母への合掌

３～４歳の子供を連れた女性がお寺参りをしていた。
信仰に篤い人なのか。
それとも、何か祈らずにはいられないことがあるのか。
ゆっくりと静かに、そして一心に手をあわせておられた。

子供は母親のそんな様子を見ていた。
子供には、仏さまも信仰も、まだ分からないのだろう。
でも、母と同じようにしようと考えている様子だった。

子供は、観音さまと、母親の顔を見比べながら、何を思ったのか、母に向かって手をあわせた。
気がついたお母さんが、「仏さまに手を合わすのよ」と教えていた。

とても微笑ましい風景。
優しい空気に包まれた。

子供の行動に深い意味はなく、偶然のことだったのかもしれない。
でも、子供の目には何かが見え、何かが感じられ、そして母に手を合わせたのではないだろうか。子供にとっては、お母さんが観音さまと同じような存在に見えたのではないか。
そんな気がしてならなかった。

私には子供に優しく教えるお母さんの顔が、観音さまに似て見えた。