放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

DMLCのQA

2008年11月28日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第50号

Chen-Shou Chui, et al.: Testing of dynamic multileaf collimation, Med Phys, 23, 1996

IMRTのフィールドではターゲットへ均一な照射を保ちつつ、決定臓器の線量を低下させることができる。方法は種々提案されているが、dynamic MLCを使用したIMRTではビーム中の適切なリーフのコントロールにより、さまざまな強度の分布を作成することができるのみではなく、フィールド毎部屋に入る必要もなく、照射に有する時間を大幅に削減することができる。
しかし、あるセグメントから次までリーフが動く際の加速および減速、およびリーフの位置正確性は照射された強度分布に好ましくないアーチファクトを引き起こすかもしれないため、テスト方法の考案は重要である。
本論分では、これらのdynamic MLCの機械的状況を調査するために5種類のテストをデザインし、下記の内容をより詳しく調べている。
1. リーフスピードの安定性
2. リーフ移動と垂直の方向の線量プロファイルにおける側方不平衡の効果
3. リーフの加速および減速の効果
4. 位置の正確性とリーフ端の効果
5. QAの基礎となる単純なテストパターンの作成

リーフスピードの安定性
0.14cm/MU(最低)から1.0cm/MU(最高)移動速度のMLCにて速度を9種類選択し、同スピードにて対抗するMLCを動かし、最終的に作成される線量分布を得る。スピードの差異が認められれば線量分布に不備が見られるはずである。本論文ではわずかな線量の差(±1%)は見られたものの、これはフィルム測定に起因するものであると帰結している。

リーフ移動と垂直の方向の線量プロファイルにおける側方不平衡の効果
リーフスピードの安定性にて評価されるように、各々のリーフ幅内の強度は均一と想定される。しかし、リーフの移動方向に垂直な方向では線量プロファイルが均一となることはなく、ステップ様に線量分布が描かれる。ここではリーフスピードの安定性にて作成したフィルムにおいて、リーフ移動方向の垂直方向に分布を得ることで評価している。二次電子および散乱光子のためにリーフの幅内にも均一な線量の領域は存在しない。

リーフの加速および減速の効果
Dynamic MLCの照射中、リーフは通常セグメントからセグメントまで異なったスピードで動き、目的とする強度の分布を作成する。このテストはリーフスピードの安定性試験にて行うリーフ移動を故意に中断し、再開した場合の線量の差を見ることにより行う。もしも加速およびリーフ減速時にリーフの停止位置が不正確であったりすると、均一な線量のプロファイルは得られない。

位置の正確性とリーフ端の効果
通常の照射の場合、JAW, ブロック、リーフの位置精度の低下は照射野境界の線量不確実性が増すのみであるが、Dynamic MLCでは線量の分布全てに影響が発生する。停止位置の正確性をテストするためにここでは左右のリーフの移動パターンを同一とし、停止のタイムラグを使用して調査している。左から右に動くリーフ試験の場合、左のリーフが規定場所に届かなかったり、右のリーフが規定場所を過ぎたりすると、ホットスポットとして認識され、逆の場合はコールドスポットとして認識される。このホットおよびコールドスポットの幅が位置の不正確性を示す。もしも位置の不正確性が系統だったものでない場合、ホットスポットとコールドスポットが混在するかもしれない。また、ホットスポットはリーフ端からのextra leakageによっても発生する。実際のテストでは異なった場所でリーフを止めることでペアを作成し、種々のポイントにおける位置の正確性を判定している(半値幅)。
結果において4つのペアが示されている。これらは全てホットスポットであり、線量において5%、半値幅において4mmであった。このホットスポットは機械的なキャリブレーションのエラーかリーフ端の効果によって発生する。前者は光照射野の動きによって判定ができ、これよりリーフ端の効果であることが結論付けられた。

QAの基礎となる単純なテストパターンの作成
実際の臨床で行うQAとしては単純かつ短時間で行えることが必須である。このために、テストに必要な特徴としてデジタル化して評価するのではなく、視覚的に検疫でき、また全てのペアを連続的に評価できなくてはならない。この評価のため、位置の正確性とリーフ端の効果試験にて使用した方法を少し変更し、複数のペアを作成するようにプログラミングが行われています。これによりリーフ位置の正確性に問題がない場合は同じ黒化がなされ、なんらかの問題がある場合には視覚的に評価できる。このテストは毎日か、dynamic MLCを使用する日のみ、セラピストによって行うことができ、また重力の効果を考慮したい場合はガントリーを90度傾けて行う(約10分で全て行うことができる)。このフィルムの配置はここでは5cm深に設定している。またあらかじめエラーを故意におこし、黒化の度合い(視覚的検疫が可能か)を調査している。

Dynamic MLCを使用した治療における線量分布の重要な誤差要因として、位置精度やモータの問題に加え、MLC移動の垂直方向のプロファイルや、リーフ端のプロファイルも重要である。


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Dynamic MLCの品質管理はIMRTでは必須である。実際に行う際の参考としたい。

詳細は論文で。


郵送用IMRT線量検証ファントムの作成

2008年08月11日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第34号

Youngyih Han, et al.: Dosimetry in an IMRT phantom designed for a remote monitoring program, Med Phys, 35, 2008

IMRTの結果をclinical trial等で比較する際、その強度変調された処方を各施設で正確に実施する必要性があります。しかし、各々の施設で有する装置や環境が異なるため、施設間で照射の正確性に差がないことを確認することが重要です。本論文では韓国食料医薬品局(KFDA)がIMRTの質を調査するための頭頸部ファントムを作成し、その線量測定システムの妥当性を調査したものです。

 作成されたファントムは頭頸部治療を模擬して直径17cm、高さが25cm、PMMAで作成されています。上記ファントム(cylinder)にはTLDと小容積電離箱が設置できる4つのROI(ターゲット、OARとして唾液腺2カ所、脊髄1カ所)、空気の穴(気管を模擬)、骨組織(テフロン)も作成されています。この空気の穴と骨組織は均一ファントムでの測定を可能とするため、均一物質と入れ替えられるようになっています。また、フィルムも挟めるようになっており、線量分布の評価も可能です。

 線量測定は上記の電離箱(0.03cc)、TLDを用いて4つのプランを測定しています。また、同プランにおいてモンテカルロ(BEAMnrc, DOSXYZnrc6.0)も評価しています。4つのプランは以下です。
1. 均一ファントム使用。AP方向の照射。照射野20cm X 20cm。SAD.100cm
2. 不均一ファントム使用。AP方向の照射。照射野20cm X 20cm。SAD.100cm
3. 均一ファントム使用。AP, RPO, LPO方向の照射。照射野10cm X 10cm SAD.100cm
4. 均一ファントム使用。7 field IMRT。SAD.100cm
不確かさを減少させるために、TLDの測定は16回の測定を4日間で、電離箱の測定は3回測定を1日で行っている。

結果
上記1-3のプランにおいて、モンテカルロ、治療計画、測定は±2%以内であった。電離箱の値は常にモンテカルロの値よりも低い値となり、TLDの値は治療計画よりも大、またTLDの値は電離箱の値よりも2%-3%大きい。不均一による測定線量の不確かさは増加しない。
IMRTのプランにおいて、TLDの値は電離箱の値に2%程度の乖離、治療計画と電離箱の値は3%以内で一致している。しかしOARは線量の勾配がきつい部分が多いため、測定結果に5-7%の差が生じている。
電離箱値の標準偏差はかなり小さいが、TLD値は大きい。
ガフクロミックフィルムでのγ評価は良好。しかし、EBTフィルムでは処方線量(100%)領域および低線量(-30%)領域にノイズが認められた。

この結果は単純なものであり、またターゲットやOARのポイント線量を確立させるため、今後韓国では数施設でのpilot studyが開始されると記載されている。

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IMRTの精度確保において、同一のファントムを用いてプランニングを行い、systematic errorを把握する試みは、特にclinical trial等の場合に有用であると考えられる。

詳細は論文で。

IMRT検証:線量許容値の決定方法

2008年08月10日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第33号

Parminder S. Basran, et al.: An analysis of tolerance levels in IMRT quality assurance procedures, Med Phys, 35, 2008

IMRTにおけるQAガイドラインの思想および方法論はAAPMよりレポートとして報告されています。このIMRTにおける独立したMUの計算として、各々のセグメント毎にチェックをすることは現実的に困難であるため、歴史的に電離箱およびフィルムを用いて絶対測定および線量分布の検証がなされてきました。ICRUのレポート24では線量計算の精度を5%と定めており、IMRTのプランが現実的に照射可能であるならば本規定値は考慮されるべきです。しかし、実際にはより優れたアルゴリズムの開発、より複雑なフルエンスパターンにともない、高線量および傾斜の少ない領域において2%-3%、高線量および急な傾斜の領域において4%程度の値が可能となってきています。結果的により少ない許容値が適用されるようになってきていますが、国際的なstandardとなりうる指標は存在せず、また上記のようなわずかな値を採用する根拠も十分に記載されていない状況にあります。ゆえに本論文は許容値を提案する上での状況を報告することにあります。
筆者が目的としているのは下記です。
1. 2つの異なるIMRT-QAプロセスの結果の解析(独立したMU計算および2次元ダイオードアレイの測定)
2. IMRT-QAとして実施された異なる方法論間の関係が得られるか。
3. より効果的なIMRT-QAプロセスが可能かどうかを判定するためのdecision tree。
これらの目的はIMRTプランニング、独立したMU計算、ダイオードアレイ測定によって記録される乖離の統計的評価(片側および両側t検定、Fisher’s F検定)によって行われています。
(本報告では使用すべき許容値を報告するのではなく、IMRT-QA結果の解析が実際の臨床現場において適切な許容値を選択する際に役立つよう、ガイドラインを提供することを目的としている)

解析は過去3ヶ月のデータであり、前立腺、頭頚部、肺に区分し、全MU値、光子ビーム、処方線量値、fraction毎の計画線量が記録された。

本報告はカナダからのものですが、非常に興味深いIMRT-QA decision treeが示されています(論文後半において改定されます)。
1. 全てのIMRTプランは、まず別の独立したMU計算(IMSURE)にてチェック。
2. もし治療部位が前立腺の場合、上記のMU計算による結果の乖離が個々のビームにおいて5%以内、全てのビームの合算で3%以内の場合、測定は行わずQAは終了(ただし、1回の処方線量が3Gyを超える場合は除く)。
3. 上記許容値が超えた場合、および前立腺以外の場合はダイオードアレイによる2次元測定行う。
4. 各々のビームをsolid phantom(30 x 30 x 30cm)に置き換え、ガントリ角度およびコリメータ角度を0とし、アイソセンターを10cm深(3 x 3mmのresolution)に設定。この10cm深における平面の線量分布をダイオードアレイ(MapCheck)と比較。γ indexのCriteriaは3%-3mm、10%以下の線量はカット。個々および全てのビームの線量の乖離、γ値、(MapCheckの校正は測定前に22cm X 22cmの照射野を用いてなされている)
 
結果は以下である。
1. 独立したMU計算(IMSURE)とTPSの比較。前立腺および頭頚部照射ビームにおいて個々および全てのビーム線量の乖離は統計的に有意でない(治療部位による差はない)。しかし、肺は上記2種類に比較し有意な差が見られる。(Fisher’s F test)
2. ダイオードアレイとTPSの比較。全ての測定結果(乖離)は測定誤差内に存在し、非常に良好な結果となっている。γ分析におけるγ値の平均は前立腺と頭頚部、前立腺と肺、頭頚部と肺で有意差が認められた(片側t検定)。(IMRTの複雑さに起因)
3. ダイオードアレイと独立計算ソフト(IMSURE)の比較。総線量および個々のビームの線量の乖離に関連性はない。しかし、個々のビームにおいて25%の乖離も観察されている。これは小さな線量投与の場合に生じている。これを除けば10%程度である。
上記データを利用した統計的解析(95%信頼区間)から導かれた改定許容値は以下である。
独立した線量計算:total. 3%, Beam. 5%
ダイオードアレイによる測定(頭頚部以外) total. 2%, Beam. 3%, Gamma 95%
ダイオードアレイによる測定(頭頚部以外) total. 2%, Beam. 3%, Gamma 88%

結論および勧告は以下である。
1. MUの妥当性確認における総線量の乖離は照射部位に依存しない。
2. 独立したMUの検証結果の良否はダイオードアレイの測定結果の良否と関与しない。
3. 個々のビームのMU計算による検証を行う際乖離値が大きくなることがあるが、新しい線量ポイントを再選択することで少々利益がある。
4. 照射するに安全と考えられるIMRTプランのQA結果の統計的解析は、IMRT-QAにおける洗練された許容値の設定に用いることができる。

 個々の施設は自身のQAプロセス、使用する装置や必要度に応じて許容値を作成すべきである。QAテストの通過許容値はIMRTの計画が安全であることを暗に示すものではなく、責任ある認定医学物理士によってIMRTの計画が安全かどうかは判断される必要がある。

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筆者も記載しているように、IMRTの許容値の選択は使用している機器や必要性が異なるために各施設にて行うべきである。IMRTの許容値の設定方法が示されたことにより、現場でのcriteriaの設定が容易となった。設定の際に参考としたい。

詳細は論文で。



 




3次元IMRT線量検証PRESAGEの紹介

2008年07月28日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第29号

Mark Oldham, et al.: An investigation of the accuracy of an IMRT dose distribution using two- and three-dimensional dosimetry techniques, Med Phys, 35, 2008

複雑な線量分布を作成することのできるIMRTは線量分布および吸収線量の検証が必須である。この線量検証は分布測定のためにフィルムやダイオード線量計を用いて2次元的に行われ、吸収線量の評価には極小照射野用電離箱を使用して測定がなされている。3次元的な線量分布の評価が可能であれば、その評価を行うことがより好ましいが2次元検出器を用いて3次元評価を行うのは現実的には困難である。

 従来3次元検出器といえば3D gelが使用されてきた。これは酸素に感度があり、特別な配慮を必要とする。そこで、最近開発されたPRESAGEはsolid polyurethane plasticで作成され、外部コンテナを必要としないことから使用が容易であり、放射線により緑色に変色することを利用している。本論分はこのPRESAGEの変色をOptical CT(He-Neレーザ)にてread outし、IMRTの線量検証を行うことについて記載した論文である。

 使用されたPRESAGEファントムは16cm直径、11cm高であり、実効原子番号が8.3、密度が1.07g/cm^3、CT値は200以下である。ファントムのread outは前述のOptical CTを使用し、1度ずつデータを収集、4時間(単一のスライスで7min)かけて全scanを行う。

 ファントムの使用方法は通常の患者の治療時と同様であり、PRESAGEを治療計画前にCT撮影し、治療計画を行う。このCTによる線量は1cGy以下であり実際の測定に問題ないことが過去の検討にて得られている。本論文ではこのPRESAGEファントムを4つ積み重ね、その間にガフクロミックフィルムEBT(3枚)を挟み、その3枚の位置で怒った顔、普通の顔、笑った顔のIMRT field(11 field, 6MV, PTV: 6Gy)をEclipse(PBC)にて作成し、その線量評価をしている。また、EBTおよびPRESAGEの両方について、線量評価の際に照射前後に計測を行い線量による変化を得ている。

 結果は以下である。
1. 光CTによるレーザの反射によるエッジアーチファクトが発生するため、PRESAGEによる検討においてファントムの外側3mmの評価は困難である(利用可能な線量計の領域は96%)。
2. EBTによる評価において、ノイズ領域を除けば概ね治療計画との一致が見られる。
3. PRESAGEによる利点は3D線量分布を作成することができる点であり、これによりSagital viewおよび計測によるDVHの評価が可能となっている。しかし、DVHにおいて線量20%以下の領域は上記エッジアーチファクトにより線量の一致が見られない。
4. Gamma indexによるpass rate評価として
PRESAGEとEclipseの3次元評価:γ<1.0 = 92% (外側3mmを除けは96.0%)1.0の領域はPRESAGEの外側3mmの領域およびビルドアップ領域に集中している。これはPRESAGEの線量描出能力およびTPSのビルドアップのモデリングの不正確さが関係している。

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複雑なIMRTの線量の検証は可能であれば3次元評価が望まれる。まだまだ使用するに当たってlimitationがあることは筆者も認めているが、使用が容易、安価での提供、と状況が整えば国内での臨床現場でも登場するかもしれない。AAPM2008では今年も発表されている。

詳細は論文で。

IMRTのフルエンスの滑らかさと線量計算精度の比較

2008年07月21日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第26号

Nicolini Giorgia, et al.: What is an acceptably smoothed fluence? Dosimetric and delivery consideration for dynamic sliding window IMRT, Radiat Oncol, 23, 2007

IMRTはOARへの照射を可能な限り低減しつつ、PTVに最適線量を投与する方法です。通常はinverse planningが用いられ、いわばコンピュータに最適な照射方法を考えてもらいます。しかし、強度変調を強くすればするほど複雑な線量分布は作成できますが、それが照射時に再現されるかどうかは別問題です。本論文では、3つのIMRTのケースを想定し、Webbにより提案されたMI (modulation index)と、fluence smoothing parameter (s25, s50, s80: X, Yは同値)、線量計算アルゴリズム(Eclipse: AAA or PBC)、線量計算時の空間分解能(2.5mm or 5.0mm)、照射時の特徴を調べています。

照射の信頼性は照射前の検証作業にて判定しています。ここではPortal dosimetry (PV-aS500)を使用して水dmaxにおける吸収線量を把握し、TPSから得られる値と比較しています。評価の詳細はGamma criteria: Δ3%-Δ3mm, JAWによって規定される範囲において、γ>1.0となる割合を算出。この値が5%以内となることを目標とし、5-10%で原因精査、10%以上でre-planningというQAを実行しています。

ところで、より多くのMUを必要とするかなり複雑な強度変調をした場合、organ motionや生物学的な問題が関係し、それが結果として二次発癌の要因ともなり得ると論文中にも記載があります。ゆえに“それなりの”強度変調を実施するために、MIがよき指標となり、またMIの閾値<19が有効と報告しています。 Smoothing parameterの増加は平均的なSliding window幅の増加につながり、結果的にMIを減少させ、γ>1.0の割合を減少させています。また、本論文中の検討では、smoothing parameterを増加させてもPTV, OARのDVHにほとんど影響しないことが示されており、本論文ではs80, AAA, 2.5mm gridの組み合わせが最適であると報告されています。

強度を変調させてOARの線量をなるべく低減し、かつPTVには十分な線量を投与するIMRTは非常に魅力的な照射方法であるといえます。しかし一方で計算アルゴリズムが複雑であり、それに付随するパラメータが種々あることからその選択は重要であり、本論文の様な検討は確認の価値があるかと思います。

詳細は論文で。

ダイオード線量計を用いたIG-IMRTファントムの開発

2008年07月09日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第22号

Daniel Letourneau, et al.: Integral test phantom for dosimetric quality assurance of image guided and intensity modulated stereotactic radiotherapy, Med Phys, 34, 2007

CBCTが可能なLINACにおいて画像誘導システム+IMRTのQAを行うために、画像誘導パフォーマンスおよび線量評価のファントムを開発したという趣旨の論文です。

CBCTを用いた画像誘導には下記の不確かさが伴います。
1. image quality
2. 治療計画用CTとCBCTの重ね合わせの精度
3. 治療装置およびkVCTのアイソセンターの校正精度
4. カウチの機械精度

このファントムはCatPhanに取り付けられるように加工されており、10cm直径のディスクに11個のダイオード(nタイプ)を埋め込んでいます。この11個のダイオードの短期間のレスポンス再現性は6MV 58cGy – 95cGyの間において、0.1%から0.3%、1ヶ月を超えるレスポンス再現性は0.7%から1%、長期間での再現性は1.1%であると報告されています(LINAC装置の変動も含む)。また、1MUから500MUでの直線性も良好であり、360度の方向依存性も±1%以内であるとされています。

IMRT planでの検討において、MLC errorが無い状態では97.1%±1.5%(7ビーム×11ダイオード、5%以下の閾値を採用して68測定部位)が3%-2mmのcriteriaを通過、さらに厳しい3%-1mmにおいては82.4%±1.5%と少々低減したと報告しています。ここでのfail pointはおおむね半影部分に存在していたとも説明しています。

1mmのMLCエラーを起こした場合、3%-1mmのcriteriaにおいて、通過率は62.3%(-1mm MLC error)、59.8%(1mm error)と激減し、統計的(t-test, p<0.01)にも顕著であると報告しています。
しかし、筆者も認めているようにこのファントムは少々小さめであり、一般的なIMRT planには適用できないため、次のファントムの構成が始まっていると示されています。ここでは水等価のdiodeケーブルを使用して、100個のdiodeを使用することが明記されていますが、詳細は更なる研究が待たれます。

IMRTの線量分布におけるGamma criteriaはよく3%-3mmが使用されます。しかし、画像誘導装置の性能が1-2mmということを考えると誘導装置が正確に働いているとしてもさらにcriteriaの調整が必要そうです。本来、IMRTに画像誘導装置を使用する場合、本論分のように画像誘導装置およびIMRT線量検証は同時になされるべきかもしれません。

詳細は論文で。



IMRT MatriXXの臨床線量評価

2008年06月05日 | QA for IMRT
第13号

J Herzen, et al.: Dosimetric evaluation of a 2D pixel ionization chamber for implementation in clinical routine, Phys. Med Biol, 52, 2007

臨床現場でQAするときに使用する2次元電離箱アレイ(IMRT MatriXX)の線量評価です。一般的に治療計画によって計算されたIMRTの3次元線量分布を線量測定として評価、検証することは不可欠であり、主にこれらの行為は治療計画によって計算される2次元線量分布と測定データを比較することによって行われます。従来から行われてきたフィルムは時間が非常にかかるため、これらの2D電離箱は大きな期待が寄せられています。

トリノ大学によってデザインされたIMRT MatriXXは、1020個の平行平板型電離箱から成っており、高さ0.55cm, 直径0.4cm、線量計中央間距離0.76cm、有感体積0.07ccmで最大24cm x 24cmのfieldを測定することができます。また、2つのカウンターが設置されており、dead timeなしで測定することができます。最小読取時間は20msであり、ダイナミック照射の検証にも使用できると解説されています。

実効測定点の測定には、PDDが用いられています。Solid Phantomおよび0.6cc電離箱を使用してPDDを取得し、さらにMatriXXを用いて同様の測定を行うことによって実効測定点を得ており、3.6mm±0.1mmという値が導かれています。

線量、エネルギー依存性の確認として、10cm x 10cmのfieldかつ4MV, 6MV, 15MVのエネルギーにて実験が行われており、全てのエネルギーにおいて線量の直線性、エネルギー非依存性が確認されています。

ウォームアップ時間調査として、100MU, 10cm x 10cm field size, 6MV X線を用いて20回照射し、線量計の振る舞いが調査されています(製造メーカからは電源ONしてから15分以降に照射することが推奨されています)。電源をOFFしてしまえば再度照射してウォームアップしなくてはならないが、電源を切らなければ測定値は安定していると報告されています。ここからMatriXXが安定化するためには10Gy程度のpre-irradiationが必要であろうと記載されています。

MatirXX内電離箱1つの側方レスポンス関数および空間分解能
タングステンで作成された細いスリット(1mm)を利用してLSF(line-spread function)を取得し、側方レスポンスを評価しています。ここではdiagonal方向、cross plane方向各々で値がほとんど変わらないことが示されています。

XiOにて計算された線量分布とMatriXX測定値との比較
上側に5cm, 下側に10cmのsolid waterにてMatriXXを挟み込み、CTを撮影し、そのCTデータに基づき、20 x 20, 15 x 15, 10 x 10, 5 x 5, 4 x 4, 3 x 3, 2 x 2, 1 x 1cm2、各々のフィールドで50MU照射するプランを作成し、ピラミッド型の線量分布で評価しています。測定値および補正された計算プロファイルは最大偏差1%であり非常に良い一致を示しています。
また、IMRTの7つのフィールドでも検証されていますが、ここではガントリー角度0度にて行われています。補正されたプロファイルにおいて、最大の偏差は傾斜のきつい領域において8.4%、傾斜の少ない領域において4.5%であったと報告されています(Gamma indexでの評価はなし)。

 本報告には含まれていないものの、呼吸同期照射の際にはスタートアップの性能評価が不可欠であり、このIMRT MatriXXが有効である可能性が示されています。

MatriXXのような2D 検出器はフィルムでの検証作業の一部に置き換わりつつあります。線量計自体が大きいため自由性は少ないものの、時間浪費の観点から非常に魅力的な線量計であり今後の普及が期待されます。

詳細は論文で。