新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課15「新潟広域都市圏ビジョン・連携中枢都市構想で議会大もめ」編

●15新潟広域都市圏ビジョン・連携中枢都市構想で議会大もめ

 国の地方政策の推進に適うということで地方交付税が措置されるような制度を上手に活かして自治体が財源を引き込もうとする点では、体力の弱い自治体どおしでの支え合いを促す「定住自立圏制度」の対を成すように、力ある自治体と周辺が連携することで圏域としての成長強化を促す「広域都市圏」という制度がある。
 私が出向して企画財政課長を務めていた燕市の場合は、隣接する県都であり本州日本海側唯一の政令指定都市である新潟市が、正に中枢となって圏域を牽引していく中で、連携する周辺自治体も成長を目指せるという立ち位置になる。
 手厚い交付税措置のインセンティブにより案の定、新潟市から、自市を中枢とする広域圏ビジョンを作成したいので、燕市も連携市として参画して欲しいとの打診が来た。近接する12自治体に全て声掛けしているという。
 企画財政課長としては少し思案した。実は、燕市のように定住自立圏構想制度により交付税措置を受けている自治体は、広域都市圏ビジョンへの参加により別自治体との連携での別の事業項目であっても、交付税措置を新たに受ける対象から除外されるというのだ。酷い言い方をすれば、新潟市など他の自治体の財源獲得のために名前貸しをするのかということ。それにしても広域都市圏連携への参画やビジョン等について議会に説明して了解を得るという面倒だけは掛かってくるのだ。
 それでも、結局は参画という方向で執行部として合意形成を進めることとした。財源的にメリットが無くとも、新潟県人口の3分の1を擁する新潟市との関係はできるだけ厚くして置いた方がよいし、新潟市や広域都市圏の仲間となる他の自治体が汗をかく取組の果実が、我が燕市に利益をもたらす可能性もある。絡んでいて損はないと考えられるのだ。
 大都市新潟市ならではの施設を新潟市民並みの割引で燕市民も使用できるとか、広域的な観光誘客を狙う東京圏向けPR活動などにおいて新潟市が大きく負担する中で割安に参加できるなど、住民利便の向上やわかりやすいメリットもある。そうした点を打ち出しながら説明すれば、難なく市議会の合意が取り付けられると思ったのだが…。
 はたして市議会議員全員による議員協議会において、新潟市からオファーの広域都市圏ビジョンに参画したいとする企画財政課長たる私からの説明に対して、予想外にも、議員達は色めき立ち、大変な質疑の嵐となった。
 財政的なメリットも少ないのに…といった消極的否定論は想定していたのだが、議員達の懸念は、この取組が「新潟市への吸収合併の一里塚」になるのではないかというものだった。平成の大合併という大波をなんとか乗り切って現存する自治体というのは、10年を経てもなお合併の混乱や遺恨が覚めやらないのかもしれない。とにかく更なる合併、しかも相手が新潟市となれば優に想像される吸収合併などは論外で、もうアレルギー反応に近いのだ。私の提案説明に対して否定的質疑により結構な"炎上"騒ぎとなった。
 もともと制度のスキーム的にみて直結することはあり得ない"合併の懸念"について、そうはならないように実務的に取り組みを進めていくなどと、議員達の不安を軽減する姿勢や方針を丁寧に応答していく中で、1時間以上及ぶ質疑の果てに最後には「厳に慎重に新潟市と対応していくこと」などと重鎮議員からの注文付きで理解を得られた形とできた。
 具体の取組が始まって見れば、新潟市がこの財源獲得の最大の狙いとする巨額のビッグプロジェクトであり新潟市の単独事業である新潟駅周辺整備事業の他は、施設割引の相互恩恵だとか、福祉施策の広域的実施だとか、地道な横連携の取組が多く、もとより吸収合併などを招来するような事業は見当たらない。議員達の心配は杞憂なのだ。
 それにしても更なる合併へのアレルギーがあれほどのものであるとは驚いたものだ。一時期は複数県による連邦制の議論などもあったが、広域自治体であり比較的"大県"と言われる新潟県に勤める私には、合併がピンと来るような仕事に関わることが無かった。しかし、平成の大合併を通じて112から30にまでとなった県内市町村においては、合併を通じた傷がいまだ消えてはいないのだ。市町村現場の行政においては地域住民の想いをよく知りそれに配慮した対応が肝要であると思い知らされた。

(「燕市企画財政課15「新潟広域都市圏ビジョン・連携中枢都市構想で議会大もめ」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課16「燕三条工場の祭典(その1)」編」に続きます。)
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