仕事の方も大分落ち着いたので、久しぶりに集落の散策に出かけてきた。
俺自身としては何よりも奥会津の集落と、そこに住んでいる方々の『自然と向き合って生きる姿勢。

』に惹かれて来ただけに、これこそが本題なのである。

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小高い丘の上の行き止まりにある集落…この集落は10軒に満たない古民家と蔵・畑・村社にて構成されており、数年前にも訪れた事がある。
いろいろな集落の中で、最も保守的な視線を感じた集落であった。
「水仙の花

を育てるのが生きがいだ。」と言っていた当時92歳位のお婆ちゃんの姿を思い出していた。

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狭い小道に車を停めて、カメラを持ち外に出たところ、お婆ちゃんが出てきた…挨拶すると、「おーおー、百姓やりに来たのか…大変だろう、お茶でも飲んでけし。」
ご好意に甘え、お宅

にお邪魔した…趣のある木造の畳の部屋、その端には仏壇とポット、炬燵がおいてある。
「炬燵の中に足でも入れて暖まれ。」そう言いながら、もうお婆ちゃんは茶碗にお茶を注ぎ、お菓子とカボチャとさつま揚げをテーブルに並べていた。
10杯近くのお茶

をご馳走になりながら、いろいろな話をした…炬燵の向かいの部屋に飾られているご主人の写真を指さしながら、
「おらは、顔も名前も全く知らなかった人と結婚したんだよ…昔はそういう事も普通だったんだ。
今と違って、昔の道は舗装なんてされてねえし狭い坂道には石がゴロゴロしてた…登る時は足が下駄から滑るし、下る時は紐が指の隙間に食い込んで痛いったりゃありゃしねえだ。(笑)」
「主人は退職してから、『これでやっと好きなベコ(牛)が飼えるだ。』と喜んで、今そこさ畑あるところに牛小屋を建てただが、飯も食わさにゃならんで大変だった…オラは黙って付いていくしかなかった。
主人が死んで、もう20年になる…オラも今年で84歳だ、本当に時間が経つのは早いの。(笑)」
「あんつあ(長兄)は大工だったが戦争で戦死した…たまに、あんつあが夢に出てくるだ、オラがまだ小学生だったころのずっと昔…あんつあが、優しく笑いながらオラを見てるだよ。
おめえが住んでいる集落にもオラのあんつあが居るだ、あんつあからは『顔を見せに来い。』と言われるだが、車もねえし足も疲れるもんでなあ。(笑)
まあ町民タクシー

つ言う便利なものがあるんで、それで行っておるよ…あんつあは酒

が好きでなあ、戻った時はオラも歩き廻ってるだよ。」
「ここは雪が多いだが、それもいいもんだよ…住めば都、皆が本当に親切だし、今はこの集落がオラにとっては一番だ。
でも今、おめえが住んでる集落でオラは20年間育った…育ててくれた集落の事は決して忘れてはいねえだよ。」
俺「今の町があるのは、みなさんが頑張ってきたからです…この素晴らしい町を残し、そして受け継いでゆく事が、次世代の責務であると私は思っております。
今日は突然お邪魔したにもかかわらず、楽しいお話ありがとうございました…ご馳走様でした。」
「またいつでも来てくんつえ、オラたちは皆、退屈で話したくてしょうがねえだ。(笑)…ちょっと待ってろ、今、カブを採ってくるだで…家で食べてくんつえ。」

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集落は地元の方々の『歴史そのもの。』であり、この自然と真摯に向き合いながら農を営む…そこに深みと真実があるのだ。
カブ2本と大根2本、サツマイモをお土産

に頂き帰路につく。