新潟久紀ブログ版retrospective

新潟独り暮らし時代21「下手の横好きでバンド活動(その3)」

●下手の横好きでバンド活動(その3)

 数日後に講義で同席したベースの彼から、ドラムパート用の譜面を受け取った。エイジアのファーストとセカンドアルバムからシングルカットされた曲など4曲分ほどだったと思う。両アルバムとも既にカセットテープにダビングして聴き慣れていたので、指定の曲そのものに馴染みがあったことには安堵できた。
 しかし、その馴染みの小節ごとに譜面を追っていくと、"聴く"と"演奏する"とでは大違いだということが今更ながらに現実味を帯びてくる。人間の聴覚というのは都合の良いもので、楽しんで聴いているときには自分好みのドラムの響きに感じているのだが、譜面を見ると思いのほか手の込んだプレイをしていると知る。
 ハイファットシンバルとスネアドラム、バスドラムで単調なリズムを刻むことに終始徹していれば良いというものでは無いと覚悟はしていたが、一聴して軽快なポップス調に思えても、やはり、あのスーパーグループたるエイジアの楽曲なのだ。今更ながら、これは大変な火傷をしそうだと腰がすくむのだった。
 "お遊びバンド"といった感じでメンバー誰もが話していたのだが、それでも何らかの披露の場がないとやる気が出ないということで、皆で軽音楽部に在籍して、秋の大学祭のステージに立とうということになっていた。賞味3か月ほどは素人未経験者の私にはなとんもタイトな日程だ。
 急いで市街地の楽器店でドラムスティックを購入して練習を始めなくてはならないが、六畳一間のアパートでロック仕様のドラムセットを置けるわけがないし、近くに都合の良い備え付けの音楽教室なども無い。部屋の中にて身近にあった色々なサイズの本や冊子など並べて、それをドラムセットに見立てて叩くのが日課になった。
 ヘッドフォンで課題曲(?)を聴きながらドラムワーク…ということになるが、当時はCDなどデジタル音源などなくカセットテープであり、しかも曲の頭出し機能のあるプレイヤーではなかったので、何度も反復して再生するには都度巻き戻すことが面倒だった。正に磁気テープが擦り切れんばかりに音質も劣化していった。
 ギターやベースは当然各々で愛器を所有していたので、自宅で十分に練習ができる。キーボードの女性陣も、なんといっても教育学部の音楽専攻であったので、防音壁のマンションにシンセサイザーはもとよりピアノまで所有しているて弾き邦題。文字どおり"叩き込む"練習が最も必要な私が最も劣悪な環境だったのだ。
 固い雑誌などをリズミカルに叩き続けて早数日。ヘッドフォンをしての寡黙な練習なので、騒音お互い様同士のアパートの両隣は、奇妙な打音のみが漏れ聞こえてくる私の部屋を不審に思ったことだろう。何かの新興宗教による行為か反社会的なものでも密かに製造しているのではないかと…。その正体は腱鞘炎にまっしぐらの私だったのだ。

(「新潟独り暮らし時代21「下手の横好きでバンド活動(その3)」」終わり。仕事遍歴を少し離れた独り暮らし時代の思い出話「新潟独り暮らし時代22「下手の横好きでバンド活動(その4)」」に続きます。)
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