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ちゅう年マンデーフライデー

辻原登「ジャスミン」を読むと茉莉花茶が飲みたくなる!

「ジャスミン」(辻原登・文春文庫)を読む。

 初めての辻原登。物語作家としての名声高くいずれ何か読まねばと思っていた。金曜日の晩、寝床で読み始めたが、睡魔に勝てずすぐ眠ってしまった。朝七時目が覚めて、再び読み始めると止まらなくなった。一気に読了。

 舞台は神戸と上海、天安門事件に阪神大震災が背景にあり、中国へのODAにからむ利権争い、中国国家公安部の暗躍、失踪しスパイ容疑で中国奥地黄土高原に幽閉された父親探し、戦中の上海を舞台にした中国国内の覇権争いや周恩来の権謀術数、劇中映画と重なる日中の恋、これら盛りだくさんなサイドストーリーが、外資系シンクタンクの辣腕ディレクターの主人公と中国人映画女優との恋と逃避行を軸に展開され、その話の節々を至高のジャスミン茶の馥郁たる香りが包むという贅沢さで、とにかくこれでもかといわんばかりのサービス精神旺盛な冒険小説である。

 芥川賞作家で東海大学の文学部教授という肩書からは想像できなかった面白さだ。そしてこれを読むとおそらく誰もがジャスミン茶を飲みたくなる。早速ネットで「茉莉龍珠 白毫冠軍」などを求めて心を躍らせる始末であったが、近所にそんな高級茶を売る店はないので、とりあえずスーパーでパックのジャスミン茶を購入し、秩父太田屋の絶品本煉羊羹を友に飲む。

 「ロンググッドバイ」がギムレットの小説なら、これはタイトルどおりジャスミン(茉莉花)茶の小説で、甘く切ない味がするのだった。
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