放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

データベース保存ミスによる過剰照射

2008年06月09日 | Adverse event
第17号

U.S. Food and Drug Administration.: Adverse Event Report: Varian Image Systems Vision Radiological Image Processing System, 2005

 13Gy/Fr, 3Fr、総線量39Gyを頭頸部に誤って照射したという報告です。MLCの使用を意図したものでありながら、OPEN fieldで照射してしまったという、いささか信じられない内容です。物理士のQAが不足していたことに加え、2人のセラピストが治療コンソールに示されるOPEN fieldに気がつかなかったということから事故は発生した。
 照射された患者はのどの痛みや粘膜炎を含めた過剰照射の症状を訴えたが、3週間後症状は和らいだと説明している。

 MLCの使用を意図したにもかかわらず、OPEN fieldとなってしまった原因はMLCのコントロールポイントがデータベースに適切に保存されなかったことにある。保存過程で正常動作ではないプログラムの切り離しがあり、このソフトは保存が適切になされていない旨表示していた。これに気がつかなかったユーザのミスだと報告は締めくくっている。

詳細はFDA報告で。 

出力係数入力ミスによる事故

2008年06月09日 | Adverse event
第16号

U.S. Food and Drug Administration.: Adverse Event Report: BrainLAB Novalis shaped beam surgery system, 2004

 ノバリスの出力係数入力ミスによるイベント報告です。物理士が出力係数の測定を行った際に施設が保有していた出力係数よりも大きな値が示された。
 これによると、基準点において1.0cGy/MU (1Gy/100MU)の照射の調節を行った場合、実際の出力は1.5cGy/MU (1.5Gy/100MU)となっており、実に50%の過剰照射となっていたと想像される。
 
詳細はFDA報告で。 

ダイナミックMLCとスタティックMLC選択ミス

2008年06月09日 | Adverse event
第15号

U.S. Food and Drug Administration.: Adverse Event Report: Varian Medical Systems Acuity System, Simulation, Radiotherapy, 2006

 ダイナミックMLCによるプランを作成したが、不注意によりStaticプランに置き換えられてしまったという内容。この結果として、28分割中21回不適切に治療がなされた。患者に照射された線量は計画に比べておよそ8%多いと計算されたが、臨床上は問題ないと判断された。しかし、残りの7分割で超過線量を調節するのは困難であると報告されている。

 製造業者によると、病院スタッフにより2つのとても似通った名前のプランが作成され、ひとつはダイナミックMLCタイプ、もうひとつはそうではなかった。セラピストが治療のためにデータを読み出した際に、誤ったプランを選択したために発生したという内容である。

 いずれにしても、照射プランを保証することは重要であり、2つのデータが照射可能であったことにも問題があると思われる。

詳細はFDA報告で。 

Arc中のMLC動作不良

2008年06月09日 | Adverse event
第14号

U.S. Food and Drug Administration.: Adverse Event Report: BrainLAB M3 (Micro-multileaf collimator) Radiotherapy Equipment, 2006

 2006年1月5日に報告された定位放射線治療装置に装着するmicro-multileaf collimator M3のコリメータ情報伝達ミスの報告です。Conformal arc治療中にガントリー回転に伴うMLCの移動が見られず、最後の0.1度までstart時の形状を保持していたというもの。
 結果的には計画通りには照射されなかったものの、病院内部の調査によると照射された線量は処方変動内であり、臨床上の範囲内であったと報告しています。
 本インシデントは4DワークステーションとMLCコントローラ間のソフトウェアの不備が原因と特定されたようです。

 治療前にQAを実施し、機器が正常動作することを確認することの重要性が最近特に言われていますが、本内容もしっかりとしたQAがなされていれば防げたものだと思われます。

詳細はFDA報告で。