がある。
また、屋代村の古文書には、「明治42年、皇太子(後の大正天皇)行啓の折に和梨を献上したところ大いに喜ばれ、金一封とバートレットの苗を賜わった。これが本県の西洋なしの歴史のはじまり」という内容もある。あれこれ推察すると、明治初期に西洋なしは栽培されていたが、皇太子行啓をきっかけに、山形での西洋なしづくりが一気に広まったと考えられそうだ。
その後バートレットは、缶詰加工用として盛んに作らたが、このバートレット畑に細々と植えられていたのが、当時は受粉樹の身だったラ・フランスだ。ふつう果樹は、単一品種だけでは受粉しづらいため、違う品種を受粉樹として畑に入れ、実を結ぶ確率を高めるという栽培手法をとる。
ラ・フランスは1864年、フランスのクロード・ブランシュ氏が発見。そのおいしさに「わが国を代表するにふさわしい果物!」と賛美し、ラ・フランスの名前がついたという。日本には1903年、山形県には大正初期に入ったものの、見た目の悪さや栽培の手間から、受粉樹に利用されるだけだった。
しかし1970年頃から缶詰より生のフルーツの需要が高まり、生食のラ・フランスに注目が集まる。別名「バター・ペア」と呼ばれ、特有の芳香と、果汁がしたたるなめらかな肉質。当初は高価で少量が出回るだけだったが、グルメブームの到来で、一般にも広まった。
ラ・フランスは、開花は早いのに収穫が遅く、生育期間が長いために手間がかかる。山形県では土づくりから剪定、摘蕾・摘果、収穫、追熟など官民一体となり研究努力を進め、1985年頃までに生産体制を確立させた。
「ラ・フランス」は当初、生産の主役であった「バートレット」の結実を助ける受粉樹として導入された。見かけの悪さもあって裏方に甘んじていたが、大変に美味であることは栽培者の間で知られていた。
いいとこずくめの新品種「メロウリッチ」
山形県は西洋なし王国として、さらなる品種の改良や開発を推進してきた。そして今一番に注目されるのが、県オリジナルの新品種「メロウリッチ」だ。ラ・フランスより開花が1~2日遅く、収穫は9月下旬頃の中生種。糖度が約16~17度と非常に高い上、肉質はち密かつなめらかで、香りも芳しく、口に入れると十分な果汁とともに濃厚なおいしさが広がる。まさにメロウでリッチな食味だ。
もうひとつ、メロウリッチの姉さん格として人気なのが、山形県オリジナル品種の「バラード」だ。ラ・フランスとバートレットをかけ合わせたもので、特長は一個450g前後と大玉な上に、糖度が15~17度と高く食味に優れる。また、ラ・フランスを親にして生まれた「シルバーベル」は、10月下旬頃に収穫でき、日持ちが良いため、クリスマス時期に食べるのには、ピッタリな品種である。県内では他に、少量ながら多彩な品種が栽培され、旬の時期、産地直売所を見て回るのも一興だ。
とろける甘さを作る「追熟」見極めたい「食べ頃」
さて、収穫してから熟させる「追熟」のメカニズムはこうだ。もぎたての西洋なしは2%ほどのデンプンと、クエン酸などの酸を多く含む。これを時間をかけて追熟していくと、デンプンが果糖やショ糖、ブドウ糖などの糖分に分解され、ビタミンBやCも増加する。また果肉中のペクチンが水溶性のペクチンに変わるため、肉質はとろけるようになめらかな状態になるのだ。追熟の期間は、ラ・フランスなどでは常温で2~3週間。
食べ頃は、果皮の色で分からない場合は、軸の周囲に盛り上がっている「肩」と呼ばれる部分を指で押し、耳たぶぐらいの柔らかさだったらOK。ただし、店先の商品を指で押すのはマナー違反、店員に確認しよう。
産地では、西洋なしの食べ頃を分かりやすくするため、出荷ケースごとに「予冷」をかけるのが一般的だ。収穫直後に2~5度の低温貯蔵庫に入れ、10日間ほど呼吸作用を抑制する。これを常温に戻せば一斉に呼吸を始め、デンプンが糖分に変わる。約2週間後が食べ頃となる訳だ。
西洋なし生産量で全国トップを独走する山形県。山形発の西洋なし文化が、日本中を魅了しようとしている。
*http://www.yamagata.nmai.org/crops/umaimono/fruit/lafrance.html より
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