ルアンパバーンの風景

ラオスの世界遺産『ルアンパバーン』(Luang Phabang)の静かな風景を載せていきます。
実際は暑かった。

(無題)

2004-08-25 | ヤプログ!のログ
収容所の中が一番静謐だった。もう全てを受け入れていた。そこにいる他の捕虜達もみんな、割り切った表情していた。下北沢条と思い出話をしてみても、盛り上がらない。そんなもの。
おなかがすいた。それだけが唯一の恐怖だった。今から寝付けばそのまんま死ねるんじゃないかと思っていたけど、なぜか恐くてできない。自分から死ぬより殺してもらったほうが楽だ。ガスを与えられるまで待っていよう。
そんなある日、ガスパール・アリに上方の窓からロープでさらわれた。
死ぬのを待つだけだったのに、まだなにか一波乱あるのか、と思うと武者震いした。というとかっこいいけど要するにおしっこもらしただけ。
下北沢条は既に餓死していた。僕も他の人たちもただ半睡に夢を見ていた。でもなぜ自分だけまたこうやってさらわれて恐怖を感じなくてはならないんだろう、ずっとそのことだけむかついていた。
食べ物なんて与えるな、水なんていらない。でもそれを目の前にした瞬間に無心にむさぼっていた。すると急に空腹に苦しくなった。食べたのに、苦しい。餓死の寸前の気分の深遠さが懐かしい。もう夢の中で死ぬだけだったのに。アリを睨んでいた。―
なんていう戦争の思い出があったらいいなぁと妄想した。


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