新潟久紀ブログ版retrospective

思い当たる同志たちよ腐るな!? 「降格左遷」で得た想い。

 県職員生活ン十年。歳を取ってカラダもアタマも固くなり、新しい環境には馴染みにくい頃合いになってしまってからの突如の市役所出向に愕然。
 なんとか二年間のお勤めを終えて復帰して暫くして呼び出され、慰労の会合かと思いきや、単に"イジり"のインタビューだった…。

★★★以下はフィクションです★★★

●インタビュアー、○某職員

● 国から都道府県へ、もしくは、県から市町村へ、というと、元職よりも一段以上上位に位置付けられる職位への派遣が一般的です。例えば、国の課長補佐級からは県の部長格へ、県の課長級ならば市の部長格へ、というように。
 そういう意味では、県の課長級職位なら、中堅規模で部長制を布く市への出向ともなれば部長職ということが過去事例でも一般的でした。
 ところが、貴方は、県の課長級職を数年も経た上で、市役所の企画財政課長への出向が言い渡された。当時、知人からは実質的な降格だとか左遷だなどと笑い話のネタにされたそうですが、当事者としてどんなお気持ちででしたか。

○ 内示を聞いたときは愕然としましたね。派遣にあたってのご指摘のような職位的な相場感との格差は、新聞等で公表されてきた過去の派遣履歴から見れば誰もが感じることのできるものでしたから。
 それでも自分としては、公務員という現代の宮仕えを選んだ以上、とりわけ人事に関して不平不満など考えるように驕ってはいけないと若い頃から考えていましたので、ご指名の場所が適任というのであれば、そこでの仕事を自分なりに面白いものにして行こうという思いでした。
 確かに人事通の知人からは、「明らかに降格だよね」「体のいい左遷だよね」などと言われましたが、そもそも私は、30年以上前の新採用のスタートが「企業局」という世間的に見て極めてマイナーな職場であり、「県庁にそんな職場あったの?」「採用試験の成績が悪くて最初から左遷されたの?」とイジられていたので、今回もさほど気にはしませんでしたけどね。
 ただ、自分自身が強く保とうとする意識とは別に、周囲からそう言われることによる、ボディーブローのような無意識化の、知らず知らずの内に効いてくる精神的影響には配慮して欲しいですよね。いずれにしても、私以降の出向者は、周囲から嘲笑されないような格付けにされているようです。…ああそうか!!、何のことはない、単に俺だけが出来が悪かったということか(笑)。

● 若手の登竜門と目されていた「財政課」でも、最初から花形の予算査定担当ではなく2年間を課の内部管理事務を行う総務班に配属されたとか…。やっぱりどこか低く見られていたんですかね(笑)。ただ、その後は査定担当に移り、居なりで管理監督職にまでなったというのは、結構頑張れたということですか。

○ ハードな職場であり、2年程度で転出という者も居る中で、査定担当から窓際監督職まで5年勤め上げましたからね。ただ、あまり負担の多くない職場にいた同期に比べて、昇任が1年遅れたんですよ。これも本人はあまり気にしていないのに周りから指摘されることが重なると、言われているうちに「過酷な職場でこんなに苦労しているのに…」と少し落ち込みましたね。

● さて、"アイスブレイク"のつもりが単なる愚痴聞きになってしまったのでこのくらいにして(笑)、本題の「市役所派遣を通じて思うこと」を聞いていきましょう。
 2年の間、中規模市役所の政策と財政を統括する職に派遣されたわけですけれて、それを通じた所感などについて順次お聞きします。
 ①県の施策の中で、住民や市町村のニーズに沿っていないなど方向が違っているのではないかと感じる取組や業務があれば、その理由等とともに説明してください。
 ②また、その取組等を改善するには、どのような対応をとればよいと考えるか、アイデアがあれば話してください。

○ ①については、市町村レベルからの積上げ論拠の乏しいマクロアプローチによる県計画等の全般だと思います。
 理由は、現場の実動と連動するデータ(ミクロ)による検証や改善の仕組みを伴えないためです。
  例えば、県の未来創造プラン(当時)、人口ビジョン・総合戦略等々です。
 ②について、既存の①のような県計画等については、県計画と管内市町村の関連施策の目標や指標管理を擦り付かせさせる調整業務を、地域振興局に担わせてはどうかと思います。地域機関の存在意義の明確化と施策調整能力の向上に資すると考えます。

● 県の施策の中で、行政改革的な視点でムダ又は非効率と感じる取組や業務があれば、その理由等とともにご教示下さい。

○ 個別の施策というより、施策各々の関係やその全体として、不整合感やまとまり感の無さが感じられます。
 施策(予算案)の企画調整のための組織や人事に論点があるのではないでしょうか。調整責任や判断権限が曖昧な間接部署が増えており、仕上がりとしての施策のまとまり感の無さに繋がっているのだと思うのです。
 また、市販されている職員録を追っていけば誰でも分かることなのですが、それら間接部署において優秀な職員が閉鎖的な人事循環の中で在留し、経験で高めた能力が全庁的な幅広い政策の企画立案や調整、連携など、まとまりある展開に活かされていないようにも見受けられます。
 一方で、私の派遣先では、政策的案件は事業部局(間)調整を行った企画財政部署が首長に責任を持って一括説明して判断を仰ぎ、まとまり感のある施策づくりに極めて効率的で、部局の篤い信任も得られたものです。
 また派遣先では、企画財政や総務の部署において適応力の高い人材も、長期在籍させず大胆に異動させるなど幅広い分野間の異動を停滞無く行い、一方で、不適応者は短期迅速に入れ替えるなどにより、職員全体としての機会均等と潜在力の引出しに努めていると思いました。

● 県の施策の中で、県と市町村の関係や効果の観点から見て特にうまくいっていると感じる取組や業務があれば、その理由等とともにご教示下さい。

○ 土木や農地整備といった公共系施策など国県市町村の役割分担が明確な業務は比較的うまくいっていましたが、地方創生関連など地域間連携含む企画調整力が問われ昨今最も重要視されている業務については、うまくいくいかない以前に関係性すら希薄であったと思います。
 例えば、これも公開されている関係情報などを見れば誰にでも分かると思うのですが、地方創生推進交付金事業については、窓口の県市町村課は政策調整の見識が低く極めて事務的で、県に期待される広域的専門的見地からの助言等は皆無であったし、未来投資法対応関連も産業政策としてどうしたいか県の主体的意思が伝わってきませんでした。
 結果、新潟県内における各地の取組の連携や効果向上のための市町村間調整など県の関与が望ましい事案でも、市が国と直接協議など重ね、県は形式的経由事務に終始していました。
 なお、派遣中に、地方創生推進交付金制度の創設から短期間での活用対応が求められた中で、近隣や遠方の市町村間調整や施策構築に関して、これまでに県職員として得てきた知見を活かし、各種事業の組替えにより実質的な既存事業に対して全国市町村で5位となる交付決定額を得ることに貢献できました。県職員の立場としては、これを県内全市町村に展開させたかったと思うのです。

● 県の施策の中で、現在もっと力を入れるべき取組や業務はなんだとお考えですか。

○ 産業政策です。
 県勢発展の要諦は定住者増であり、良質な雇用と経営機会の増進が最重要。
地域で中小企業の経営者などから直接聞いた県への期待は、補助金や融資、NICOの制度的充実というよりも、「県庁」としての広域性や専門性、政策総合力による市町村や地場産業と一体となった知恵出しと、官学金など各界への神通力を活かしての地域間や首都圏との連携の取りまとめへ情熱を持って汗をかくことだと考えます。
 派遣先では地場産業の社長などと随分話し合う機会を持てましたが、経営者達は補助金頼みではまともな事業にならないことを良く承知しています。
 参考までに申し上げると、派遣当時に私が独自に調査して派遣先で倣うよう仕込んできた事例なのですが、某政令市が、財政負担基本ゼロの"知恵と拝み倒し"で、デベロッパー誘導により産業団地開発を推進しようとしている取り組みなどを、県内広域的な戦略構築にあたり見習ってはいかがか。

● このままの状態が続けば、5年後に一番問題となると思われる取組や業務について、それぞれどのように感じていますか、その理由等とともにご教示下さい。

○ 国内外の資本による資本の県外化が進み、県内本社機能の減少や県外への事業流出の増などを懸念しています。外資化は税収も含め地域内再投資を減らし地域経済の減退を加速すると考えます。
 中間請負型なれど高度の技術やノウハウを持つ県内中小企業における事業承継ニーズ増を絶好の契機ととらえ、サプライチェーン連携による付加価値向上や価格決定調整力向上、卸問屋の目利き力も活用したビジネスチャンス開拓に活かすなど、中立広域的な視点で調整しようとする取組の能動性が必要と考えているのですが、地域現場を見ることを通じて本県においてはそれが低いと感じており、そうした懸念を持つのです。

● 市町村の施策の中で、現在一番大変なものとして、力を入れている又は力を入れざるを得ない取組や業務はなんだと考えますか。

○ 地場産業振興策です。
 若者の流出抑制と転入促進は出生数の増加ももたらし、市町村民サービスの維持存続と市町村勢の発展に繋がるから。良い仕事(機会)があれば人が来て住むということだと思います。

● このままの状態が続けば、5年後に一番問題となると思われる取組や業務
について、それぞれどのように感じていますか、その理由等とともにご教示下さい。

○ 国内外の資本による資本の県外化で県内本社機能の減少や県外への事業流出の増など。理由は先ほどお答えしたとおりです。
 県は、その広域性と専門性を担う立場から能動的に市町村へ連携や調整を働きかけて対応していくべき課題だと思います。

● 現在、県(市町村)が行っているが、市町村(県)が行った方が効率的・効果的であると感じる業務があれば、その理由等とともにご教示下さい。

○ 産業政策に係る土地利用調整について、市町村が持つ土地そのものの用途変更などの手続に係る権限を強化して、企業のニーズへの適時迅速な対応力を高めるとともに、県においては、市町村毎の遊休未利用地の現状等を踏まえた農振や用途区域の地域間調整の権限が強化されて、場合によっては従来からの県下の土地利用バランスを変えるなど大きな判断も含め、県全体としての土地利用の最適化が進められるようになれば、本県における各種産業振興の効果や効率が上がると考えます。
 自治体というのは突き詰めれば所管区域(地面)が存在の根源。土地利用を、その時代に適う産業振興のために、いかに最適化するかが重要施策だと考えます。

● 広域自治体としての県と基礎自治体としての市町村の役割分担の狭間で、本来取り組むべきであるのに手薄になっていると感じる取組や業務があれば、その理由等とともにご教示下さい。

○ 産業、交通など政策分野全般にわたり、「連接」や「連鎖」による付加価値や機会創造という取組が手薄。
  市町村の取組は生活レベルの事、県の取組はシンボリックな巨額の事、といった感じで、あたかも別の次元で棲み分けているかのようで、結果してネットワークとかニューロン的な一体感が無く大いに狭間を生み、各種有益な機会を逸失していると思うのが残念。

● 市町村の業務に対する県の関わりについて、市町村長の中には「県は、市町村が住民と接する場にもっと積極的に同行し、住民の生の声に触れるべき」という意見があるが、これについてどう考えるか、ご教示下さい。

○ ただ同席して情報共有したり市町村の役割とか県の既存事業説明等により言い訳的に説明するのではなく、市町村施策の改善や広域的な県の施策展開のヒントを貪欲に得るための「質問力」が重要と考える。

● 行政改革的な視点から、派遣先市町村等の取組で、県にとって参考となる取組があればご教示下さい。

○ 先ほどからお話ししている組織と人材の運用の仕方に対する指摘そのものであります。役所(と銀行)はつまるところ、組織と人事(人材活用)次第だと思います。

● 改善が必要な県の業務や県と市町村の関係について、上記以外でご意見があればご教示下さい。

○ 県の立場を踏まえつつ、市町村現場各々を熟知した上でそれらの連接と渉外で県域をどうつないで発展させていくかを現実的に対応していくためには、地域振興局の機能や役割を強めてやることが必要と考える。
 基礎的自治体(市)の企画財政統括業務を経験したことで、県が担うべき広域性・専門性を実効あるものとして発揮するためには、県と市町村のトップレベルによる表層的な連携体制整備のみでなく、振興局職員らが市町村現場の実情に触れる実務経験を通じて得た生活者視点や総合的な見識を、県の全庁的な企画立案や政策推進に強く活かせる仕組みが必要と、痛感しています。

● 以上で終わります。時間つぶしには丁度良かったのですが、本日のお話しは聞き置くだけになる公算が高く、僅かあなた一人のご苦労を通じたお考えや思いが、現行の鉄板体制に一石を投じるとか何らかしら変化をもたらすなどは、とてもあり得ないことくらいは承知しておいてください。
 ご苦労さまでした。

○ぎゃふん。(昭和か!!)

(思い当たる同志たちよ腐るな!? 「降格左遷」で得た想い。終わり。)
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https://twitter.com/rinosahibea
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