放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

定位照射用マスク固定のCTによる再現性評価

2008年07月24日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
放射線治療と医学物理 第28号

Jochen Willner, et al.: CT simulation in stereotactic brain radiotherapy – analysis of isocenter reproducibility with mask fixation, Radiotherapy and Oncology, 45, 1997

従来頭部に対する定位的放射線治療はピンを用いて侵襲的に固定が行われ、分割照射を行うことには限界があったが、最近はより固定精度の良いマスクシステムが開発されFDAの認可も得られている。しかし、着脱式の場合再装着した際の位置ずれが問題となりそのQAは重要である。本論文ではBrainLABの着脱式マスクを使用した再現性をCTにて評価している。

方法および討論でも述べられているが、CTを用いたマスクの固定精度の検証はLINACの近くにCTが配置されている必要性がある。ゆえに診断用のCTと兼ねている施設では少々困難な検証方法かもしれないが、これにより3次元の位置ずれ(3D-vector)が評価できる。位置ずれ評価後、マスクを装着したままLINAC室に入室し治療を行っている。

22回のCT検証(患者数16名)の結果、平均的なずれとしてlongitudinal方向は0.4mm、lateral方向は-0.1mm、anterior-posterior方向は0.1mmであり、3D vectorとして2.4mm(S.D.1.3mm)と報告されている。

筆者の結論は以下である。
1. 高精度な頭部定位放射線治療のQAとしてCT検証は重要である。
2. 非常に小さなターゲットの治療においては、分割照射においてもsetupの再現性向上のためにCT検証が推奨される。
 
頭部固定の再現性および正確性は定位放射線治療において重要な項目のひとつである。上記結果から再現性よく固定されていることがわかるが、個々の患者において固定されている保証を得ることは重要と思われる。その際本論文は有用である。

詳細は論文で。




定位放射線治療用コリメータの設定位置検証

2008年06月05日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
第12号

T Falco, et al.: Setup verification in linac-based radiosurgery, Med Phys, 26(9), 1999

定位放射線治療用円形コリメータを装着したLINACにおいて、a-Seおよびフィルムを用いて天井レーザに対するコリメータを補正する方法。また補正後に回転儀(gyroscopic device)を用いてアイソセンターからのガントリーおよびカウチ回転軸の変位を決定する方法の紹介です。

Collimator alignment 
電離放射線および赤色レーザに感度のあるa-Seプレートもしくはフィルムをカウチ上(アイソセンター)に配置し、定位放射線治療用円形コリメータを装着して照射。その後ガントリーを回転させ、天井レーザを照射する。その解析結果(変位)を利用して、コリメータを調整する。調整にはコリメータに取り付けられたマイクロメータにて行っている。
Alignmentの変位をみるアルゴリズムは
① レーザの交差点を計算する。
② 円形ビームにて照射された領域における中央を計算する。
③ 上記①と②の変位量を計算する。
となっている。

Gyroscopic deviceを用いたガントリーテスト
 Gyroscopic device(ガントリーおよびカウチがいかなる角度となっても、アイソセンターにおいて、ビームに垂直となるようにフィルムが配置できる)を用いて、7つのガントリー角度(30, 90, 135, 180, 225, 270, 330度:カウチ0度)時の円形コリメータ中央とレーザ交差点との変位を調べている。その際90度および270度のみ壁付レーザにて行い、他のレーザ焼付は天井レーザにて行い、その変位量を算出している。

Couch rotationテスト
 カウチ上に水平に検出器を置き、カウチ回転軸に伴う安定性を見る試験で、カウチ角度-80度、-15度、0度、35度、60度時に天井レーザにて焼き付ける。クロスヘアの交差点のブレがカウチ回転軸のシフトを示す。

LINACアイソセンター直径
 Gyroscopic deviceにフィルムを装着し、実際に使用する放射線照射および、天井、壁レーザにて焼付けされた交差点との変位量を見ている。また、フィルムの黒化領域のFWHMを測定することによって、ガントリーおよびカウチのぐらつきがあることを証明している。

a-Seおよびフィルムはレーザの位置と放射線フィールドのズレを判定するのに有用であると報告しているが、やはり簡便さからCR(IP)が便利かもしれない。

詳細は論文で。

ウェブカメラを用いたアイソセンターチェック

2008年06月03日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
第10号

M. K. Woo, A personal-computer-based method to obtain “star-shots” of mechanical and optical isocenters for gantry rotation of linear accelerators, Med Phys, 29(12), 2002

ウェブカメラを用いてメカニカルポインター(ブロックトレイ部分に取り付ける)、ブロックトレイの中央およびカウンターウェイト付近に取り付けたアルミニウム製のアームに通したナイロン製の紐、古典的なスターショットの比較です。

①メカニカルポインターをウェブカメラで撮像して、スケーリングをポインター直径で行います。種々のガントリー角度に対する取得画像から、アイソセンターの変位を求めています。

②アイセンターを通過するように、ブロックトレイの中央およびカウンターウェイト付近に取り付けたアルミニウム製のアームに通したナイロン製の紐を同様の手技でウェブカメラにて撮影し、同様にアイソセンターの変位を求めています。

③古典的なスターショットを撮影し、①、②、③をPhotoshop version 6にて重ね合わせて評価しています。

 筆者は理想のアイソセンターと放射線の軌跡としてのアイソセンターの一致は非常に重要であり、またテストが容易かつ実際的であることから、この重ね合わせによる方法は有益であると述べています。

詳細は論文で。

Split-field testを用いたQA

2008年05月30日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
第9号
Eric C Ford, et al.: A block design for split-fields tests of accelerator alignment, Med Phys, 31(8), 2004

AAPM TG 40ではjaw symmetry checkについて1月に1回、mechanical isocenter checkについて1年に1回行うよう勧告しています。

Split-field testsではjawの非対称性、コリメータ回転軸に伴うビームスポットの変位、コリメータ回転軸に伴うガントリー回転軸の変位、ガントリーのたわみが判定できます。

本報告はLutzらが開発したdouble exposure法のmodified versionであり、ブロックの形状に工夫をしています。

1. Collimator rotation test
本テストはX、Y JAWの対称性を見るテストであり、他の起こりうる変位は無視することができる。ここではcollimator 90度および270度での10cm×10cmの照射で評価している。Fig 5に参考写真が掲載されているが、変位があることが明確に判断できる。

2. Gantry rotation test
本テストではJAWの非対称性、ビーム焦点の変位、回転軸の変位、ガントリーのたわみを判定することができる。ここではガントリー角度0度および180度を用いて評価している。ここで重要なことは、X jaw edgeの変位はcollimator rotationの変位、collimator rotationに対する焦点の変位、JAWの非対称性が原因で起こるが、Y jaw edgeの変位はガントリーのたわみのみに依存していることである。しかし、collimator rotationの変位とcollimator rotationに対する焦点の変位等は同時に起こりうるため、本テストのみでは変位が見られた場合の原因特定は困難である。

 本報告は簡便に行うことができるため、参考になると思われる。
詳細は論文を。

EPIDを用いたアイソセンターの確認

2008年05月29日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
Lei Dong, et Al: Verification of radiosurgery target point alignment with an electronic portal imaging device (EPID), Med Phys, 24(2), 1997

 アイソセンターのズレを検出するための方法としてW Lutzのタングステンボールを用いた方法が有名ですが、フィルムを使用することなくEPIDを用いて行い、かつ自動で解析するソフトを開発したという趣旨の報告です。

 驚くべきことに、筆者は本テストにおいて0.3mmのアイソセンターのズレが生じればlateral, longitudinal方向に補正を行い、このガントリー角度、カウチ角度および調整量を記録しておき、実際の治療において同様の角度で補正を行うと記載しています。一方でタングステンボールの中心と、照射野中心のずれが0.5mm以内であることを確認するためのテストであると記載しており、この方法はBrainLAB推奨のW.LutzテストのCriteriaと同じです。

 利点としては時間節約でしょうか。欠点としては筆者も問題点としてあげているように、EPIDを使用すると確認できない角度が存在します。たとえば、ガントリー角度90度、カウチ角度90度等ですが、この角度はRadiosurgeryでは有用と考えられています。また、EPIDを用いた際の精度は0.2mm程度であると報告していますが、EPIDがある場合とない場合でのガントリーのsagに関する考察はありません。

詳細は論文確認。

LINACアイソセンターサイズの決定方法(star-shot)

2008年05月29日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
A Gonzalez, et al.: A procedure to determine the radiation isocenter size in a linear accelerator, Med Phys, 31(6), 2004

LINACを用いた放射線治療ではアイソセンターのズレを定期的に確認することは必須項目です。方法論は多々あると思いますが、今回はstar-shotを使用した方法の紹介です。

理想のアイソセンターとは、ガントリー回転軸、コリメータ回転軸、カウチ回転軸の交差点であるといわれており、筆者は5枚のフィルムを用いて、アイソセンターポジション、たわみ解析を試みています。
① フィルムAxial配置+Gantry 0, 90, 225, 315deg
② フィルムCoronal配置+Gantry 0, 180deg, Collimator 0, 90deg (vertically up) , Collimator 10, 350deg (Vertically down)
③ フィルムCoronal配置+Couch 0, 45, 90, 315deg
④ フィルムAxial配置にてレーザをマークし(Couch 0deg)、Couch , Gantry 90deg + collimator 0, 90deg、およびCouch, Gantry 270deg + collimator 80, 100deg
⑤ フィルムCoronal配置 + Collimator 0, 90, 225, 315deg

レーザとの交差点までの距離として、x方向に-0.6±0.2mm, y方向に-0.1±0.3mm, z方向に-0.4±0.3mm、アイソセンターの大きさとして1.0mm±0.2mmという結果であった(不確かさは2 standard deviations)。

少々アイソセンターのたわみが大きい気がするが、3次元的な解析は試みたことがないのでこの程度なのかもしれない。

詳細は論文確認。

QA for LINAC using phosphor plate

2008年05月21日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
Florin Rosca, et al.: An MLC-based linac QA procedure for the characterization of radiation isocenter and room lasers’ position, Med Phys, 33(6), 2006

LINAC装置のQAとして、放射線アイソセンターに対するガントリーのたわみ、カウチ回転のぐらつき、MLCの位置ずれ、レーザの位置ずれを経時的に確認することは非常に重要である。

本論分では高度な器具を使用することなく、上記項目を知る手立てを紹介している。

フィルムの代わりに診断部門で普及しているCR (Phosphor plate)を用いて、照射するフィールドを内円と外円に分け、2種類の項目を同時に評価できるようにしている。
たとえば、0°- 180° gantry sagのテストとして、
1. CR(Plate)をアイソセンターに設置する。
2. Gantry = 0°にてMLCにて点状(スリット様)の照射野を作成し、
コリメータ280°から80°まで20°ステップで内円に対して照射する。
3. Gantry = 180°にてMLCにて同種の照射野を作成し、
     コリメータを2と同様にして、外円に対して照射する。
4. Gantry = 0°にてConeを装着し、中央に照射する。
5. 天井Laserを4にて照射した部分に数秒あてる。

gantry sag: 2にて得られた中点と3にて得られた中点の移動量
laserの位置ずれ: 上記2つの中点と5のレーザとの位置ずれ
Collimatorのずれ: 2および3にて得られるコリメータスポークショットによって
         得られる小円(接線の集合にて得られる)の半径

長続きをするためには簡単であることが不可欠である。
そういう意味で、この方法は非常に有益であると思われる。