オフィス松山 オペラの部屋

オペラ&ミュージカル制作企画オフィスの徒然

オペラの楽しみ、お勉強

2005-07-09 12:09:23 | バックステージツアー
今日は大道具制作はちょっと休憩。
たまにはこんな話は如何でしょう。

声楽を学んだ人は御存知でしょうが、イタリア歌曲の中に「ケファロ・センツァ・エウリディーチェ」と歌う曲がありましたね。
これはグルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」の中のアリアです。
このオペラこそ、オペラを百倍楽しめる部屋の入り口です。

オルフェオの妻エウリディーチェが亡くなり、
音楽家で羊飼いの夫オルフェオが妻の棺の前で誰はばかることなく悲痛な声で合唱の合間にエウリディーチェの名を3回歌うフレーズがあります。当時の作曲作業の過程でよく用いられた短いフレーズを3回繰り返す技法で、オルフェの悲痛さの度合いを印象つける作曲手法が当時よくみられます。
オペラ以外の音楽の他のジャンルでも、このフレーズ三回繰り返し作曲技法が見られます。
ここからが今日のお話の始まりです。
亡くなったエウリディーチェを偲び、命を掛けて愛を貫こうとして剣を胸に当てた瞬間、何処からかアポロの神が現れて黄泉の国に居るエウリディーチェの事を教えて迎に行く事をさとします。
この辺りのなんとロココなことか。
さてその次です。
アポロの神に励まされたオルフェオがさっそくエウリディーチェの居るとされる黄泉の国へと出発します。
ここで一旦幕になり間奏曲[舞台転換用音楽]です。この音楽は実に素晴らしい!よく出来ています。
地面の割れる様子の音楽に始まり激しい気象の変化を思わせる音楽.
急いで歩むオルフェオ。足下から噴出す紅蓮の炎。黄泉の国に続く地獄への道の様子とオルフェオの突き進む様子を髣髴とさせる音楽。聞いていると地割れ、地獄道の様子が目に浮かびます。近代音楽の時代ならまだしも、グルックの時代の音楽界での音楽の中では正に前衛とでも言いましょうか、オルフェオが地獄への道を歩む様を音楽で実に明解に表現しています。この音楽がロッシーニやヴェルデイの嵐の音楽に繋がるのでしょうか、これほどの間奏曲は他に類を見ません。
この後オペラ音楽はモーツアルトへつ続くのです。

 さてオルフェオが地獄の岩の門の前に到着した時のこと、
門番達に囲まれたオルフェオ。
ここで展開される音楽こそ本当の意味でオペラの夜明け!プロジェクトX!
 こうなっています。
先ず門番達がオルフェオに「来るな!」と恫喝します。
オルフェオと門番達との問答が始まります。
するとオルフェオは竪琴をかき鳴らし門番達を説得しようと試みます。
ここの音楽(音符)の変化に注目してください。
はじめのオルフェオのメロデイーの音符は4部音符が中心。
次のメロデイーの音符は8部音符が中心。曲が進むにつれて音符が細かくなっていきます。
次は、な、なんと焦燥感を漂わせた3連音符の多用です。16分音符のメロデイーに変化します。オルフェオの奏でる音楽に心打たれた門番達。
終に門番達は黄泉の国へつ続く門を開けオルフェオを称え、導きます。
この時、この時です。
音楽が変化します。当然場面も変化します。非常にナチュラルに!
まるで朝日が差し込むように変化します。
この場面の楽譜に、注目です。装飾音符の巧みな多用。小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、限りなく透明な白から総天然色に。もうたまりません。この様に音楽では音符の変化、音程の変化、強弱の変化、(歌いはじめのメロデイーは強拍からか弱拍からか)等の変化により人間本来の心の情景を表すのです。
これがオペラドラマの根本です。
話を戻して。
オルフェオと門番達の問答の結果、オルフェオの勝利から黄泉の国の出現までが一番オペラの醍醐味を感じさせます。
私の場合オルフェを舞台中央に立たせ、オルフェオを中心点としてオルフェの居る処から放射状に白く光ながら変化する、観える転換を試みました。スタッフの高度な技術に支えられ、見事舞台中央のオルフェオのところから舞台床面全面が黒から真っ白に徐々に変化しました。音楽の変化に合わせた魅せる舞台転換には驚きと共に音楽の偉大さを感じ取れました。
さてこの様にオルフェオの勝利は紛れもなく芸術です。音楽によるものなのです。
このとこを発見した学生時代黙って入られず。
一番に故・朝比奈隆先生に報告しました。
すると朝比奈先生は「お前もオペラ中毒になりよったか」と笑顔で握手をしてくださいました。
あの時の先生の手の感触は40年近く経ってもいまだに忘れません。

  ここから私のオペラ地獄?(天国?)が始まったのかも知れませんね。正にオペラは踊る!

オペラでの音楽は楽譜の読み方ではなく捉え方なのです。
オペラのドラマと音楽。やがてオペレッタにミュージカルに「オペラの歴史は踊ります。」

それでは宿題を一つ
オペラ「カルメン」の事。カルメンは何故ホセを避けるようになってしまったのか?
その証拠とその理由について述べよ。。。。。。では。

エスプレッソマシーンが私を待っています。今はカプチーノといきましょうかね。
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コメント (3)
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