放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

IMRTプランにおけるAAAとPBCの比較

2008年09月19日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第39号

Christopher M Bragg, et al.: Clinical implications of the anisotropic analytical algorithm for IMRT treatment planning and verification, Radiother Oncol, 86, 2008

 Eclipseに搭載されている線量計算アルゴリズムであるPBCとAAAの比較をIMRTのプランにおいて検討した論文です。PBCは肺等の不均一領域や小照射野等の電子平衡が成り立たない状況下において良好なモデリングができないとされています。それに比較し、AAAは電子の輸送コードが優れているため、上記の肺等の不均一領域や小照射野等のモデリングも優れていると報告されています。
 IMRTは側方荷電粒子平衡が成り立たない小照射野の集まりであり、電子輸送コードの正確性が要求されます。そこで本論分ではIMRTプランにおけるAAAとPBCの比較を行っています。

 ここで対象として考えられているのは前立腺、頭頸部、肺の3箇所であり、各々のプランはInverse planningを用いてICRU report 62のtarget coverageを処方の95%-107%の間に適合させ、かつOARの線量を最小にするように設定している。線量計算のアルゴリズムはPBC-eTAR、2.5mm計算グリッドにて行い、その後に同様のMUにてAAAを用いてに計算している(さらにrenormalization後再度AAAで再計算)。

 検討している項目は、PTV dose: minimum, maximum, 95%を受けるPTVの体積率、臨床上重要なOARである。また、conformity index(CI)を採用し、結果を示している。
CI = V(PTV95) / V(PTV) × V(PTV95) / V(T)
V(PTV95): 処方線量の95% 線量を受けるPTVの体積
V(PTV): PTV線量の体積
V(T): 処方線量の95%線量を受ける体積

 線量の検証はanthropomorphic phantomを用いて、各々のプランにおいて3から6ポイント測定し、AAAにて計算した結果との比較を行っています。またDTAの評価はEclipseにて行っています。

結果は以下です。
1. 前立腺や耳下腺において、同じMUの時AAAはPBCに比較してPTVのDmin(%), Dmax(%), V95%(%)がわずかに低い値となる。
2. 前立腺や耳下腺に比較し、同じMUの時咽頭のAAAはPTV. V95%(%)の減少が5%と大きい。
3. 肺のAAAはPTV. V95%(%)が同じMUの時9%減少しているが、脊椎や正常肺の線量は大きく変わらない。
4. 肺のCIはAAAに変更することで大きく減少する=poorer coverage
5. 電離箱による検証の結果により、前立腺、耳下腺プランにおいては3%以内の差、もしくは線量の急勾配部において1.6mmの差であった。同様に肺や咽頭においては3%もしくは3.5mmの差であった。

筆者は結論として、前立腺、耳下腺、咽頭のIMRTのプランにおいて、AAAはPBCと大きく異ならない。しかし、肺においては電子輸送コードの正確性の問題から、PBCに優先してAAAを使用することを推奨している。

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AAAが電子輸送コードにおいて優れていることについては種々報告がなされている。本研究ではAAAを肺の線量計算に使用することを勧めているが、やはり2種類のアルゴリズムを理解し、比較しながら使用することがより安全な方法のように感じた。

詳細は論文で。