放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

モンテカルロ法によるCBCTの線量評価

2008年11月01日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第46号

George X Ding, et al.: Accurate patient dosimetry of kilovoltage cone-beam CT in radiation therapy, Med Phys, 35, 2008

現在CBCTがIGRTの重要なツールとして使用されている。あえて記載する必要性も低いが、CBCTを使用することによって3Dでの解剖学的情報収集が可能となり、そのデータを用いて患者の位置補正をすることができる。しかし高頻度にCBCTを使用することとなれば、組織に与える吸収線量(放射線被曝)も無視できないものとなる。
また、CTの被曝の把握は重要項目となっているものの、人体内の軟部組織や骨等の不均質物質での吸収線量評価は容易ではない。
本論文ではこの問題に対処するために、モンテカルロ法を用いてCBCTでの被曝(臓器吸収線量)を把握することを試みている。

方法
モンテカルロコード: BEAMnrc/DOSXYZnrc
LINAC: Trilogy, OBI (Varian)
CBCT: 125kVp, 80mA, 25ms, 2mm thick slices,
Rotating the gantry: -4° to 364° (total 368°)
Ionization chamber: Exradin model A14 (waterproof), IC15

CBCTにて得られた画像における1点の線量を、電離箱で測定した値(Dexp)とモンテカルロで計算した値(DMCcal)とを比較し、
Dexp = fMCcal・DMCcal
と定義し、モンテカルロ校正定数(fMCcal)を得ています。
このfMCcalを種々の部位におけるモンテカルロの計算結果(DMCcal)に乗じることにより、種々の部位におけるモンテカルロ予想線量(DMC)を得ています。
DMC = fMCcal・DMCcal

また、モンテカルロ法の妥当性を証明するために、水中(Blue phantom)でのdepth-dose, dose profileを測定、比較評価をしています。この際、測定の不確かさとして3%の再現性が記述されています。

CBCTの線量評価に用いられたファントムは頭頚部および骨盤のRadiosurgery verification phantomであり、この中にExradin A14線量計を配置して測定を行っています。

結果は以下です。
1. OBIのX方向(治療台lateral方向)のプロファイルは、bow-tie filter、heel効果により対象ではない。
2. PDDおよびプロファイルにおいてモンテカルロ法による計算と測定結果は非常に一致している。
3. Head phantomでのDexp=7.92cGy (half-fan scan mode): ほぼ頭部の中央
4. Pelvis phantomでのDexp=4.42cGy (half-fan scan mode): ほぼ骨盤の中央
5. Pelvis phantomでのDMCcal=4.33cGy, 測定よりも2%低い
6. 骨の線量は軟部組織の3-4倍となっている。
7. 患者の頭頚部CBCTにおいて、骨の吸収線量は20cGyよりも多い。脳は最大5cGy、脊髄は最大6cGy、皮膚は最大10cGy。
8. 患者の胸部CBCTにおいて、脊髄は3-4cGyであり、頭頚部CBCTよりも少ない。
9. 患者の下腹部CBCTにおいて、骨の吸収線量は10-20cGy、皮膚は5cGyよりも少ない。これらは頭頚部CBCTよりも少ない。

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 モンテカルロ法における計算の誤差要因はSystematic errorとstatistical errorに分けられる。ここではCalibration法によりSystematic errorを減少できたと報告している。この方法はVMCBC©としてVanderbilt大学が権利を有しているようである。
 本論文に記載されている診断エネルギーにおけるPDDやProfileはあまり公表されていない。またモンテカルロによるCT時の臓器吸収線量の把握は非常に有用である。将来的に、CTを撮影した際にピクセル値を確認すれば「CT値」と「臓器吸収線量値」が表示される日も遠くないかもしれない。

詳細は論文で。