環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

廃棄物処理法にみる行政処分と刑事処分 ⑥防御機会の手続 事後手続 行政事件訴訟法

2007-11-03 18:30:14 | 廃棄物適正処理
2007年11月3日
3.行政事件訴訟法
(1)行政事件訴訟法の訴訟類型
 行政処分の取消しを求める最終ラウンドは、裁判による決着となります。行政事件訴訟法も行政不服審査法同様、提訴までの有効期間が規定されており、原則として、処分または裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは、もはや提起することはできません。また、原則として、処分または裁決があった日から起算して1年を経過したときも提起することはできなくなります。行政不服審査法と異なり、起算日に初日が含まれていることに注意する必要があります。
 また、行政事件訴訟法は、裁判所による法律判断を下すものですので、行政不服審査法による不服申立てと異なり、対審構造(原告・被告)による口頭弁論主義によって審理されることとなります。行政事件訴訟法では、訴訟の種類として、①抗告訴訟(行政処分の取消し等の訴訟)、②当事者訴訟(土地収用の際の当事者同士の訴訟等)、③民衆訴訟(一般選挙人による選挙無効の訴訟等)、④機関訴訟(国または地方公共団体間の訴訟)、の4つが定められています。廃棄物処理法における行政処分との関係では、①抗告訴訟が重要となります。

(2)抗告訴訟(行政事件訴訟法第3条)
 抗告訴訟とは、『行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう』とされ、以下の6つの種類により構成されています。
①処分の取消しの訴え(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟)
②裁決の取消しの訴え(行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しを求める訴訟)
③無効等確認の訴え(処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟)
④不作為の違法確認の訴え(許認可申請等に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟)
⑤義務付けの訴え(行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟)
⑥差止めの訴え(行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟
 上記のうち、①処分の取消しの訴え、②裁決の取消しの訴え、を取消訴訟といいます(また、上記に属さない法定外の無名抗告訴訟もある)。

(3)取消訴訟の審理
 取消訴訟が提起された場合、裁判はその訴えの訴訟要件を審理します(要件審理)。訴えの利益(勝訴した場合に、①法律上の利益が属する者か、②現実に利益の回復が得られる状態か)が認められない場合や形式的不備(提起期限がきれているなど)がある場合、補正が可能であれば補正を命ぜられ、補正が不可能であれば、この段階で不適当な訴えとして却下されることになります。
 訴えが要件を具備していれば、内容の当否の審理(本案審理)に移行します。本案審理は、対審構造(原告・被告)による口頭弁論主義によって審理されることとなります。また、当事者の主張・立証に関わらず裁判所は必要があるときは職権で証拠を調査することが可能です(職権主義)。
 行政不服審査法同様、訴訟中は原則として行政処分の執行は停止されません。しかし、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は申立てにより、決定をもって行政処分の全部または一部の執行を停止することができます(ただし、内閣総理大臣が異議を述べた場合は、停止不可。この場合、内閣総理大臣は、次の通常国会に報告義務あり)。

(4)判決
 行政事件訴訟法においても、行政処分が違法または不当であったとしても、行政処分を取消すことが公益に著しい障害を生ずる場合は、裁判所は請求を棄却することができます(事情判決)。
 取消訴訟の判決には、①判決内容に反する主張は不可とされる既判力、②処分・裁決が遡及的に執行する形成力、③判決の趣旨に従った行動が求められる拘束力、が備えられます。

 なお、最近の廃棄物処理法関連の裁判例では、元役員が道路交通法違反(飲酒運転)で懲役5月執行猶予3年の有罪判決を受けたことが、廃棄物処理法第14条の3の2第1条第1項に規定する欠格要件に該当するとして、2004年11月に埼玉県から業許可を取り消された茨城県の元産廃収運業者が、埼玉県知事を相手取り処分の取消を求めた訴訟の判決が3月22日、さいたま地裁でありましたが、廃棄物処理法の厳格な欠格要件の規定も法の範囲内とされ、行政処分が取消されることはありませんでした。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
国土交通省
建設機械のCO2排出量を低減します~CO2排出低減建設機械に対する融資制度を開始します~

厚生労働省
第29回石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会開催について
第4回化学物質に関する個別症例検討会開催について

【判例情報ウオッチング】
さいたま地裁は、31日、春日部市土地開発公社が先行取得した公共事業用地に、産業廃棄物が投棄されていたのを知りながら、それを隠したまま土地交換契約を結んだのは詐欺行為に当たるとして、公社が、前所有者の金融業と、契約を仲介した建設会社を相手取り、産廃撤去費用など総額1億2579万円を求めた損害賠償請求訴訟で、「埋め立てに同社や金融会社の関与を認めることはできない」とし、同公社の請求を棄却する判決を言い渡しました。

ISO14001
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「10月22日から10月28日までに公布された主な環境法令一覧」を更新しました/2007.10.28
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「10月22日から10月28日までに発表された改正予定法令一覧」を更新しました/2007.10.28