沼隈文化財研究所

「温故知新」
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[神辺御領遺跡]第4次発掘調査現地見学会の報告

2011年08月28日 | 報告

[第4次神辺御領遺跡]発掘調査現地見学会と説明会
日時:平成23年<2011>8月27日(土)13:30~
主催者:財団法人広島県教育事業団埋蔵文化財調査室
     福山市教育委員会
司会:向井田
財団法人広島県教育事業団埋蔵文化財調査室 伊藤 実 あいさつ
調査員の紹介
参加者:約100名以上


    (発掘調査者の紹介)

全体概要の説明 辻道久
今回の調査は、国道313号線の改良工事に伴う調査で、
平成20年の4年前から調査を継続実施している。
前回までは、計画路線の西側の調査であったが、
今回の調査は、東側の部分に当る。(5200平方メートルを調査)
今年度は、4月から9月上旬の予定で調査を進めている。


          (遺跡位置図 現地見学会資料より抜き出し)


(調査区全体図 各調査区の区切りは、畦道や道による)
    (現地見学会資料より抜き出し)

今回の調査区は、北東から南西にかけて遺跡が存在し、
道路を挟んで3区画に分断されていて、
区画区分は、北東からA~C区と呼称している。
今回の遺跡の状況は、前回までの調査(1~3次)との関連制は、
特に目立って無いようだ。
調査は、A区~C区と設定し、調査を実施している。
A区とC区の遺跡は、全く別の遺跡と考えられる。


  (調査区全景 手前からC区B区A区 南西から北東部を見る)

[調査区A]
竪穴住居跡7、溝状遺構2、掘立柱建物跡1、柱穴、炉跡を確認している。
竪穴住居跡は、楕円形と方形とがあり、
前者は弥生時代後半頃で、後者は古墳時代前半頃と思われる。
竪穴住居跡では、火を受けたものがあり、炭化物と焼け土が確認された。
溝状遺構は、幅2m程で調査区のほぼ東西を縦断している。
内部からは古墳時代初頭頃の土器を主とする多量の遺物が出土している。




        (調査区A 北東部分 調査区Aの半部分)


  (調査区A 溝状遺構からの出土状況 西側から撮影)

[調査区B]
柱穴と自然流路と考えられる遺構を確認している。
自然流路は、調査区の北東から南西に緩く蛇行し、調査区Cに
続いている。
最大幅は、12m程で、内部からは弥生時代中期頃から古代にかけての
遺物が大量に出土している。


[調査区C]
竪穴住居跡1、掘立柱建物跡5、土坑10、多数の柱穴、溝状遺構2、
自然流路と考えられるものを確認している。
竪穴住居跡は上面が削平されていて、遺存状況はよくなく、壁溝部分と
柱穴・炉跡を確認出来た。
居住面は、楕円形で弥生時代後期頃と考えている。
掘立柱建物跡は、棟の方向が南北方向(2間×3間、2間×2間)のものと、
東西方向(2間×3間)のものがあり、
掘方は、方形ないし隅丸方形のものが多く、中には根石があるものが
あり、これらの建物跡は古代頃のもので総柱建物(倉庫)が考えられる。


土坑には、深さ1mを超えるものがあり、性格については、井戸・貯蔵穴
などが想定出来るが、穴の中には、湧水が多く井戸ではないかと考えている。


溝状遺構は、幅1m、深さ50cm程で、断面形がU字形をしているものがあり、
溝底面の少し上部から弥生時代中期頃の土器が纏って出土している。
調査区Bから続く自然流路と考えている遺構は、南東部の調査区外へと続き、
一部は、北東側へ延びると推定出来る。
溝状遺構の埋土中からは、縄文時代から古代にかけての土器を中心にして、
石器(石包丁・石鏃・砥石・石斧など)や分銅形土製品や製塩土器、
円面硯などの遺物が出土している。


          (調査区C 溝状遺構 南西から撮影)


    (調査区C 溝状遺構出土状況北東部分拡大 南西から撮影)


  (調査区C 溝状遺構より出土状況拡大 西から撮影)

[調査区の概説(まとめにかえて)]
今回の調査では、自然流路と考えられる遺構を挟んで、南西側には
主として古代頃の建物跡の存在を確認し、北東側では主として弥生時代後期
から古墳時代頃の竪穴住居跡の確認をした。
現時点での推測可能な遺跡の特徴は、古墳時代頃までは概ね北東側(A区)
で集落が構成され、やがて古墳時代以降になると、南西側(C区)に集落
の一部が移動すると言う展開が考えられます。
建物の棟の方向が並行、或いは直角方向から南西側に古墳時代以降の土地利用
の中心が移動する要因が生じたと考えられます。
また調査面の上部が削平されていて、遺構の下部の部分の残りで、
遺構の正確な判断が制約を受け、これらを含めた判断を求められる事になる。
概略以上

 
      (調査区Cでの建物跡現説風景)


      (調査区Aでの解説風景)


           (出土遺物 土器:土師器)


             (出土遺物 弥生式土器)


                 (出土遺物 石器類)


                   (出土遺物 各種)

当日は、炎天下にも関らず多くの参加者が集まり、汗を拭きながらの現説の
聴講を致しました。
また会場に於いては、県教育事業団埋蔵文化財調査室が調査を行った報告書
の販売もあり、気に掛かっていた報告書も手に入れる事が出来ました。
いつもは、注文をした後、送料などが加算され、しかも時間が掛かり不便でしたが、
直接買い求める事が出来、それだけでも何か得をした様でした。
会場では、顔見知りの人達が沢山居て、気楽に参加出来ました。


この遺跡も全てが消滅する事を考えると、一瞬でも地上の光を浴びた事が
良かったのか、悪かったのかをフト考えてしまいました。
記憶は消えますが、記録はキット残るのでは、と気持ちが心の中で過り
ました。
                                   (概略報告:文責 遍照)


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2 コメント

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ありがとうございます (流水)
2011-08-29 10:49:23
遍照 さん

丁寧に纏めて頂き、
ありがとうございます。

これからも、よろしく!!です。
返信する
こちらこそ!!ありがとうございます。 (遍照)
2011-08-30 09:34:38
流水 さん

こちらこそ、種々の資料を頂きありがとうございます。
お褒めを頂き、感謝!!です。
こちらこそ、これからもよろしく!!お願い致します。
返信する

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