放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

術中照射用アプリケータの線量の特徴

2008年07月31日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第31号

Edwin C. McCullough, et al.: The dosimetric properties of an applicator system for intraoperative electron-beam therapy utilizing a Clinac-18 accelerator, Med Phys, 9, 1982

 術中照射用ツーブスを装着した際の電子線-線量測定の特徴をまとめた論文です。ここで使用されている直線加速器はVarian Clinac 18であり、6, 9, 12, 15, 18MeVの電子線が照射可能です。構成は以下の3つに分けることができ、カット面までの距離は100cm(FAD)。
1. アクリル製円形コリメータ(4, 5, 6, 6.5, 7, 7.5, 8, 9 cm直径)カット面は水平。
2. 15度、30度に切り取られた円形コリメータ。(15度、30度、5-8 cm直径 0.5cmきざみ)
3. 矩形コリメータ(8x9, 8x12, 8x15cm^2)
 全てのアプリケータは直径10.5cm、長さ24cmのアルミニウム製のtubeに装着することができ、このアルミニウム製tubeがガントリに装着される。
 
 本論分にて評価している線量パラメータは、Given dose / MU, 中心軸の表面線量、Dmax, d90%, d30%、X線含有、Cross fieldのflatness, 照射野、半影である。

 筆者は以下について記している。
1. アプリケータの特徴はJAWの大きさに依存することが考えられる。しかし、4cmφおよび9cmφのアプリケータを装着した際のJAWサイズの変更(5cm, 10cm, 15cm)において表面線量は変化しない。
2. JAWサイズを変更した際のX線の含有は、ほとんど変化しない。しかし、低エネルギー(ここでは6MeV, 4cmφ)ではJAWサイズを10cmから5cmにすると3%程度増加する。
3. JAWサイズを変更した際の出力は、JAWを小さくするにしたがいかなり減少する。それゆえ10cm x 10cmかそれ以上の照射野が好まれる(円形コーンの場合10cm x 10cmの照射野が最適、矩形アプリケータの場合は15cm x 15cmが最適)。
4. 90%の線量となる深さはJAWサイズの変更にともない、エネルギーが18MeVのように高い場合変化する。18MeVにおいてJAWサイズを15cm x 15cmから10cm x 10cmに変更すれば2-3mm増加する。
5. 18MeVのような高エネルギーかつ小さなアプリケータの場合、アルミニウムtubeとアプリケータの接続部からの漏れ放射線が大きく、半影が大きくなる。これを防止するためにはJAWサイズを小さくするか、3mmの鉛を設置するのが有効。
6. エネルギーが12MeVを超えると、アプリケータの直径(JAWは10cm x10cm)に関わらず表面線量は89%を超える。
7. アプリケータの直径(JAWは10cm x10cm)が小さくなるとガントリーヘッド由来の低エネルギー光子の量が減少し、表面線量は下がる。しかし、5cmよりも小さくなるとアプリケータが中心軸に近くなり、このアプリケータ壁からの電子線が中心軸線量に大きく影響するようになるため、表面線量は増加する。
8. 5cmを超えるアプリケータでは90%深は変化しない。それよりも小さなアプリケータでは電子線の飛程にともない減少する。
9. 斜めにカットされたコリメータでの90%深は少し浅くなる。6.5cmφ(実際は6.7cm)、30度のコーンの場合、3mm浅くなっている。
10. 斜めにカットされたコリメータを使用して、斜めに照射しても等線量曲線は表面に平行となる。
11. 斜めにカットされたコリメータでの照射野は通常の円形コリメータに比較し、(cosθ)-1を乗じることにより近似できる。ここでは照射野が67mmのコーンに対して、67mm / cos30°= 77mmという結果が示されている。
12. アプリケータサイズに比較し90%の等線量曲線は少なくなるので、マージンの設定は重要であり、評価された腫瘍サイズよりも少なくとも1cmは大きなアプリケータサイズを選択する必要がある。(斜めにカットされたアプリケータの場合、等線量分布曲線を考慮し、さらに大き目のアプリケータが有効かもしれない)
13. 一般的に術中照射の際にSSDを100cmとすることは困難である。そこでVirtual source locationを使用した距離の逆二乗は有効である。高エネルギーにおいては1%以内の誤差で計算できるが、6MeVのような低エネルギーかつ小さなアプリケータでは1.5cm程度の距離のoffsetにおいても3%程度の誤差が生じる。
14. 中心軸の線量を10%程度に抑えるためには、6MeVで2.4mm, 9MeVで4mm, 12MeVで4.8mm, 15MeVで6.4mm, 18MeVで7.2mmの鉛が必要。照射野の形状を変化させる場合に有効。

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 術中照射時の線量分布の把握は特殊なアプリケータを使用するために、より専門的な知識が必要である。斜めにカットされたアプリケータでのd90%が浅くなる点は重要であり、線量測定の際の参考としたい。

 詳細は論文で。