いやいや…厳しい山だったよ、飯豊は。
抽象的に表わすとするならば、飯豊山それ自体は豊富な雪渓から溢れる清々しい冷気と沢、色とりどりの高山植物が咲き誇る美しい緑の稜線。
非の打ちどころのない素晴らしい山だったんだ。
厳しいというのは飯豊本山に至るまでの前衛の山の事で、登りは旧峠道を、下りは登山道を歩いたけれど、
急登と急坂が延々と続き、飯豊本山及びそれに至る稜線よりもはるかにキツかった。(しかもだ、これだけ厳しいのに頂上の看板すらないのである。)
久々のパッキングに失敗して20kg近いザックを担いでいく羽目になった事も影響したかもしれないが、それにしたって…
ザレ場だらけの脆い斜面、ザックの上部に引っ掛かる木の枝…非常に神経を使う事が多く、ザックを捨ててやりたかったほどだ。
テスト場所としては飯豊はキツ過ぎると思った…また時間的にも厳しく、地図の表記通りに行動できないと危険極まる夜の登山道を歩く羽目に陥るだろう。
西会津町の『弥平四郎(やへいしろう)集落の奥にある登山口』より登る事にしたが、集落自体が町の端の奥地にあり、到着までに2時間以上を要した。
午前10時、すでに駐車場は車で溢れていた為、他の車に倣って林道の端に停める…午前10時半に歩き始めた。

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登り始めて20分、西会津町が建てた無料の避難小屋が現れた…外観はお化けが出そうな気がしないでもなかったが、
中に入ってみると、広い土間には石油ストーブが置かれ、その奥には木造の就寝スペースとテーブル、ご丁寧に灰皿と蚊取り線香、そして毛布も常備。
台所の様な場所の蛇口からは水が豊富に流されており、ここで水を拝借…今度は利用させて頂きたいと感じたほど、温もりを感じる素晴らしい小屋であった。

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峠道の中ほどにあった沢…地図に記載されていた水場はここだったのかもしれない、他に水場の気配は無かったからだ。
結局、ホッとした場所はここだけ…前衛の山の頂上まで、厳しい登りが3時間以上続いた。

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前衛の山・『疣岩(いぼいわ)山』の頂上…厳しい山なのに三角点だけしかない、飯豊のキツさを表す象徴的な例か。

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8月8日の天候は芳しくなかったが涼しくはあった…登り出した時間も遅かったし、割り切ってなるべく早くテント場に到着できるよう歩き続けた。
ザレ場の脆い斜面が繰り返される…高度感はそれほどでも無いのだが、滑ったら確実に死ぬというのがイヤな感じ。

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午後3時、三国岳頂上に到着…その名の通り、山形・福島・新潟県境の山。
三国岳避難小屋の小屋番のおじさんは俺のザックを見るなり「縦走でもするのかい?」
「いえ、新しくテントを買ったんでテストも兼ねて持ってきたんです、他にもありますが…まあ、飯豊本山でいいかなと。」
「それにしたって、荷物が多すぎる…今日はここに泊まって(素泊まり)、荷物を置いて飯豊山に登れよ…テストは中止、その方が楽だ。」
俺に気を使ってくれたのは有難かったが、それではここまで持ってきた意味が無くなってしまう…誘いを断り、頂上を去った。

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梯子が現れた…見た感じ必要ない場所、足を岩の隙間に掛けて素手で登る。
先程から書いていますが、本当に怖いのは一見大したことの無い『ザレ場の斜面』なんだ。

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本日のテン場『切合(きりあわせ)』の付近に到着したのは午後5時ごろ、ここまで来ると雪渓が間近に…醸し出される冷気と融けて流れる沢の音。

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安物テント総評…ハンマーで叩くとひん曲がる針金みたいに細いペグ×(最悪)、組み立て中に外れるポール×(最悪)、設営時間10分△(ダメ)、
インナーテントのメッシュの通気性○(良)、フライの保温性○(良)、結露×(ダメ)、前室を含めた居住性○(良)、撤収時間20分×(最悪)。

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値段にしては及第点…ただしペグを買い替える必要がある、付属品では使い物にならん。
翌朝、爽やかなウグイスの声で目が覚める…時刻は午前6時、外は快晴なのに完全な寝坊、それでも何とか6時半にテン場を出発。
飯豊山から戻ってきた頃にはテントの結露も乾いている事だろう、そうすればすぐに撤収して下山できるという訳だ…ちなみに左端のやつが俺の。

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絵に描いた様な青い空、緑の絨毯の様な山肌、白い雪渓…素晴らしき飯豊への道。

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『姥権現(うばごんげん)』~その昔、女人禁制の頃に登った女が石化の罰を受けたと伝わる…前掛けに10円玉を入れ、脱帽して頭を下げた。

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保険的な意味合いでの鎖、精神面に絶大な効果を発揮するが…しつこいかもしれないけど、やっぱりザレの斜面が一番危険だと私は思う。

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飯豊の本山かと思いきや、違うんです。

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先程の山を越えたこの広場、実は頂上小屋のテン場なんです…眺望雄大にして、設営場所も広大で快適、100m下に水場あり。
昨日もう少し頑張って、ここにすれば良かったな。

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厳しい環境の下で花を咲かせる小さな高山植物…この姿を見て、何も感じぬ人間になってはいけないと思う。

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午前9時半過ぎ、頂上小屋に到着…飯豊神社が隣接しており、ここでも10円玉の賽銭、脱帽し頭を下げる。
頂上小屋にて、土産として飯豊本山の登頂記念ピンバッジ(800円)を購入…この時点では、まだ登頂していないが(笑)

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午前10時15分、飯豊山頂に立つ…頂上には石の祠が置いてあり、東日本大震災での犠牲者を供養する札が備えられていた。

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登頂する少し前あたりから、急にガスが発生してきていた…ガスは谷底から次々と湧き出し、ますます酷くなってきた。
コーヒーと軽い食い物をやりながら待つ事、一時間。

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ガスが晴れなきゃ、晴れたところまで行くまでだ。
この時点で欲を出してしまった、今日中に『弥平四郎の登山口』までに下山しなきゃならないのに…テントの撤収もある。

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雪渓の冷気とガスの中を午後1時半頃まで前進、全く晴れる気配無し…ここで時間的に深刻な状態だと認識、引き返す。

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大急ぎで引き返すつもりが、撮影と休憩に興じてしまう自分の性格…ステキな光景を見逃す事は出来ない。

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案の定、テン場に戻ったのは午後4時…ここから登山口の駐車場まで下山に要する時間は5時間半、テントの撤収時間諸々を含めるとおよそ6時間。
ヘッドライトの光を頼りに、ザレ場だらけの斜面を下る気にはどうしてもなれなかった…明日の予備日を使い、引き続きテン泊に決定。
最初からこうなる事が判っていれば、もっと有意義な登山が出来たと思うと、ずさんな計画を後悔する事しきりだった。
眼下に見える喜多方の夜景…すっかり乾いていたテントは快適そのもので、ダウンシュラフのおかげで寒さも感じずに快眠する事が出来た。
8月10日、午前4時55分…つまり、今朝。

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午前6時に出発、一路下山。

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昨日は、右から2番目の山の大きな雪渓付近まで歩いた…今日は良く晴れている、悔しい。

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午前7時45分に三国岳に到着、「ずいぶん荷物がスッキリしたんじゃないの?」小屋番のおじさんが話しかけてきた。
「結局、時間を無駄にしてしまい飯豊山しか登れませんでした、2日もかけて…次からは、ちゃんと計画を立てないと駄目ですね。」
おじさんと周りのお客さんたちは笑ってたが、何となくバツが悪かった。

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午前8時45分、疣岩山の三角点にて…登りは松平峠、下りは上ノ越を歩いたが、キツかったよ。

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午前11時15分に駐車場に下山した時、右足の中指が薬指の爪によって少しえぐれていた…延々と続いた急坂と、荷物の重みのせいだ。
トレイルランニングの連中ほどの軽量化とはいかないまでも、装備は2分の1に減らす工夫が必要かもな。