ちゅう年マンデーフライデー

はや拵えでもう1本的手際よさに脱帽の「硫黄島からの手紙」

 いつもほどよい空き加減で特等席を確保できるわが街の映画館で、「硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督)を観る。硫黄島2部作では、こちらの方が評判よく、アカデミー賞作品賞、監督賞などにノミネートされている。きっと戦場のドラマに徹した分かりやすさのためだろう。

「自分の信ずる正義を貫きなさい」という戦死した米兵が握り締めていた母親からの手紙の一文はこの映画のテーマだろうし、「生きて妻子のもとに帰る」という信念に基づいて、決して死なないことを選んだ二宮和也演じる召集兵に発信させたメッセージを、この映画の観客は、兵士たちの母国にいる家族、妻子と同じ立場で受け取ることになる。だから切実なのだ。とりわけ長引くイラク戦争に嫌気のさしているアメリカ人に、主役は日本人だが、戦争における死がいかに無駄死であるかを実感させるに十分な映画だ。

 イーストウッド監督は、短期間で実に手際よくつくったと思われ、それは俳優の少なさ、限定された撮影場所なでうかがえるが、それだけで賞賛に値しながらも、やはり映画としての充実感は、「父親たちの星条旗」に軍配を上げたい。テーマと手法と映像のみごとな親和力が「父親たち~」にはあるからだ。いずれにしろ、これだけの映画を2本もまとめてつくってしまうイーストウッドに拍手だ。こんな芸当のできる映画作家は他にはいまい。それだけで賞賛ものといえるのだった。
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