放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

水、複雑な照射野、不均質時のAAAの線量評価

2008年10月15日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第43号

Christopher M. Bragg, et al.: Dosimetric verification of the anisotropic analytical algoroithm for radiotherapy treatment planning, Radiother Oncol, 81, 2006

放射線治療における線量投与は高精度であることが望まれ、そのためにはsimulationからplanning、照射までの不確かさを可能な限り低減する必要がある。ゆえに各々のプロセスにおける潜在的なエラーの理解と知識は不可欠である。
治療線量が増加し、複雑性が増すなかで線量計算アルゴリズムの正確性は重要課題である。
歴史的にみても不均一物質の線量計算は電子の輸送コードの困難さゆえに問題視されてきた。

Eclipseに搭載されたAAAは比較的最近開発された治療計算アルゴリズムである。
本報告ではこのアルゴリズムのパフォーマンスを評価するために、水中における簡単なビームジオメトリ、複雑な状況において測定を行っている。

装置: LINAC. Varian 2100C/D, 6 / 10MV
Eclipse (version 7.5.18 / 2.5mm grid)
比較アルゴリズム. PBC-eTAR

Simple geometryとして行っているのは、正方形、矩形、MLC作成照射野、SSD変更した場合、EDWである。
ここでPDDおよびOCRを測定している。

Complex geometryとして行っているのは、asymmetric field (Half field等)、斜入射、後方散乱体の無い場合、接線照射である。

最後に不均質体における評価である。不均質においてはコルクやstyrofoam、骨等価物質にて構成し、PDDを評価している。また、胸部ファントムを用いて、肺や骨髄における線量評価も行っている。

結果は以下である。
1. 正方形および矩形照射野の計算線量に対するPDD測定値の乖離は1.5%以内である(ビルドアップ以下、6MV, 10MV)
2. 正方形照射野のビルドアップ領域、PDDにおいてDistance to agreementは6MVで1.1mm, 10MVで1.6mmであった。同様に矩形照射野であれば2mm以内であった。
3. 検討した全ての照射野サイズにおいて、平均的な乖離はビルドアップ以下において0.2%±0.2%(1SD)、ビルドアップ領域においては0.2±2.1%(平均的なdistance to agreementは0.3±0.7mm)
4. 低線量(CAXの7%以下)領域におけるOCRの最大乖離は2%、30x30cm,10MVの照射野においては約2.5%過少評価(AAAの結果は、照射野外において過少評価の傾向)
5. 高線量(CAXの90%以上)領域におけるOCRの相違は2%より良い。最大の相違は10MV, 40cm x 40cmの照射野において6.7%の過少評価。
6. SSDを90cmや120cmに変更しても差異はない
7. MLC作成照射野においても差異は変わらない
8. Enhanced dynamic wedgeは大きな乖離が存在する(wedgeの高線量部分)
9. Half beamのOCRにおいて、計算と測定の乖離は大部分で2%以内か、2mm以内である。
10. Styrofoam(非常に低吸収)をSolid waterにて挟んだジオメトリにおいては、PBC-eTARよりもAAAがPDDの予想は良い
11. ランドファントムの肺の線量はPBCよりもAAAが正確

線量計算アルゴリズムについては多々報告されており、それらの結果からある程度のcriteriaのコンセンサスが得られると記載されている。そこでは、
・ Low dose gradient regionにおいて2-3%
・ High dose gradient regionにおいて2-3mm
と記されている。
UKにおけるIPEM report 81では
理想として、2%-2mm
受け入れられるものとして、3%-3mm
Van Dykは複雑な状況下においては、単純なビームかつ不均質物質の状況として3%
不均質物質を含んだ複雑な状況として4%-4mmを提案している。

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多くの論文がAAAを支持しているが、各施設で使用前の検証は不可欠である。特徴を得るうえでも論文を参考としたい。

詳細は論文で。