放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

CBCTの画質評価と許容値の設定

2008年11月05日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第47号

Jean-Pierre Bissonnette, et al.: A quality assurance program for image quality of cone-beam CT guidance in radiation therapy, Med Phys, 35, 2008

IGRTとして使用されているCBCTの画像におけるQAに関する報告です。本論分を発表したPrincess Margaret Hospitalの施設の充実度には本当に驚きます。ここではCBCTの画像評価のQAを作成するために10台のCBCT(Varian OBI. 4台、Elekta Synergy. 6台)を利用して、3年間の臨床使用におけるデータを元に許容値を考察しています。

CBCTの画像は画像registrationアルゴリズムの信頼性および正確性に影響し、その結果IGRTの正確性に影響を与える可能性があります。また、long方向のflat panelの位置のずれは、画像の質は保たれたままでも誤った位置情報を与えてしまう可能性があります。

 Flat Panelは一般的にピクセルgainの変動、defectiveピクセル、ピクセルoffset、暗電流の変異を補償するために校正されています。暗電流やピクセルoffsetは画像再構成の前に各々のプロジェクションから暗電流を差し引くことで消去しており、このDark imageはflat panelに照射することなく50画像を平均化して得られ、各々ピクセル毎の標準偏差が自動的に記録されます。ピクセルごとのgainの変動とdefective pixelはflood imageを利用して補正されています。このflood imageは遮蔽体(吸収体)なしでopen照射を行い、照射50画像を平均化して得られます。この作業(flood image)によりピクセル固有のgain factorが得られ、defectiveピクセルは近くのピクセルの値を平均化することにより消去されます。
Flood imageは取得環境下に依存し、本論分ではElekta LINACにおいて2.0cmアルミニウムを装着、およびVarian OBIではbow-tie filterを装着して取得しています。

Flat panelは撮影用X線および加速器からの散乱線、漏洩線にて電気回路が照射され、時間の経過とともに少しずつパフォーマンスが低下してくることが予想されます。これを評価するために平均化されたdark、flood imageを26ヶ月取得し、100x100の中心部のピクセル値を記録し、この標準偏差をモニターすることによりflat panelのパフォーマンス低下を調査しています。評価方法には中心ピクセルの平均値を標準偏差で除算することでSNRを算出し、26ヶ月の経過を調査しています。

上記のdark imageやflood imageに加え、ここではCatPhanを用いて均一性、低コントラスト検出率、高コントラスト分解能、画像の忠実度、CT値の直線性を調査しています。高コントラスト分解能の評価には21個の正方形の波型パターンを用いてMTFを評価しています。
 均一性の評価においては、積算不均一性として、中央と外側4箇所のCT値を測定し、
Integral nonuniformity = (CTmax – CTmin) / (CTmax + CTmin)
として評価し、
Uniformity index = 100 x (CTperiphery – CTcenter) / CTcenter
も同時に評価しています。

結果は以下です。
1. 26ヶ月のデータにおいて、dark imageの標準偏差の平均. 5.62±0.09ADC、99%信頼領域0.27ADC
2. flood fieldの平均的SNRの評価は、不明瞭な測定基準であった。
3. 正方形の波型パターンを使用したMTFでは、アイソセンターplaneから離れても(4cm, 8cm)MTFは変化しない。また照射野を小さくすることで(散乱線を減少させることで)MTFはずいぶん改善する。
4. Integral nonuniformityは0.009-0.039の間(平均0.025)、Uniformity indexは-8.9-4.5の間(平均-2.9)
5. CT値の直線性は装置に依存するところが大きい
6. 距離の測定の精度は99%信頼区間において0.45mmであり、メーカの基準値1mmよりも優れている
7. 同じメーカの装置であっても許容値が異なる。


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LINACに搭載されているCBCTは非常に高エネルギーの散乱線を電気回路に受ける可能性がある。性能の低下を発見し、なるべく早く対処するためのQA作成に関する工夫が見られる論文である。ほぼ3年の使用で劣化が見られないことは記載されているが、劣化状況を把握しておくことは必要かもしれない。
許容値は相当数のデータを取得し、その統計的処理から判定する方法が妥当なところのようである。
装置や使用環境、スタッフ等の条件が異なれば、許容値が異なって当然である。
最重要なことは各施設で許容値を作製するために定量的評価のための統計的手法を学ぶことである。

知識がないまま使用するだけの装置とならないように心得たい。

詳細は論文で。