新潟久紀ブログ版retrospective

仕事観の形成と就職するまで編11「突貫工事の就活」

<仕事観の形成と就職するまで編11>----------------------
●突貫工事の試験勉強。並行して民間就活も抜かりなく。

 大学卒業後の進路について自問自答を重ねた末に行き着いたのが、それまで考えたこともなかった県庁であることに我ながら驚いた。何せ、大学最終年次を目前にする今に至るまでに県職員に関する予備知識が全く無いのだ。インターネットが普及していない時代なので、関係する情報収集は書店がメインになる。
 地方公共団体を目指す人向けのガイドブックを読んで、新潟県庁の一次試験は6月中旬で、申し込み期限も5月末と間近に迫っていることを知り、更に、過去問を見ると、当時は出題範囲が、それこそ義務教育から法律・経済など大学レベルの専門分野まで、無茶苦茶に幅広で深みもあることに驚愕し、「これは時すでに遅しなのではないか…」と呆然としたのだ。
 取り敢えず受験申請はできるが、短期間の付け焼き刃で合格は叶うのか…。あいにく親族や知人に市町村役場も含めて公務員が全くおらず、目処がつかない。情報の少ない当時、バイト先で読んだ雑誌の広告面で、地方公務員上級試験のための参考書と問題集のセットが通販にあることを知り、もはやこれしかないと即座に申し込んだ。
 縦25cm横18㎝のB4サイズで厚さ2cmほどの厚々した冊子が20冊ほど梱包された段ボール箱が届いたのが4月初旬。持ち上げたその重さに、これから1月余りでこれを全部やるのか…と着手前から気が萎える。それでも、大学受験時のスタイルと同様、あれこれの参考図書等に惑わされず、これと決めた材料を徹底して反復学習する決意を固めた。
 ところが、大きな問題があった。その頃の私には、集中して受験勉強できる時間も場所もないのだ。生活費と学費のためのバイトは4年生時にはフルタイムになっていて、夜は安アパート故の騒々しさで就活勉強ができない。困っていると、ゼミの教授が、著書の校正の手伝いを条件に研究室を空き時間に貸してくれた。バイトを終えてからの夜間、研究室のある4階の窓から、海辺沿いに防風林として連なる松林の向こうに漁り火が並び浮かぶ日本海を見渡す静寂の中で、連日集中して作業できたことが本当に有難かった。
 県庁一本で就職を勝負するほど私に度胸があるわけはなく、民間企業も幾つか就活した。前述のとおり、進路は県庁ありきでなく、郷土への貢献という目的意識がベースにあったので、採用試験に臨む対象は比較的容易に浮き彫りにできた。大農業県たる新潟の農業振興に寄与できる農林系の金融機関や、新潟の振興に縁が深い石油系エネルギー産業、広い県土を活かして価値創造できそうなプラントエンジニアリング産業などにトライ…。と言いつつ一方で、当時流行初めで伸び盛りということで関心があったITシステム開発企業を受けてもみた。
 就活に取り組んでみると面白いのは、面接などを段階を進んで行くと、普通は合って話などできそうにない人、民間企業の役員や幹部と、学生ごときでありながら直に面談できるということだ。事務方とはオーソドックスで形式張った態度や会話になりがちだが、偉い人と対峙すると、正にその会社の社風を肌で感じ取れると思う。
 後を着いて行きたくなるような役員が居たり、身を置きたくなるような雰囲気があれば、場合によっては民間企業への就職もアリでは、との思いもあったが、良かったのか悪かったのか、そこまで惚れ込める会社は内定を頂く頃にはその中には見いだせなかった。県職員採用試験は一次の学科試験をなんとかクリアできて、二次の記述試験と面接を控える夏場を迎えていて、いよいよ目指すゴールが一本に収斂してきた。
 ところで、ある公的金融機関の最終面接で、役員から「君は県庁も受験しているらしいね。併願は困るので県庁受験を取り止めないとウチは採らないよ」と言われた。どうやら昨年度、内定を出した自治体との併願者が結果的にのきなみ辞退して辛酸をなめたらしい。県庁が本命だが滑り止めも欲しくて強気だった私は、「地方の県庁ごときを不合格になるようなレベルの職員を御行も欲しくないでしょう。県庁合格しても御行に入りますよ」と啖呵を切ってみせた。役員は苦笑。後日案の定、不合格通知が届いた。現在はありえない事かも知れないが自治体への併願情報を何処で得ていたのか…。個人情報云々で憤るということでなく、「この金融機関恐るべし」と半ば関心したことが忘れられない。

(「仕事観の形成と就職するまで編11」終わり。「仕事観の形成と就職するまで編12「かろうじて県職員」」に続きます。)
☆ツイッターで平日ほぼ毎日の昼休みにつぶやき続けてます。
https://twitter.com/rinosahibea
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「回顧録」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事