自動車損害賠償保障法3条は、「事故のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」としています。
この規定を根拠に、「他人」は、「自動車を運行の用に供する者」に対して損害賠償請求をなしうることになります。
山形地裁平成27年12月22日判決は、自分の自動車を他人に運転させ、助手席に座っていたところ、自損事故で亡くなった人の遺族が、運転手に対し、自動車損害賠償保障法3条に基づく賠償を求めた事例についての判決です。運転した人も、亡くなった人も、いずれも忘年会で酒を飲んでいました。
遺族は、運転した人が「自動車を運行の用に供する者」、亡くなった人が「他人」にあたるとして、自動車損害賠償保障法3条に基づき請求をしたものです。
最高裁の判例上、自動車の所有者は、人に自動車の運転を任せて同乗している場合でも、運転の交代を命じたり、運転につき具体的に指示することができるので、運転手が所有者の指示を守らなかったなどの事情がない限り、所有者は「他人」には当たらないとしています(最高裁昭和57年11月26日判決)。
この点、遺族は、亡くなった人は飲酒の影響で指示をすることができる状況ではなかったので、最高裁判決に照らしても「他人」には当たらないと主張しました。
しかし、山形地裁判決は、亡くなった人が忘年会時にふらつくなどの様子を見せていなかったこと、電話で用件を話したり片付けの指示をするなどしていたことから、一定の判断能力があり、「他人」にはあたらないとして、自動車損害賠償保障法3条は適用されないとしました。
事実関係を前提とするとやむを得ない判決かと思われます。
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弁護士 齋 藤 裕(新潟県弁護士会所属)
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