放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

定位放射線治療QAのためのCBCT

2008年10月27日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第45号

Jenghwa Chang, et al.: Accuracy and feasibility of cone-beam computed tomography for stereotactic radiosurgery setup, Med Phys, 34, 2007

定位放射線治療における患者setupは、一般的に定位用フレームにて行われている。このsetupや治療における検証は、コントラストの低いportal image、治療部位が小さいこと等から従来困難であった。そこで最近使用可能となったCBCTを使用することによって、高精度定位放射線治療のsetup精度向上の可能性がある。
本研究では最近使用可能となったLINACに搭載されたCBCTを用いて、radiosurgeryのsetupの検証を行っている。

この研究にて使用されているCBCT装置はVarian社のOBIである。このOBIはactive servo feedback機能を有し、ガントリーの角度にかかわらず目的とするアームの位置を自動補正する。またLINACは2100EX、カウチにはRadionics製を用いている。

定位放射線治療用のフレームはBRWである。2mmの複数の丸マーカをランド頭部ファントムに埋め込み、BRWフレームに装着させ、CT(PQ 5000)にて撮影している。またこのファントムには直径9mmの2つのpoleがついており、このpoleを囲むことでも幾何学的中心を得ている。

LINAC室内にてBRWフレームの位置を合わせるためにレーザを使用し、その後CBCTを撮影している。BRWフレームのマーカを全て撮像範囲に含めるため、X線管-FPD検出器間距離を150cmとし、FPDを15.5cmシフトさせている。ここで360deg収集を行い、half-fan画像再構成アルゴリズム(Feldkamp FBP)にて画像を作成している。

その後撮影したCTもしくはCBCTのデータはBrainSCANにてBRWの座標に置き換えられている。またTPSにてマーカ間の距離および角度を測定することにより、CTとCBCTの幾何学的精度の確認を行い、その後画像をfusionさせ、その正確性を検証している。

最後にBRWフレームにて位置合わせした後にCBCTを撮像し、3軸の差を検出している。ここではカウチの正確性(1mm程度)の問題からtranslationはしていない。また、その同様の3軸の差を検出するためにX線撮影も行っている(マーカがよく見えるため)。

結果は以下です。
1. CBCTの画像に有意な歪みは見られない。
2. CTおよびCBCTから得られたBRWのlocalizingに差はない。
3. CTおよびCBCTのデータによるimage fusionは正確である。
4. CBCTにて得られたsetup errorと2方向のX線撮影にて得られたsetup errorは1.28mm±0.61mm(1SD)であり、この理由はCBCTのsliceが2mmであることと記載されている。

筆者は将来的に、レーザを用いてsetupする従来の方法は、CBCTを用いた方法に置き換わる可能性を指摘している。これにより、quality assuranceがOBI systemとLINACのアイソセンターの一致のみを見ていればよいこととなり、単純化されると記している。またほとんどの患者において治療を通じてフレームと頭蓋骨はずれないが、過去には5mmのずれが報告されたこともあり、ここでもCBCTではフレーム内のシフトも検出できるため威力を発揮できる。Fusionが高性能にて行われた経緯から、将来的にはフレームを用いることなくマスクのみで治療も出来るようになると思われる。

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CBCTの臨床での威力は容易に想像できるが、その幾何学的精度の検証や応用評価となれば話は別である。CBCTのQAを最適化し、臨床での治療効果を最大限発揮できるようにするにはこの種の論文は重要であると思われる。

詳細は論文で。



XVIおよびOBIにおけるCBCT線質、線量評価

2008年10月15日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第44号

William Y Song, et al.: A dose comparison study between XVI® and OBI® CBCT systems, Med Phys, 35, 2008

Elekta社のX-ray Volumetric Imager、Varian社のOn-Board ImagerのCBCT線量比較における報告です。
CBCTは患者の設定や治療効果の判定等、幅広く使われてきています。特にIMRTでは再現性良く位置合わせができていることは治療効果にも影響してきます。

本報告ではCBCT時のアクリルファントム中心線量と全mAs値との関係を詳細に調べています。

CBCTが撮影可能な2つの装置ですが、特性や使用時のフィルタ等は異なります。たとえば、XVIはsourceが90degについていますが、OBIは270degについています。

線量は水の吸収線量として、アクリルファントム中に電離箱を設置して測定しています。空気カーマから水の吸収線量を得ているため、質量エネルギー吸収係数の比を使用しています。ここでは半価層を種々の条件下で測定し、吸収係数の比を得ています。

CTの線量として最もよく使用されているのはCTDIです。これは比較的電離容積の長い(100mm)電離箱を使用して得るものですが、CBCTのように広いビームだと測定することはまず不可能です。そこで筆者は0.6ccのfarmer typeの線量計を使用してCTDIを測定しています。CBCTは収集の特性上、必ずしも360度回転が必要なわけではなく、中心軸上の線量分布が均一となるわけではないため、CTDIwの理念を使用して評価しています。
筆者のCBCTのCTDIは
CBCTDIw = (1/3)D central + (2/3)D peripheral
として測定、評価しています。

結果が非常にわかりやすくまとめられていますが、注目すべきはXVIとOBIの線量の差です。同じ照射条件(画像の質)にして評価しているわけではないので、一概に比較することは困難だと筆者も認めていますが、XVIの線量が低く報告されています。
XVIとOBIの実効エネルギー(アルミ半価層)の比較においても、XVIは高いエネルギーを使用していることが明らかです。

測定の繰り返しによる値の不確かさを1σとして表記していますが、この内容に関しても非常にわかりやすい記載がされています。測定時の1σが全体の不確かさを示すわけではなく、水の吸収線量をアクリル中で測定していること、校正の方法が水を基準としていることなど、最終的な不確かさは5%程度になると表記しています。

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CBCTの線量評価は使用する限り重要である。評価の際、測定における不確かさの扱い方は非常にスマートであり、非常に参考になると思われる。

詳細は論文で。


水、複雑な照射野、不均質時のAAAの線量評価

2008年10月15日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第43号

Christopher M. Bragg, et al.: Dosimetric verification of the anisotropic analytical algoroithm for radiotherapy treatment planning, Radiother Oncol, 81, 2006

放射線治療における線量投与は高精度であることが望まれ、そのためにはsimulationからplanning、照射までの不確かさを可能な限り低減する必要がある。ゆえに各々のプロセスにおける潜在的なエラーの理解と知識は不可欠である。
治療線量が増加し、複雑性が増すなかで線量計算アルゴリズムの正確性は重要課題である。
歴史的にみても不均一物質の線量計算は電子の輸送コードの困難さゆえに問題視されてきた。

Eclipseに搭載されたAAAは比較的最近開発された治療計算アルゴリズムである。
本報告ではこのアルゴリズムのパフォーマンスを評価するために、水中における簡単なビームジオメトリ、複雑な状況において測定を行っている。

装置: LINAC. Varian 2100C/D, 6 / 10MV
Eclipse (version 7.5.18 / 2.5mm grid)
比較アルゴリズム. PBC-eTAR

Simple geometryとして行っているのは、正方形、矩形、MLC作成照射野、SSD変更した場合、EDWである。
ここでPDDおよびOCRを測定している。

Complex geometryとして行っているのは、asymmetric field (Half field等)、斜入射、後方散乱体の無い場合、接線照射である。

最後に不均質体における評価である。不均質においてはコルクやstyrofoam、骨等価物質にて構成し、PDDを評価している。また、胸部ファントムを用いて、肺や骨髄における線量評価も行っている。

結果は以下である。
1. 正方形および矩形照射野の計算線量に対するPDD測定値の乖離は1.5%以内である(ビルドアップ以下、6MV, 10MV)
2. 正方形照射野のビルドアップ領域、PDDにおいてDistance to agreementは6MVで1.1mm, 10MVで1.6mmであった。同様に矩形照射野であれば2mm以内であった。
3. 検討した全ての照射野サイズにおいて、平均的な乖離はビルドアップ以下において0.2%±0.2%(1SD)、ビルドアップ領域においては0.2±2.1%(平均的なdistance to agreementは0.3±0.7mm)
4. 低線量(CAXの7%以下)領域におけるOCRの最大乖離は2%、30x30cm,10MVの照射野においては約2.5%過少評価(AAAの結果は、照射野外において過少評価の傾向)
5. 高線量(CAXの90%以上)領域におけるOCRの相違は2%より良い。最大の相違は10MV, 40cm x 40cmの照射野において6.7%の過少評価。
6. SSDを90cmや120cmに変更しても差異はない
7. MLC作成照射野においても差異は変わらない
8. Enhanced dynamic wedgeは大きな乖離が存在する(wedgeの高線量部分)
9. Half beamのOCRにおいて、計算と測定の乖離は大部分で2%以内か、2mm以内である。
10. Styrofoam(非常に低吸収)をSolid waterにて挟んだジオメトリにおいては、PBC-eTARよりもAAAがPDDの予想は良い
11. ランドファントムの肺の線量はPBCよりもAAAが正確

線量計算アルゴリズムについては多々報告されており、それらの結果からある程度のcriteriaのコンセンサスが得られると記載されている。そこでは、
・ Low dose gradient regionにおいて2-3%
・ High dose gradient regionにおいて2-3mm
と記されている。
UKにおけるIPEM report 81では
理想として、2%-2mm
受け入れられるものとして、3%-3mm
Van Dykは複雑な状況下においては、単純なビームかつ不均質物質の状況として3%
不均質物質を含んだ複雑な状況として4%-4mmを提案している。

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多くの論文がAAAを支持しているが、各施設で使用前の検証は不可欠である。特徴を得るうえでも論文を参考としたい。

詳細は論文で。