放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

モンテカルロ/AAA/PBC-MBPLの比較(Elekta)

2008年09月21日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第40号

E Sterpin, et al.: Monte Carlo evaluation of the AAA treatment planning algorithm in a heterogeneous multiplayer phantom and IMRT clinical treatments for an Elekta SL25 linear accelerqator, Med Phys, 34, 2007

IMRTは3D CRTに比べターゲットへの線量集中性および正常組織への線量低下において非常に優れている。しかし、小照射野や空気のように荷電粒子平衡が成り立たない領域においては、特に優れた線量計算アルゴリズムが必要となる。

従来から使用されてきたアルゴリズムは上記の荷電粒子平衡の成立を前提に計算が行われており、大きなエラーが確認されている。
(本論文ではEclipseのsingle pencil beam convolutoin with modified Batho power lawを指している)
それに対し、AAAは無限かつ均等な物質との光子の相互作用(エネルギー付与)についての関数をモンテカルロ法にて作成して計算に用いており、不均質物質や小照射野においても正確な計算が可能であると報告されている。
一方でモンテカルロ計算はLINACを使用した放射線の挙動を計算することに対して最も有効な手段とされている。

よって本論文ではAAAとPBC-modified batho power law、モンテカルロ計算(BEAMnrc, EGSnrc)との比較である。Varian LINACによるAAAの妥当性の確認は多々報告されているが、ここではElekta LINACでのモデリングについて評価している。

LINAC: Elekta SL25, 6MV (and 25MV), MLC 1cm, backscatter plate有り。
Monte Carlo: BEAMnrc / EGSnrc

測定に用いられた環境は以下である。
1. 水ファントムによるPDD, OCR, Output
 CC13(0.13cc) / NAC microionization chamber(0.007cc)
2. Polystyrene, cork, PMMA, teflonを複合させた自作ファントムによるPDD, OCR
 (2×2cm^2, 6×6cm^2, 10×10cm^2) MU:200(300MU-2×2cm^2),
 OCRはfilm(EDR-2)
3. CTデータ(頭頸部、肺)を用いたIMRTプランの比較

結果
1. depth doseとOCR
AAA: 2×2cm^2の照射野を除いて1%/1mm以内(測定に対して)
モンテカルロ: 2%/1mm以内(測定に対して)
2. output
AAA: 測定に対して1%以内
モンテカルロ: 測定に対して0.5%より良い結果
3. 不均質ファントムでの検討: PDD
AAAは全ての照射野において2%/1mm以内
2×2cm^2の照射野において、肺の線量の計算精度:
   AAA > PBC-modified Batho power law
肺との境界領域において過大評価(2-4%)
4. 不均質ファントムでの検討: OCR
測定データとモンテカルロのデータは2%/1mm以内
6×6cm^2, 10×10cm^2においてAAAは正確だが、Modified Batho Power Lawは過小評価している。
2×2cm^2においてはAAAにおいても過小評価をしている。
5. 臨床における検討
CTデータを水に置き換えて計算した場合、一部Modified Batho power lawは過大評価をしている。
  モンテカルロは忠実に線量分布を表現するが、ノイズが大きくなる。
  肺の臨床例においてモンテカルロのDVHに比べModified Batho power lawは急に線量が下がりすぎる。
  肺の臨床例において、AAAはモンテカルロと同様の形状の線量分布を計算しているが、3%程度過小評価している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

AAAは線量計算において少々過小評価することが報告されています。またPBC-Modified Batho power lawは不均質に対しては良好な結果をしめしていません。やはりEclipseにおいてもモンテカルロ法を利用した光子の線量計算アルゴリズムの導入を期待したいと思います。

詳細は論文で。